1 不動産の2重価格表示の内容と具体例
2 不当な2重価格表示の禁止
3 過去の販売価格との比較に関する規制
4 属人的割引に関する規制
5 2重価格表示の平成24年改正による変更
6 2重価格表示の規制緩和の経緯
7 2重価格表示の規制緩和のマーケットへの効果

1 不動産の2重価格表示の内容と具体例

一般的な販売・セールスでは『2重価格表示』が活用されます。
詳しくはこちら|おとり広告×2重価格表示|意義・不都合・判断基準・具体例
不動産取引の2重価格表示については,業界の自主的な規制である公正競争規約に規定があります。具体的には,公正競争規約のうち『表示規約』と呼ばれるものです。
詳しくはこちら|不動産の公正競争規約(表示規制と景品規約)(全体)
本記事では表示規約における2重価格表示について説明します。まずは,2重価格表示の内容と典型例を紹介します。

<不動産の2重価格表示の内容と具体例>

あ 2重価格表示の内容

物件の価格,賃料,サービスの対価について
実売価格に,これよりも高い比較対照価格を併記する
ア 実売価格
実際に販売する価格
イ 比較対照価格
実売価格ではない価格
実売価格との比較のために表示される

い 2重価格表示の具体例

『アウトレットマンション!300万円値下げしました!』

2 不当な2重価格表示の禁止

不動産の2重価格表示はその内容によっては禁止されます。まずは規制の基本的部分をまとめます。

<不当な2重価格表示の禁止>

あ 不当な2重価格表示の禁止

『ア・イ』のいずれかに該当する2重価格表示はできない
ア 事実に相違する内容である
イ 有利誤認
実際のものor競争事業者に係るものと比べて
有利であると誤認されるおそれがある
※表示規約20条

い 具体的基準と例外

2重価格表示の禁止の例外(=適法な表示)について
→施行規則で規定されている(後記※2,※3)

3 過去の販売価格との比較に関する規制

2重価格表示の比較対照価格は大きく2つに分けられます。まずは『過去の販売価格』を比較対照とするタイプに関するルールをまとめます。

<過去の販売価格との比較に関する規制(※2)>

あ 過去の販売価格との比較|原則

比較対照価格が『過去の販売価格』である場合
→次のすべてに該当する場合にのみ適法となる

い 2重価格表示が適法となる条件

ア 実際に,一定期間『比較対照価格』で販売していた
イ 過去の販売内容が資料により客観的に明らかにすることができる
ウ 『比較対照価格』の公表時期・値下げ時期を明示する
エ 値下げ前の『比較対照価格』は3か月以上公表していた
オ 値下げの時期から6か月以内に現在の販売価格を表示する
物件の価値に同一性が認められなくなった場合
例;災害
→同一性が認められる時点までに限る
カ 土地・建物が対象となる(※1)
例外=現状有姿分譲地・共有制リゾートクラブ会員権
『賃貸』に関しては対象外である
※公正競争規約施行規則13条

4 属人的割引に関する規制

2重価格表示には『取引の当事者』によって割引を適用するタイプもあります。この方式についての,規制の内容をまとめます。

<属人的割引に関する規制(※3)>

あ 属人的割引|原則

一定の条件に適合する者だけに一定額or一定率の割引をする場合
→次のすべてに該当する場合にのみ適法となる

い 2重価格表示が適法となる条件

ア 割引が適用される条件を明示する
イ 割引率or割引額or割引後の金額を表示する
※公正競争規約施行規則14条

5 2重価格表示の平成24年改正による変更

不動産取引における2重価格表示は,平成24年にルールが変更されています。それ以前は『ほぼ禁止』だったのです。そして平成24年の改正で禁止の範囲が拡大したのです。
平成24年の表示規約改正による変化の内容をまとめます。

<2重価格表示の平成24年改正による変更>

あ 重要な変更点

『2重価格表示』が適法となる物件の種類が変更された

い 2重価格表示を利用できる物件|変更前

『建物のみ+新築後2年間+未入居のみ』
※公正競争規約施行規則14条(3)

う 2重価格表示を利用できる物件|変更後

一般的に土地・建物すべて
一部の例外はある(前記※1)
※公正競争規約施行規則13条(4)

え 改正ルール施行日

平成24年5月31日
※公正競争規約施行規則改正時附則

平成24年5月末に,不動産取引に2重価格表示が実質的に解禁されたと言うこともできます。

6 2重価格表示の規制緩和の経緯

以前の売出価格(参考価格)が,現在の売出価格と併記されていると値下げしたということが鮮明になります。
逆に,以前の価格が意図的に不当に高い金額だったと仮定すると,現在の価格は平均的なのに,一見『ものすごい安い』という印象が生じます。
もともと,不動産売買では,当初設定した『売出価格』からディスカウントして成約するのが通常です。
東京の中古マンションでは7〜10%のディスカウントが相場・目安です。
詳しくはこちら|不動産流通業界の基礎知識|3つの『価格』|買取業者・下取業者の活用
とにかく,2重価格表示は『安い・高い』という判断を誤るリスクがあるのです。
そこで,以前は大幅に制限されていたのです。
しかし,よく考えると,そのような不当な金額の表示は売主側にとっても不利益があります。
そこまでルールで縛らなくても,不合理なことは生じない,と考えられるようになってきたのです。
そこで,ルールが大幅に緩和されるに至ったのです。

7 2重価格表示の規制緩和のマーケットへの効果

不動産売買における2重価格表示が一定の範囲で解禁となっています。
これで不動産売買マーケットの活性化はそれほど大きくないと考えられています。
ここで,メリット(効果)が発生する理由,と,発生しない理由,に分けて整理してみます。

<2重価格表示の効果の分析>

あ 販売促進効果

次の事情から成約しやすくなる
ア 値下げをしたことがアピールできる
イ (買主候補者からの)値引き要求に対し,拒絶理由になる

い 効果・影響なし

ア 意図的・作出を感じる
イ 元々値下げ交渉が普通に行われている
以前の高値が書いてあっても同じ

う 販売抑制効果(逆効果)

ア 値引き要求が誘発される
イ ネガティブ事情の連想
値引きすると事情から
→マイナスの事情があると連想される
例;質が悪い良くないところがある

以上のように,2重価格表示自体,プラス,マイナスの両方の効果があるのです。
当事者の考え方や,実際の経済市況,不動産マーケットの状況,で大きく違ってくるのでしょう。
マーケットへの影響として,実感できるようなものは生じていないと思われます。