【マンション管理規約の違約金に関する裁判例の判決文】
1 マンション管理規約に関する裁判例の判決文
2 東京高裁平成26年4月16日
3 東京地裁平成20年1月18日
1 マンション管理規約に関する裁判例の判決文
マンション管理規約で違約金を定めた条項の有効性に関する判断をした裁判例にはいろいろなものがあります。
詳しくはこちら|『弁護士費用加算条項』の有効性|東京高裁H26.4.16マンション管理規約で有効と認めた
前記の記事の中で紹介した裁判例の判決文の中の裁判所の判断の部分を,以下紹介(引用)します。
2 東京高裁平成26年4月16日
管理規約の中で,管理費を滞納した者が弁護士費用を負担するという条項を有効と判断した裁判例です。
<東京高裁平成26年4月16日>
第4 当裁判所の判断
1 当裁判所は、控訴人に対し、785万6229円及びうち511万9510円に対する平成26年2月1日から支払済みまで年18%の、うち102万9565円に対する平成25年2月28日から支払済みまで年5%の各割合による遅延損害金の支払を求める被控訴人の請求は、理由があるものと判断する。
その理由は、次のとおり補正し、後記2のとおり判断を加えるほかは、原判決の『事実及び理由』中の『第3 当裁判所の判断』1項ないし4項に記載のとおりであるから、これを引用する。
2 違約金としての弁護士費用について
被控訴人は、上記第3の2(2)アのとおり主張し、これに対し、控訴人は、同イのとおり反論する。
そこで、判断するに、国土交通省の作成にかかるマンション標準管理規約(甲8)は、管理費等の徴収について、組合員が期日までに納付すべき金額を納付しない場合に、管理組合が、未払金額について、『違約金としての弁護士費用』を加算して、その組合員に請求することができると定めているところ、本件管理規約もこれに依拠するものである。そして、違約金とは、一般に契約を締結する場合において、契約に違反したときに、債務者が一定の金員を債権者に支払う旨を約束し、それにより支払われるものである。債務不履行に基づく損害賠償請求をする際の弁護士費用については、その性質上、相手方に請求できないと解されるから、管理組合が区分所有者に対し、滞納管理費等を訴訟上請求し、それが認められた場合であっても、管理組合にとって、所要の弁護士費用や手続費用が持ち出しになってしまう事態が生じ得る。しかし、それは区分所有者は当然に負担すべき管理費等の支払義務を怠っているのに対し、管理組合は、その当然の義務の履行を求めているにすぎないことを考えると、衡平の観点からは問題である。そこで、本件管理規約36条3項により、本件のような場合について、弁護士費用を違約金として請求することができるように定めているのである。このような定めは合理的なものであり、違約金の性格は違約罰(制裁金)と解するのが相当である。したがって、違約金としての弁護士費用は、上記の趣旨からして、管理組合が弁護士に支払義務を負う一切の費用と解される(その趣旨を一義的に明確にするためには、管理規約の文言も『違約金としての弁護士費用』を『管理組合が負担することになる一切の弁護士費用(違約金)』と定めるのが望ましいといえよう。)。
これに対して、控訴人は、違反者に過度な負担を強いることになって不合理である旨主張するが、そのような事態は、自らの不払い等に起因するものであり、自ら回避することができるものであることを考えると、格別不合理なものとは解されない。
以上の判断枠組みの下に、本件をみるに、被控訴人は、本件訴訟追行に当たって、訴訟代理人弁護士に対し、102万9565円の支払義務を負うが(甲5)、その額が不合理であるとは解されない。
したがって、控訴人は、被控訴人に対し、本件管理規約36条3項に基づき、『違約金としての弁護士費用』102万9565円の支払義務がある。
3 以上に加え、弁論の全趣旨によれば、控訴人は、被控訴人に対し、平成22年9月分から平成26年1月分までの管理費等を支払っていないことが明らかであり、別紙『管理費等債権明細計算表』記載のとおり、①未払管理費等511万9510円、②上記511万9510円に対する平成26年1月31日までの確定遅延損害金170万7154円、③上記511万9510円に対する同年2月1日から支払済みまで本件管理規約所定の年18%の割合による遅延損害金、④弁護士費用102万9565円、⑤上記102万9565円に対する平成25年2月28日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払義務がある。
3 東京地裁平成20年1月18日
管理規約には消費者契約法が適用されないと判断した裁判例です。
<東京地裁平成20年1月18日>
2 争点(2)(管理規約所定の遅延損害金の利率が公序良俗に反するか否か)について
(1) 被告Y2は,本件マンションの管理規約の第55条2項が管理費及び修繕積立金の未払に対する遅延損害金について年30%と定めていることについて,消費者契約法が施行された平成13年4月1日以降,同法が定める損害賠償の予定の上限である年14.6%を超える部分は公序良俗に反し無効であると主張している。
(2) しかし,原告が主張するように,マンションの管理規約は対等当事者で構成された団体の自治規範であり,非対等な契約当事者間の消費者契約とは異なるから,消費者契約法の適用対象とならないことはもとより,同法の趣旨を及ぼすべき対象とならないこともまた明らかであり,その他,本件マンションの管理規約が管理費及び修繕積立金の未払に対する遅延損害金について年30%と定めていることが公序良俗に反すると認めるべき事情はないから,被告Y2の主張は採用できない。
本記事では,マンション管理規約に関する裁判例の判決文を紹介しました。
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