1 民泊は住居専用規定に違反するのか
2 マンション管理規約で民泊を禁止できるのか
3 区分所有権(専有部分)の制約として無効となる可能性
4 一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすため無効となる可能性
5 管理規約による許諾が住宅宿泊事業の届出の要件となる可能性
6 届出の添付書類として民泊OKの管理規約が指定される可能性
7 『住宅』の定義に民泊OKの管理規約が規定される可能性

1 民泊は住居専用規定に違反するのか

平成30年までに住宅宿泊事業法が施行されます。
詳しくはこちら|住宅宿泊事業法(平成29年民泊新法)の条文の全文
民泊の規制緩和により適法な民泊が一気に大量に生じることになります。
適法な民泊は,当然,保健所や警察は手を出しません。
ここで,分譲マンション(区分所有建物)では管理組合が反対する動きがとても多く出てきています。
現在の標準管理規約に含まれる住居専用規定に,民泊が違反していると判断した裁判例もあります。
詳しくはこちら|標準管理規約×民泊サービス|住居専用規定・貸与規定|大阪地裁判断
しかしこれは旅館業法違反の状態で行われたサービスについての判断です。
今後の適法民泊でも同じとはいいきれないでしょう。
実際に国土交通省は,標準管理規約の住居専用規定の次の項として民泊禁止(or民泊許容)の条項を入れる改正を予定しています(後記)。

2 マンション管理規約で民泊を禁止できるのか

マンションでは,総会(集会)で民泊を禁止する管理規約を設定する動きが活発になっています。
実際に国交省も民泊を禁止する条項を標準管理規約に追加する予定です。
詳しくはこちら|住宅宿泊事業法や特区民泊に対応した管理規約条項サンプル(国交省)
確かに一般的に,管理規約の条項の設定(規約変更)は,総会(集会)で議決権の4分の3以上の賛成があればできます。
しかし内容として管理規約で民泊を禁止できるのかという理論的な問題が出てきます。

3 区分所有権(専有部分)の制約として無効となる可能性

まず,民泊の禁止は,区分所有権の制約になります。
一般的に,専有部分の使用を制約する規約は無効となる傾向があります(大阪高裁平成20年4月16日)。
詳しくはこちら|管理規約|基本|設定手続・有効性・特定の区分所有者の『承諾』
一方,大多数の賛成があれば,少数の権利が制約されるのはやむをえないという考えもあるでしょう。

4 一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすため無効となる可能性

次に,一部の区分所有者Aの権利に特別の影響を及ぼす内容の規約変更には,Aの承諾が必要になるという規定があるのです(区分所有法31条1項後段)。
詳しくはこちら|管理規約|基本|設定手続・有効性・特定の区分所有者の『承諾』
この規定が適用されるとすれば,既に民泊を運営している者が1人でも反対すれば民泊禁止の規約設定はできない(無効となる)ことになります。
このような規約変更の可否(有効性)の解釈については,当然ですが,これまでに裁判例がありません。
そこで,現時点でははっきりと判断できないのです。
まとめると実際に周囲(他の区分所有者)に与える迷惑の程度によって禁止できるかどうかが決まるとしかいえません。

5 管理規約による許諾が住宅宿泊事業の届出の要件となる可能性

マンションでの民泊を禁止できるか,というテーマは,ここまででは終わりません。
管理規約で民泊を禁止できるかどうか,という管理組合vs区分所有者の関係とは別に住宅宿泊事業の届出ができるかどうかという,住宅宿泊事業法による規制の問題があります。
つまり管理規約で民泊OKになっていないと,住宅宿泊事業の届出が拒否されるのではないかという問題です。
この点,住宅宿泊事業法の条文には,届出に管理規約上の許諾が必要という規定はありません。
届出の欠格事由(住宅宿泊事業法4条)は,についてのものであり,住居(建物)についての制限はありません。
詳しくはこちら|住宅宿泊事業法(平成29年民泊新法)の条文の全文
しかし,それ以前の政府の検討の中では,管理規約上の許諾が必要という趣旨の内容がありました。正確には『管理規約違反の不存在の確認』というものです(民泊・検討会・平成28年6月『民泊サービス』のあり方に関する検討会最終報告書『Ⅲ 2・p4〜』)。
詳しくはこちら|最終報告書|規制内容|住宅提供者=ホスト|『一定の要件』
今後,住宅宿泊事業法の施行令や施行規則などでこのような制限が作られるかもしれません。

6 届出の添付書類として民泊OKの管理規約が指定される可能性

施行令や施行規則では管理規約の規定を届出の条件(要件)とする可能性があるとすれば,法律から委任されている場合です。
まず,届出の方法を規定する条文に省令への委任がありますのでみてみましょう。

<住宅宿泊事業法の届出の添付書類の条文>

前項の届出書には、当該届出に係る住宅の図面、第一項の届出をしようとする者が次条各号のいずれにも該当しないことを誓約する書面その他の国土交通省令・厚生労働省令で定める書類を添付しなければならない。
※住宅宿泊事業法3条3項

この中の国土交通省令・厚生労働省令で定める書類として,(マンションの場合は)民泊を許容する管理規約というものが規定されたらどうでしょうか。
しかし,省令に委任する元の住宅宿泊事業法3条3項は届出の条件を定めているようには読めません。純粋に事務的な内容です。実質的に届出を不能にする条件を省令に委任しているわけではないのです。

7 『住宅』の定義に民泊OKの管理規約が規定される可能性

さらに,『住宅』の定義から無理やり制約を作るという想定もしてみましょう。

<『住宅』の定義の条文>

第二条 この法律において『住宅』とは、次の各号に掲げる要件のいずれにも該当する家屋をいう。
 一 当該家屋内に台所、浴室、便所、洗面設備その他の当該家屋を生活の本拠として使用するために必要なものとして国土交通省令・厚生労働省令で定める設備が設けられていること。
 二 現に人の生活の本拠として使用されている家屋、従前の入居者の賃貸借の期間の満了後新たな入居者の募集が行われている家屋その他の家屋であって、人の居住の用に供されていると認められるものとして国土交通省令・厚生労働省令で定めるものに該当すること。

まず,1号は,『省令で定める設備』です。省令で規定できるのは,設置されていなくてはならない設備に限定されています。
省令で管理規約の内容を限定することはできません。
2号は人の居住用であることを判断するための具体的な基準を省令に委任しています。
やはり管理規約の内容を省令に委任したものではありません。
いずれの省令への委任でも管理規約の内容による届出の制約はできないといえます。
しかし,一般的にこのような理論的な委任関係から逸脱した通達やガイドラインは多くあります。
詳しくはこちら|行政の肥大化・官僚統治|コスト・ブロック現象|小規模事業・大企業
今後の住宅宿泊事業法に関係する下位のルールの誕生を注意深くみまもって行きたいと思います。

本記事では,マンションでの民泊を禁止できるかどうか,というテーマについて説明しました。
繰り返しですが,まだ明確な解釈(判例)のない問題です。新たに生じた実際の事案では,多くの個別的事情から判断されます。
実際に民泊の運営をしている方や始める予定の方は,本記事の内容だけで判断せず,弁護士の法律相談をご利用くださることを強くお勧めします。