1 家裁調査官による子供の意見の調査
2 子供の迎合バイアスやリスク(概要)
3 家庭裁判所調査官の専門的知見による調査
4 調査官による子の意思の調査を行う状況の例
5 調査官による子の意思の調査の方法(基本)
6 子の監護状況を把握する調査の具体的方法や工夫
7 調査官による子の意見の聴取の具体的方法や具体例
8 子の意見の調査における心理テスト
9 子の意見の調査への親の立会
10 子の意見の調査への別居親の立会によるショック現象

1 家裁調査官による子供の意見の調査

親権者や監護権者を定める手続や,親子の面会交流を定める手続では子供の意見(意思)が重視されます。これらの手続では,子の意見を把握することがあります。子供の意見を調査する方法には,証人尋問・審問・陳述書(の提出)・家裁の調査官による調査などがあります。
詳しくはこちら|監護に関する事項・親権者の裁判(審判・附帯処分等)における子の意見の聴取
実務では,家庭裁判所の調査官による調査として子の意見の把握をするケースが多いです。調査官の専門的な知識や経験を活かして子供の本心を把握するのです。そのためにいろいろな配慮や工夫が必要とされます。心理テストを用いることもあります。
本記事では,家裁調査官による子の意見の調査について説明します。

2 子供の迎合バイアスやリスク(概要)

両親が別居している状況では,子供は同居する親の影響を強く受けるという現象が生じます。
大人が思う以上に強い影響を受け,マインドコントロールが効いているようなケースもあります。実際の子の意見の調査においては,このような前提をしっかり理解する必要があります。

<子供の迎合バイアスやリスク(概要)>

あ 環境適応現象=バイアス

子供は『近くに居る親=同居親』に気を遣う傾向が強い
→『別居親』に会いたくないというコメントをする

い 虚偽コメントの可能性

子供が別居親に対する否定的コメントをした場合
→本心ではない,という可能性が十分にある
詳しくはこちら|両親の対立状況での子供の心理(親への迎合・忠誠葛藤や敵意の発生)

3 家庭裁判所調査官の専門的知見による調査

家庭裁判所の調査官は,文字どおり,調査を専門的に行う者です。専門的な知識や経験を使ってより正確に子供の気持ちを把握する任務を遂行しています。

<家庭裁判所調査官の専門的知見による調査>

あ 調査官の調査の特徴

調査官は,子から事情を聴取したり様子や行動を観察したりして,得られた言語的表現・非言語的表現について,子の年齢や発達段階に応じて専門的知見を活用して評価する
※裁判所職員総合研修所監『家事事件手続法概説』司法協会2016年p60

い 調査官のスキル

調査官は『ア・イ』のような一定のスキルを有する者であることが多い
ア 臨床心理士の資格を持った方
イ 社会福祉学・心理学を学んだ方

4 調査官による子の意思の調査を行う状況の例

前記のような専門的な知識や経験を活かして子供の気持ちを把握するような状況は幅広いです。
むしろ,親権・監護権・面会交流に関する手続の全体として,調査官の調査が行われることが多いといえます。

<調査官による子の意思の調査を行う状況の例>

調停委員会による事情聴取などで子の意思が把握できない
子の監護状況に懸念がある
子の奪い合いの経緯から,紛争が深刻で,解決に難航が予想される
子が意思表明を希望している
面会交流をめぐる問題がある
父母に配偶者暴力やアルコール依存など,子の利益に関わる問題がある
※金子修ほか編著『講座 実務家事事件手続法(上)』日本加除出版2017年p416

5 調査官による子の意思の調査の方法(基本)

調査官が子供の気持ちを把握する具体的な方法はいろいろあります。
調査官が直接子供に会って話しをするというものもあります。
また,親子が接している状況を観察するという方法もあります。
さらに,第三者(機関)から情報を得るという方法も用います。

<調査官による子の意思の調査の方法(基本)>

あ 調査官による面会

調査官が子と面接し意向を聴取する
子の言動態度から心情を酌み取る

い 試行的面会交流の観察

親子の交流場面を観察する
詳しくはこちら|子供の意思の調査のための試行的面会交流の意義や実例

う 第三者からの情報収集

福祉や医療などの関係機関から第三者的な情報を収集する
※金子修ほか編著『講座 実務家事事件手続法(上)』日本加除出版2017年p417

え よくある誤解

単純に『お父さんとお母さん,どっちと暮らしたい?』と質問するわけではない

お 調査方法の選択

『ア・イ』のような事情から実施場所を柔軟に判断・対応する
調査方法についての当事者の希望(指摘)も参考にする
ア 子供の年齢・状況
イ 両方の親の状況
住所・時間的余裕など

6 子の監護状況を把握する調査の具体的方法や工夫

調査官が子の意思を調査する状況を分けると,監護状況(が子供にどのような影響を与えているか)を把握するものと,子供の意見(そのもの)を把握するものがあります。
それぞれについて,具体的な調査の方法や工夫があります。
まず,子供の監護状況を把握する調査では,子供の生活環境の全体が調べる対象となります。
家庭訪問や,親以外に同居している人との面接を行うことがあります。また,親子のコミュニケーションを観察するという方法もあります。心理テストを実施することもあります。

