夫婦喧嘩の末,妻が子供を連れて家を飛び出しました。
実家に戻っているようです。
子供に会えなくて非常に辛いです。
離婚の問題とは別に,子供に会うにはどんな方法がありますか。

1 別居時に子供を奪われた場合でも違法ではない
2 親権者でも強引な奪い取り誘拐罪が成立する
3 監護権の指定,により,子供の取り戻しを実現する方法もある
4 子供との面会交流だけを求める方法もある

1 別居時に子供を奪われた場合でも違法ではない

夫婦の間に離婚が成立していない時点では,原則的に共同親権となります(民法818条3項本文)。
別居中に母が子を引き取っている(連れ出した)場合でも,父が親権者であることに変わりはありません。
一方も親権者です。
父の親権を侵害したということにはなりません。

2 親権者でも強引な奪い取り誘拐罪が成立する

別居中は,両親が対立していても,両方とも親権者です(共同親権)。
だからと言って,親権者として子供を奪い取ることがすべて許されるわけではありません。
レアケースですが,誘拐罪の一種が親権者に適用されたケースもあります。

親権者誘拐罪が適用されたケース>

あ 未成年者略取罪;判例1

親の制止を振りきって自動車を発進させた

い 国外移送略取罪;判例2

入院中の病院のベッドから足を掴んで逆さに吊り下げて奪った

3 監護権の指定,により,子供の取り戻しを実現する方法もある

離婚成立前=夫婦である状態,であっても,『監護権』自体を,父または母の一方に指定してもらう家庭裁判所の手続きがあります(監護権者指定の申立)。
しかし,監護権者の妥当性の判断は多少時間がかかりますし,必ずしも希望どおりに指定されないリスクもあります。
別項目;親権者・監護権者の指定;手続,4つの原則

4 子供との面会交流だけを求める方法もある

子供に会うことを最優先させる場合は監護権者は置いておいて,ストレートに子供との面会交流の調停・審判を申し立てる方が良いです。
(子の)監護について相当な処分(民法766条2項)の一環として,家庭裁判所へ,まずは調停を申し立てることになります。
別項目;子供との面会交流;権利性,調停,審判,祖父母の場合

条文

[民法]
(親権者)
第八百十八条  成年に達しない子は,父母の親権に服する。
2  子が養子であるときは,養親の親権に服する。
3  親権は,父母の婚姻中は,父母が共同して行う。ただし,父母の一方が親権を行うことができないときは,他の一方が行う。
(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
第七百六十六条  父母が協議上の離婚をするときは,子の監護をすべき者その他監護について必要な事項は,その協議で定める。協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,家庭裁判所が,これを定める。
2  子の利益のため必要があると認めるときは,家庭裁判所は,子の監護をすべき者を変更し,その他監護について相当な処分を命ずることができる。
3(略)

[家事審判法]
第九条  家庭裁判所は,次に掲げる事項について審判を行う。
(略)
乙類
(略)
四 民法第七百六十六条第一項 又は第二項 (これらの規定を同法第七百四十九条 ,第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護者の指定その他子の監護に関する処分

