1 子の虐待など親として不適切な場合は『特別養子縁組』で『親子関係の解消』ができる
2 特別養子は『実親と子の法的関係を解消する』ところで普通養子と異なる
3 特別養子縁組は『家庭裁判所の審判』が必要
4 『特別養子縁組』は『調停だけで成立』はしない
5 特別養子縁組のためには,養子が6歳未満などの形式要件+特別の事情が必要
6 特別養子縁組|実質的要件|条文
7 特別養子縁組|要保護性・必要性|内容
8 特別養子縁組|典型例=精神疾患・薬物中毒・虐待
9 特別養子縁組|利用例・レアケース
10 法的な親子関係が変動する手続|まとめ

1 子の虐待など親として不適切な場合は『特別養子縁組』で『親子関係の解消』ができる

子の虐待,など極限的な事情がある場合,法律上の親子関係,を解消する手続があります。
『特別養子(縁組)』という制度です。
特別養子縁組の制度について説明します。

2 特別養子は『実親と子の法的関係を解消する』ところで普通養子と異なる

普通養子,特別養子のいずれも養親と養子に親子関係を生じるというところは同じです。
この点,普通養子縁組は養親養子の間に親子関係が生じるだけです。
つまり,実親実子という親子関係は消滅しません。
結果的に,子から見ると,法的な意味でのが増えることになります。

しかし『特別養子縁組』の場合,実親と実子の親子関係は終了します。
逆に,実親と実子の親子関係を消滅させたいという場合に,特別養子縁組の手続きを用いるのです。

3 特別養子縁組は『家庭裁判所の審判』が必要

特別養子縁組は,文字どおり,特別です。
実親との親子関係を消滅させるという非常に影響が大きい手続きです。
実質的に,このような強い措置が必要かどうか,厳格に判断する必要があるのです。
そこで,家庭裁判所が特別養子縁組の判断をすることになっています
※民法817条の2
家裁の手続は別表第1事件として分類されています。
※家事事件手続法164条,別表第1−63
詳しくはこちら|家事事件|手続|種類・基本|別表第1/2事件・一般/特殊調停対象事件

4 『特別養子縁組』は『調停だけで成立』はしない

特別養子縁組は,家庭裁判所の分類上『別表第1事件』とされています。
当事者の利害対立が少ない類型です。
そこで,当事者の利害調整,協議,を旨とする調停の対象外です。
結局,最初から審判の申し立てをすることになります。
詳しくはこちら|調停前置|基本|趣旨・不服申立

5 特別養子縁組のためには,養子が6歳未満などの形式要件+特別の事情が必要

特別養子縁組の要件をまとめると次のとおりになります。

<特別養子|要件>

あ 形式的要件

原則的に次の4つの要件に該当する必要がある
ア 夫婦共同で養親となる
※民法817条の3
イ 養親は25歳以上
※民法817条の4
ウ 養子は,審判申立時に6歳未満
※民法817条の5
エ 実親の同意が必要
※民法817条の6

い 実質的要件

子の利益のために特に必要がある
内容は後述する
※民法817条の7

6 特別養子縁組|実質的要件|条文

特別養子縁組の要件の1つに『子の利益のための必要性』があります(前記)。
条文の規定内容をまとめます。

<特別養子縁組|実質的要件|条文>

あ 要保護性

次のいずれかに該当する
ア 父母による養子となる者の監護が著しく困難or不適当である
イ その他特別の事情がある

い 必要性

子の利益のため特に必要があると認めるとき
※民法817条の7

7 特別養子縁組|要保護性・必要性|内容

上記の『要保護性・必要性』の内容をまとめます。

<特別養子縁組|要保護性・必要性|内容>

あ 要保護性|内容

次のいずれかに該当する
ア 『著しく困難』
実父母が監護能力を欠く
イ 『著しく不適当』
実父母に子への愛情が欠け,虐待などのおそれがある
ウ 『その他特別の事情』
『ア・イ』に準じるような事情がある
※奈良家裁昭和63年3月25日

い 必要性|内容

ア 解釈論
『実親(+血族)との親族関係を否定させるべき必要が強い』こと
トートロジーとも言える
イ 実務的傾向
『要保護性』が認められる場合
→同時に『必要性』が認められることが多い

8 特別養子縁組|典型例=精神疾患・薬物中毒・虐待

特別養子が利用される典型的なケースをまとめます。

<特別養子縁組|典型例>

あ 背景

実親が精神疾患である
実親が薬物を常用している

い 子供との関係

実親が監護能力を欠いている
虐待のおそれがある

9 特別養子縁組|利用例・レアケース

特別養子が利用されるのは虐待・監護能力不足などだけではありません。
特別養子が利用されるレアケースを紹介します。

<特別養子縁組|利用例・レアケース>

あ 『血縁上の父』と『法律上の父』が異なり,かつ親権について熾烈な対立があるケース

ア 事案
母が同時期に2名の男性と肉体関係を持った。
血縁上の父と法律上の父とが子の嫡出および親権を争った
イ 裁判所の判断
これらの事情を子が知ることは健全育成に有害である
→必要性を認めた
※奈良家裁昭和63年3月25日

い 代理母のケース

現在の法律上,卵子提供者を法律上は『母』と認められない
→そこで代替的に『特別養子縁組』によって親子関係を獲得する
詳しくはこちら|代理母の場合『卵子提供者』は戸籍上の『母』になれない→特別養子縁組を利用

10 法的な親子関係が変動する手続|まとめ

現実的な親子の仲感情という意味では,仲違いということは世の中で生じることです。
しかし,法律的な意味での親子関係を,一方的な意思表示により消滅させることはできません。
特別養子を含めて,法的な親子関係に変動を生じる制度をまとめておきます。

<法的な親子関係が変動する手続|まとめ>

あ 廃除

→相続権を失う
※民法892条,893条

い 相続欠格

→相続権を失う
※民法891条

う 特別養子縁組

→親子関係自体が終了する
※民法817条の2~