<子の監護状況を把握する調査の具体的方法や工夫>

あ 家庭訪問

日常の監護状況を把握するため,家庭訪問を実施することが多い
特に子の年齢が低い場合には,調査官と初めて会う緊張感を和らげるため,親しい家族の中で,日常生活の一部を見聞きすることから面接を始めるようにしている

い 祖父母との面接

子の監護を補助している祖父母などと個別に面接することもある

う 試行的面会交流の観察

子の年齢が低い場合には,家庭裁判所の児童室(家族面接室)で観察を行うことがある
ワンウェイミラーやモニターカメラにより別室から観察する方法もある
詳しくはこちら|子供の意思の調査のための試行的面会交流の意義や実例
他方の親の住居に子を連れてゆき,親子の様子を観察する方法もある

え 心理テスト

発達検査や心理テストを施行することもある(後記※1)
※金子修ほか編著『講座 実務家事事件手続法(上)』日本加除出版2017年p417,418

7 調査官による子の意見の聴取の具体的方法や具体例

次に,子供の気持ちをストレートに把握するための調査の方法を説明します。具体的な調査方法としては基本的に調査官が子供に直接質問するというものです。質問の内容は,要するに現状の認識(気持ち)と今後の希望です。

<調査官による子の意見の聴取の具体的方法や具体例>

あ 聴取する事項

子の意向調査は,子が父母間の紛争の経過をどのように受け止め,今度の生活についてどのような希望を抱いているかを聴取するものである

い 聴取する場所

可能な限り裁判所で面接を行う

う 典型的な子のコメントの例

『親権者は母がいい』
『転校して嫌だった』
※金子修ほか編著『講座 実務家事事件手続法(上)』日本加除出版2017年p419

8 子の意見の調査における心理テスト

子供の意見の調査では同居親の影響もしっかりと見抜く必要があります。前記のように,子供は同居親に迎合する傾向があるので,このことを前提として真意を把握することになります。
真意を把握する方法の1つとして,心理(精神)テストを織り込むことがあります。心理テストとしては,精神鑑定と言われる本格的なものではなく,もっと簡易なものを用いることが多いです。

<子の意見の調査における心理テスト(※1)>

あ 迎合的傾向

子供は同居親に迎合する態度を装う傾向が強い
詳しくはこちら|両親の対立状況での子供の心理(親への迎合・忠誠葛藤や敵意の発生)

い 心理テスト

同居親の影響を受けていると疑われる場合
→心理(精神)の分析的な手法を取る
例=絵を描く・箱庭遊びなど

う 親による調査方法の主張との関係

実務的には,当事者(両方の親)が,特定の調査方法を要望(主張)することができる
実際には自分の子供が心理(精神)テストを受けることを躊躇することも多い
当事者(親)が精神面の調査を望まない場合
→裁判所が心理テストを実施することは通常あり得ない

実際に同居親の影響が表面化・発覚するケースも多いです。
詳しくはこちら|試行的面会交流により母親の誘導を見抜いて親権者変更を認めた事例

9 子の意見の調査への親の立会

子供の意見の調査を実施する際には,親が立会をするかどうかが問題となります。

<子の意見の調査への親の立会>

通常,両方の親,その他の家族などの立会は排除する
当事者の希望その他の事情によって親が関与する場合もある(後記)
立ち会う場合は試行的面会交流として実施することが多い
詳しくはこちら|子供の意思の調査のための試行的面会交流の意義や実例

当事者の希望や具体的状況によって立会の有無はどちらもあります。

10 子の意見の調査への別居親の立会によるショック現象

子供の意見の調査に別居親が立ち会う場合には,結果的に親の方がショックを受けるという状況が生じることがあります。注意点をまとめます。

<子の意見の調査への別居親の立会によるショック現象>

あ 子供のコメントの典型例

子供が別居親について否定的なコメントをする傾向がある
別居親がこの状況を目の当たりにする

い 別居親の心情

激しいショックを受ける
同時に同居親によるマインドコントロールを確信することになる

う 調査官の判断

調査官が同居親の影響を受けていると判断するとは限らない

え 調査に立ち会うことの効果

理論的・実質的に審理上プラスになることはない
ただし,長期間子供の姿を見ていないケースの場合
→子供の姿を見られること自体で感激・安心するという効果はある

本記事では,家庭裁判所調査官による子供の気持ちの調査について説明しました。
調査官は専門的知識や経験がありますが,そうは言っても,表情・態度から真意を100%正確に特定することはできません。調査方法や調査官の個性によるブレ・違いがあることは事実です。
そのため,実際には調停や審判で当事者から調査方法や調査内容について的確に要請することで,結果に違いが生じることもあります。
実際に子供についての問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士の法律相談をご利用くださることをお勧めします。