判例・参考情報

(判例2)
[平成17年12月 6日 最高裁第二小法廷 平16(あ)2199号 未成年者略取被告事件]
 1 原判決及びその是認する第1審判決並びに記録によれば,本件の事実関係は以下のとおりであると認められる。
  (1) 被告人は,別居中の妻であるBが養育している長男C(当時2歳)を連れ去ることを企て,平成14年11月22日午後3時45分ころ,青森県八戸市内の保育園の南側歩道上において,Bの母であるDに連れられて帰宅しようとしていたCを抱きかかえて,同所付近に駐車中の普通乗用自動車にCを同乗させた上,同車を発進させてCを連れ去り,Cを自分の支配下に置いた。
  (2) 上記連れ去り行為の態様は,Cが通う保育園へBに代わって迎えに来たDが,自分の自動車にCを乗せる準備をしているすきをついて,被告人が,Cに向かって駆け寄り,背後から自らの両手を両わきに入れてCを持ち上げ,抱きかかえて,あらかじめドアロックをせず,エンジンも作動させたまま停車させていた被告人の自動車まで全力で疾走し,Cを抱えたまま運転席に乗り込み,ドアをロックしてから,Cを助手席に座らせ,Dが,同車の運転席の外側に立ち,運転席のドアノブをつかんで開けようとしたり,窓ガラスを手でたたいて制止するのも意に介さず,自車を発進させて走り去ったというものである。
 被告人は,同日午後10時20分ころ,青森県東津軽郡平内町内の付近に民家等のない林道上において,Cと共に車内にいるところを警察官に発見され,通常逮捕された。
  (3) 被告人が上記行為に及んだ経緯は次のとおりである。
 被告人は,Bとの間にCが生まれたことから婚姻し,東京都内で3人で生活していたが,平成13年9月15日,Bと口論した際,被告人が暴力を振るうなどしたことから,Bは,Cを連れて青森県八戸市内のBの実家に身を寄せ,これ以降,被告人と別居し,自分の両親及びCと共に実家で暮らすようになった。被告人は,Cと会うこともままならないことから,CをBの下から奪い,自分の支配下に置いて監護養育しようと企て,自宅のある東京からCらの生活する八戸に出向き,本件行為に及んだ。
 なお,被告人は,平成14年8月にも,知人の女性にCの身内を装わせて上記保育園からCを連れ出させ,ホテルを転々とするなどした末,9日後に沖縄県下において未成年者略取の被疑者として逮捕されるまでの間,Cを自分の支配下に置いたことがある。
  (4) Bは,被告人を相手方として,夫婦関係調整の調停や離婚訴訟を提起し,係争中であったが,本件当時,Cに対する被告人の親権ないし監護権について,これを制約するような法的処分は行われていなかった。
 2 以上の事実関係によれば,被告人は,Cの共同親権者の1人であるBの実家においてB及びその両親に監護養育されて平穏に生活していたCを,祖母のDに伴われて保育園から帰宅する途中に前記のような態様で有形力を用いて連れ去り,保護されている環境から引き離して自分の事実的支配下に置いたのであるから,その行為が未成年者略取罪の構成要件に該当することは明らかであり,被告人が親権者の1人であることは,その行為の違法性が例外的に阻却されるかどうかの判断において考慮されるべき事情であると解される(最高裁平成14年(あ)第805号同15年3月18日第二小法廷決定・刑集57巻3号371頁参照)。
 本件において,被告人は,離婚係争中の他方親権者であるBの下からCを奪取して自分の手元に置こうとしたものであって,そのような行動に出ることにつき,Cの監護養育上それが現に必要とされるような特段の事情は認められないから,その行為は,親権者によるものであるとしても,正当なものということはできない。また,本件の行為態様が粗暴で強引なものであること,Cが自分の生活環境についての判断・選択の能力が備わっていない2歳の幼児であること,その年齢上,常時監護養育が必要とされるのに,略取後の監護養育について確たる見通しがあったとも認め難いことなどに徴すると,家族間における行為として社会通念上許容され得る枠内にとどまるものと評することもできない。以上によれば,本件行為につき,違法性が阻却されるべき事情は認められないのであり,未成年者略取罪の成立を認めた原判断は,正当である。

(判例2)
[平成15年 3月18日 最高裁第二小法廷 平14(あ)805号 国外移送略取、器物損壊被告事件]
原判決が是認する第1審判決の認定によると、オランダ国籍で日本人の妻と婚姻していた被告人が、平成12年9月25日午前3時15分ころ、別居中の妻が監護養育していた2人の間の長女(当時2歳4か月)を、オランダに連れ去る目的で、長女が妻に付き添われて入院していた山梨県南巨摩郡鰍沢町内の病院のベッド上から、両足を引っ張って逆さにつり上げ、脇に抱えて連れ去り、あらかじめ止めておいた自動車に乗せて発進させたというのである。
 以上の事実関係によれば、被告人は、共同親権者の1人である別居中の妻のもとで平穏に暮らしていた長女を、外国に連れ去る目的で、入院中の病院から有形力を用いて連れ出し、保護されている環境から引き離して自分の事実的支配下に置いたのであるから、被告人の行為が国外移送略取罪に当たることは明らかである。そして、その態様も悪質であって、被告人が親権者の1人であり、長女を自分の母国に連れ帰ろうとしたものであることを考慮しても、違法性が阻却されるような例外的な場合に当たらないから、国外移送略取罪の成立を認めた原判断は、正当である。