1 高額所得者の婚姻費用の計算方法の中の上限頭打ち方式
2 上限頭打ち方式の基本
3 上限頭打ち方式を採用した裁判例
4 年収2880万円→婚費37万円
5 年収2895万円→婚費35万円

1 高額所得者の婚姻費用の計算方法の中の上限頭打ち方式

婚姻費用の義務者(支払う側)が高額所得者である場合には,標準的算定方式をそのまま使って金額を計算することはできません。
高額所得者の婚姻費用の金額を計算する方法(算定方式)は4つに分けられます。
詳しくはこちら|高額所得者の婚姻費用の金額計算の全体像(4つの算定方式と選択基準)
本記事では,高額所得者の婚姻費用の計算方法の1つである上限頭打ち方式について説明します。

2 上限頭打ち方式の基本

まず,上限頭打ち方式とは,要するに,標準的算定方式(を元にした簡易算定表)の年収の上限をそのまま流用するというものです。

<上限頭打ち方式の基本>

あ 前提事情

収入が標準的算定方式の上限を超える

い 考え方

上限を超える部分は資産形成にあてられていると考える

う 計算方法

標準的算定方式の枠組みを用いる
標準的算定方式(を元にした簡易算定表)の上限の年収による婚姻費用を適用する
※松本哲泓著『婚姻費用・養育費の算定−裁判官の視点にみる算定の実務−』新日本法規出版2018年p138

3 上限頭打ち方式を採用した裁判例

上限頭打ち方式を採用したケースがいくつかあります。
まずは全体をまとめます。

<上限頭打ち方式を採用した裁判例(概要)>

あ 報酬年額2880万円→婚費37万円

義務者=夫=歯科医院経営者
※大阪高裁平成17年12月19日(※1)

い 報酬年額2895万円→婚費35万円

義務者=夫=会社代表取締役
※大阪高裁平成22年3月19日(※2)

これらの裁判例の内容は以下,順にまとめます。

4 年収2880万円→婚費37万円

義務者の給与所得者としての年収が2880万円だったケースで,年収2000万円として婚姻費用を計算した裁判例です。

<年収2880万円→婚費37万円(※1)>

あ 経済的状況

ア 義務者=夫
歯科医院経営
報酬の年額2880万円
イ 権利者=妻
無職
雑収入約71万円
小学生の子2人と同居している
ウ 住居に関する費用
妻・子が居住する住宅のローンについて
月額10万円を夫が支払っている

い 裁判所の判断・理論

2000万円を超える部分は資産形成に充てるとみる
2000万円を総収入とする
標準的算定方式を用いて試算する

う 裁判所の判断・結論

原審の認めた金額37万円について
→試算の範囲内にある
→原審認定額を維持した
※大阪高裁平成17年12月19日

5 年収2895万円→婚費35万円

義務者の給与所得者としての年収が2895万円だったケースです。裁判所は,婚姻費用の金額を簡易算定表の上限額としました。

<年収2895万円→婚費35万円(※2)>

あ 経済的状況

ア 義務者=夫
会社代表取締役
役員報酬年額約2895万円
イ 権利者=妻
年収300万円程度
15歳未満の子2人と同居している

い 裁判所の判断

簡易算定表の上限額を採用するのが相当である
→月額35万円とした
※大阪家裁平成22年1月25日;原審
※大阪高裁平成22年3月19日;抗告棄却

本記事では,高額所得者の婚姻費用の計算方法のうち上限頭打方式について説明しました。
実際には,個別的な事情や主張・立証のやり方次第で結論は違ってきます。
実際に高額所得者が関わる夫婦の問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。