1 家事事件の調停前置の対象事件
2 調停前置の趣旨
3 必要的付調停による調停前置の強制(基本)
4 必要的付調停の例外(概要)
5 必要的付調停に対する不服申立(なし)
6 審判対象事件の事実上の調停前置(概要)

1 家事事件の調停前置の対象事件

家庭裁判所の手続では調停前置というルールがあります。
まずは調停前置の基本部分をまとめます。

<家事事件の調停前置の対象事件>

あ 審判対象事件

調停前置は適用されない
家事審判・調停のいずれも最初から申立可能である(※1)

い 訴訟対象事件

調停前置が適用される
原則的に訴訟より前に『調停』を申し立てる必要がある
=訴訟提起のためには『調停終了』が必要である
※家事事件手続法257条

このように事件(案件)の種類によって調停前置の適用の有無が異なります。
家事事件の種類・分類については別に説明しています。
詳しくはこちら|家事事件|手続|種類・基本|別表第1/2事件・一般/特殊調停対象事件
詳しくはこちら|家事事件|手続|種類|まとめ|利用できる手続・所要期間の目安
なお,調停前置主義は家事事件以外でも使われています。
詳しくはこちら|賃料改定事件の裁判手続(調停前置の適用範囲と例外)

2 調停前置の趣旨

調停前置のルールは家事事件の特徴への配慮によるものです。

<調停前置の趣旨>

あ 家事事件の特徴

家族をめぐる紛争

い 家事手続の理念

家庭の平和と健全な親族共同生活の維持を図る

う 理念実現→解決方法

背景にある人間関係の調整・関係改善
→その後の対立・トラブルを回避できる
=平和・健全な関係ができる

え 解決方法の理想→調停前置主義

公開の法廷は好ましくない
当事者の互譲による円満・自主的な解決が望ましい
→調停前置主義の採用
※家事事件手続法257条1項
※家事審判法18条1項(廃止;内容は現行法と同様)
※別冊NBL2002年『人事訴訟手続法の見直し等に関する要綱中間試案と解説』72号商事法務p25

3 必要的付調停による調停前置の強制(基本)

調停前置の具体的な規定=ルールの内容を説明します。
基本的な部分をまとめます。

<必要的付調停による調停前置の強制(基本)>

あ 前提

『調停前置』の対象案件について
『調停不成立』を経ずに訴訟を申し立てた

い 必要的付調停|基本

裁判所は職権で『調停に付する』
→『調停前置』が実現することになる
『調停前置違反』という理由で却下にすることはできない

う 必要的付調停|例外

裁判所は付調停にしないこともできる
=調停前置を適用しないことになる(後述)
※家事事件手続法257条2項

調停前置に反する訴訟提起がなされた時に調停前置が強制的に実現するといえます。

4 必要的付調停の例外(概要)

調停前置に反する訴訟提起について『付調停』がなされないこともあります。結果的に調停なしで訴訟を進めることになります。
要するに調停前置の例外です。
これについては別に説明しています。
詳しくはこちら|調停前置=必要的付調停|例外=合意成立の余地/見込みなし|調停取下

5 必要的付調停に対する不服申立(なし)

裁判所の『必要的不調停』を納得しないということも生じます。
例外に該当すると主張するようなケースのことです。
このような場合は不服申立をする,という発想があります。

<必要的付調停に対する不服申立(なし)>

調停前置という原則に従った処理である
付調停に対する独立の不服申立はできない
※金子修『逐条解説家事事件手続法』商事法務p772

結局,付調停に対する不服申立はできないのです。
なお付調停には『調停前置』とは別の理由による『一般的付調停』もあります。
一般的付調停についても不服申立はできません。
詳しくはこちら|一般的付調停|事実上の調停前置・必要的付調停との違い

6 審判対象事件の事実上の調停前置(概要)

審判対象事件は調停前置の対象外です。そこで,最初から家事審判を申し立てることも理論的には可能です(前記※1)。
しかし,実際には最初に調停を申し立てることを要請されます。手続としては一般的不調停によって調停に付されるというものです。
これについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|一般的付調停|事実上の調停前置・必要的付調停との違い

本記事では家事事件の調停前置の制度の基本的事項を説明しました。
実際には個別的な事情によって最適な手続は異なります。手続の選択によって結論が違ってくることもあります。
実際に家事事件(家庭裁判所の調停や審判)の利用をお考えの方や,手続に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。