1 前提・標準的算定方式の基礎
2 基礎収入割合修正方式の基本
3 年収3817万円→基礎収入割合32%

1 前提・標準的算定方式の基礎

高額所得者に関する養育費・婚姻費用の算定は特殊です。
標準的算定方式をそのまま使えません。
高額所得者の場合は,4つの算定方式があります。
詳しくはこちら|高額所得者の養育費・婚姻費用は4つの算定方式がある
本記事では,その中の基礎収入割合修正方式について説明します。
まずは,その前提となる基礎収入の考え方をまとめます。

<前提・標準的算定方式の基礎>

あ 基礎収入割合による基礎収入の算定(概要)

基礎収入とは,収入の中の処分可能な部分(金額)である
詳しくはこちら|基礎収入の意味と基礎収入を計算する原理的な方法(実額方式)
標準的算定方式では,総収入基礎収入割合を掛けて基礎収入を算出する

い 基礎収入割合の内容(概要)

基礎収入割合とは
→標準的な公租公課・職業費・特別経費の割合を控除した割合である
詳しくはこちら|標準的算定方式による養育費・婚姻費用の算定(計算式・基礎収入割合・生活費指数)

う 収入と職業費・特別経費の相関

収入が高額になると低下する

え 収入と公租公課の相関

収入が高額になると増加する
累進課税の方式そのものである

お 収入と基礎収入割合の相関

所得税の累進性は過激である
→『う』よりも『え』の影響の方が大きい
→収入が高額になると基礎収入からの控除額が増加する
=基礎収入割合は低下する

2 基礎収入割合修正方式の基本

基礎収入は収入が増えるほど低下します(前記)。
そこで基礎収入割合を修正すれば,標準的算定方式が使えます。
これが基礎収入割合修正方式の考え方です。
基礎収入割合修正方式の内容を整理します。

<基礎収入割合修正方式の基本>

あ 前提事情

収入が標準的算定方式の上限を超える

い 貯蓄の存在

『貯蓄・資産形成に回る部分』が生じる
=消費に充てられない部分が存在する
→『基礎収入=消費に充てる部分』の割合が低下する

う 基礎収入割合の修正

標準的算定方式の枠組みを用いる
基礎収入割合を標準的算定方式の上限から修正する
=上限の割合から下げることである

え 標準的算定方式の基礎収入割合の上限
義務者 基礎収入割合の上限 上限となる総収入
給与所得者 34% 2000万円
自営業者 47% 1400万円

※松本哲泓稿『婚姻費用分担事件の審理−手続と裁判例の検討』/『家庭裁判月報 平成22年11月=62巻11号』最高裁判所事務総局p80

お 個別的事情の考慮

次のような個別的事情も併せて考慮する
ア 同居中の生活レベル・生活費の支出状況
イ 現在の生活費支出状況
※松本哲泓稿『婚姻費用分担事件の審理−手続と裁判例の検討』/『家庭裁判月報 平成22年11月=62巻11号』最高裁判所事務総局p86

3 年収3817万円→基礎収入割合32%

基礎収入割合修正方式を採用したケースを紹介します。

<年収3817万円→基礎収入割合32%>

あ 事案

義務者の総収入=3817万円

い 裁判所の判断

基礎収入割合を32%とした
※大阪高裁平成18年1月18日

<注意>

本記事の説明内容・理論は養育費・婚姻費用で共通します。
掲載した裁判例は,養育費・婚姻費用の両方が含まれています。

本記事では,高額所得者の婚姻費用・養育費の算定方法のうち基礎収入割合修正方式について説明しました。
実際には,個別的な事情や主張・立証のやり方次第で結論は違ってきます。
実際に高額所得者が関わる夫婦の問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。