【夫婦財産契約で決めた財産の管理者変更と夫婦共有財産の分割請求】

1 夫婦間の財産の管理者変更と分割の請求
2 財産管理者(夫婦財産契約)の変更と分割請求
3 管理者変更・分割請求の要件の解釈
4 『財産を危うくする』行為の具体例
5 管理者変更・分割請求の前提(夫婦財産契約)
6 管理者変更・分割請求の手続

1 夫婦間の財産の管理者変更と分割の請求

夫婦財産契約として,夫婦の財産の管理者を決めることができます。
詳しくはこちら|夫婦財産契約(婚前契約)で決めることができる内容(条項)と有効性
想定に反して,管理者となった者が不適切な財産管理を行っている場合は,他方の配偶者は,これを阻止する必要があります。
そこで,管理者の変更や,財産自体を分割することを請求できます。
本記事では,夫婦の財産の管理者の変更や分割請求について説明します。

2 財産管理者(夫婦財産契約)の変更と分割請求

夫婦財産契約は,原則的に締結した後に変更することはできません。
その例外として,管理者変更の手続があります。
さらに,分割請求によって,夫婦の共有財産をそれぞれの単独所有の財産に分ける手続もあります。

<財産管理者(夫婦財産契約)の変更と分割請求>

あ 管理者変更・分割請求の要件

『ア〜ウ』のすべてに該当する
ア 夫婦の一方が夫婦共有財産or他方配偶者の財産を管理している 締結された夫婦財産契約の内容ということである
イ 管理が失当であったウ 財産を危うくした

い 管理者変更の請求

『あ』に該当する場合
他の一方は,財産管理者を自己に変更することを家庭裁判所に請求できる
※民法758条2項

う 分割請求

『あ』に該当する場合
他の一方は,夫婦共有財産の分割を家庭裁判所に請求できる
『い』の請求とともに請求する
※民法758条3項
※青山道夫ほか編『新版 注釈民法(21)親族(1)』有斐閣1992年p423

3 管理者変更・分割請求の要件の解釈

夫婦財産契約で決めた管理者を変更する請求や分割請求が認められる要件の解釈をまとめます。

<管理者変更・分割請求の要件の解釈>

あ 『管理の失当』の意味

故意or過失によって
婚姻共同生活の維持についての共通の信頼と了解に反した不適切な管理を行うこと
善良なる管理者の注意義務が基準となる
不可抗力によるものは該当しない

い 『財産を危うくする』の意味

財産の所有権を失うおそれがあるという意味である
財産の収益を失うおそれがある程度では足りない
現実に財産の所有権を失うことまでは要しない
※青山道夫ほか編『新版 注釈民法(21)親族(1)』有斐閣1992年p422

4 『財産を危うくする』行為の具体例

実際に管理者変更や分割請求が認められる具体例を紹介します。つまり『財産を危うくする』といえる行為の例です。

<『財産を危うくする』行為の具体例>

あ 典型例

管理者が放蕩で他方配偶者の財産を酒色・賭博に消費した
管理者が他人にだまされて他方配偶者の財産をリスクの高い事業に投資した
※青山道夫ほか編『新版 注釈民法(21)親族(1)』有斐閣1992年p423

い 連帯債務負担+抵当権設定(判例)

夫が妻に無断で妻を代理して連帯債務を負った
妻の不動産に抵当権を設定した
※大判昭和7年5月10日

う 不動産保存登記+代物弁済

妻所有の家屋について,夫が妻に無断で夫名義の保存登記をした
夫の債権者に代物弁済として所有権移転登記を行った
※大判昭和10年4月2日

5 管理者変更・分割請求の前提(夫婦財産契約)

以上のような夫婦間の管理者変更や分割請求は,あくまでも夫婦財産契約を締結してあるケースだけに適用されます。
夫婦財産契約の締結をしていない夫婦にも類推適用するというアイデアもありますが,一般的には否定されています。

<管理者変更・分割請求の前提(夫婦財産契約)>

あ 管理者変更・分割請求の前提

夫婦財産契約が締結されていない場合
→共有財産の管理者の変更・共有財産の分割は適用されない
=家庭裁判所に請求することはできない
※福岡高裁昭和39年9月17日

い 共有物分割(参考)

夫婦間で物権的に(潜在的ではなく)共有となっている場合
→原則的に共有物分割請求は認められる
詳しくはこちら|夫婦間の共有物分割請求の可否の全体像(財産分与との関係・権利濫用)
潜在的な共有にすぎない財産は共有物分割請求の対象にはならない

6 管理者変更・分割請求の手続

夫婦間の管理者変更や分割請求の手続は家庭裁判所に請求することになっています(前記)。
具体的には,最初に家事調停を申し立てることになります。
調停で話し合いがまとまらないと審判に移行します。

<管理者変更・分割請求の手続>

あ 家庭裁判所の手続の種類

家庭裁判所の調停・審判の手続を要する
別表第1事件として分類される
詳しくはこちら|家事事件(案件)の種類の分類(別表第1/2事件・一般/特殊調停)

い 調停前提の適用(なし)

調停前置が適用されない
→『調停・審判』のいずれの申立も可能である
詳しくはこちら|家事事件の調停前置の基本(趣旨・不服申立)

う 当事者の協議による解決(不可)

当事者の協議のみによって管理者の変更や分割を行うことはできない
※青山道夫ほか編『新版 注釈民法(21)親族(1)』有斐閣1992年p423

本記事では,夫婦財産契約として決めた財産の管理者の変更と分割の請求について説明しました。
実際には,家庭裁判所に申し立てる前に当事者間で交渉を行い,調停や審判では的確な主張や立証が必要となります。
実際に夫婦間の財産の管理に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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