1 『母』は自然分娩により親子関係発生→認知不要
2 『代理母』の場合,法律上の『母』は『卵子提供者』ではなく『代理母』となる
3 特別養子縁組により『代理母と子の親子関係』を創設できる

1 『母』は自然分娩により親子関係発生→認知不要

の認知,ということは通常あり得ません。

民法779条には『父又は母が』認知できる,と規定されています。
これについてはいくつか見解があります。

ごく例外的な,捨て子→後から猛烈に後悔→再会,といった場合は認知が必要かもしれない,という見解もあります。
しかし,判例は,認知不要説を採用しています。

<『母』の認知不要説>

母・子の関係は『認知』しなくても当然に生じる
理由;自然分娩という事実で明らかである
※最高裁判所昭和49年3月29日
※最高裁判所昭和54年3月23日

2 『代理母』の場合,法律上の『母』は『卵子提供者』ではなく『代理母』となる

生物学が先行して,法律の整備が遅れている分野です。
『代理母』か『卵子提供者』のどちらが『法律上の母』(戸籍上の母)になるか,争われた有名な裁判があります。

<代理母出産→法律上の『母』>

『分娩した母』=『代理母』が法律上・戸籍上の『母』となる
※最高裁平成19年3月23日;判例1

最高裁としても,今までに迷うことがなかった,新たな問題であったため,対応に苦慮したようです。
『本来先に国会で決める(立法する)べきだ』というメッセージを添えているあたりで『悩み』が垣間見えます。

3 特別養子縁組により『代理母と子の親子関係』を創設できる

卵子提供者(遺伝的な意味での母親)との間の特別養子縁組が認められれば,代理母との親子関係は消滅する結果となります。
この場合,一般的には『代理母』には『虐待』もなく,また『監護能力自体』にも問題はないでしょう。
しかし,まさに『必要性』が認められる可能性があります。
言わば『不合理な判例』の救済措置となるのです。
実際に『不合理な判例』における『補足意見』として,判決文中で裁判官がコメントしています。

<卵子提供者と子の特別養子縁組についての判例コメント>

卵子提供者と子について特別養子縁組を成立させる方法がある
※最高裁平成19年3月23日;判例2

別項目;特別養子縁組が認められる特殊ケース

判例・参考情報

(判例1)
[最高裁判所第2小法廷平成18年(許)第47号市長村長の処分に対する不服申立て却下審判に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件平成19年3月23日]
子を懐胎し出産した女性とその子に係る卵子を提供した女性とが異なる場合についても,現行民法の解釈として,出生した子とその子を懐胎し出産した女性との間に出産により当然に母子関係が成立することとなるのかが問題となる。この点について検討すると,民法には,出生した子を懐胎,出産していない女性をもってその子の母とすべき趣旨をうかがわせる規定は見当たらず,このような場合における法律関係を定める規定がないことは,同法制定当時そのような事態が想定されなかったことによるものではあるが,前記のとおり実親子関係が公益及び子の福祉に深くかかわるものであり,一義的に明確な基準によって一律に決せられるべきであることにかんがみると,現行民法の解釈としては,出生した子を懐胎し出産した女性をその子の母と解さざるを得ず,その子を懐胎,出産していない女性との間には,その女性が卵子を提供した場合であっても,母子関係の成立を認めることはできない。
 もっとも,女性が自己の卵子により遺伝的なつながりのある子を持ちたいという強い気持ちから,本件のように自己以外の女性に自己の卵子を用いた生殖補助医療により子を懐胎し出産することを依頼し,これにより子が出生する,いわゆる代理出産が行われていることは公知の事実になっているといえる。このように,現実に代理出産という民法の想定していない事態が生じており,今後もそのような事態が引き続き生じ得ることが予想される以上,代理出産については法制度としてどう取り扱うかが改めて検討されるべき状況にある。この問題に関しては,医学的な観点からの問題,関係者間に生ずることが予想される問題,生まれてくる子の福祉などの諸問題につき,遺伝的なつながりのある子を持ちたいとする真しな希望及び他の女性に出産を依頼することについての社会一般の倫理的感情を踏まえて,医療法制,親子法制の両面にわたる検討が必要になると考えられ,立法による速やかな対応が強く望まれるところである。

(判例2;判例1の別部分)
[最高裁判所第2小法廷平成18年(許)第47号市長村長の処分に対する不服申立て却下審判に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件平成19年3月23日]
(略)
なお,裁判官津野修,同古田佑紀の補足意見,裁判官今井功の補足意見がある。
 裁判官津野修,同古田佑紀の補足意見は,次のとおりである。
(略)
なお,本件において,相手方らが本件子らを自らの子として養育したいという希望は尊重されるべきであり,そのためには法的に親子関係が成立することが重要なところ,現行法においても,Aらが,自らが親として養育する意思がなく,相手方らを親とすることに同意する旨を,外国の裁判所ではあっても裁判所に対し明確に表明しているなどの事情を考慮すれば,特別養子縁組を成立させる余地は十分にあると考える。
(略)
なお,本件子らと相手方らとの間に特別養子縁組を成立させる余地は十分にあるとする点においては,津野修裁判官,古田佑紀裁判官の補足意見のとおりと考える。