【住宅宿泊事業法や特区民泊に対応した管理規約条項サンプル(国交省)】

1 民泊の規制緩和により管理組合は民法対応が必要となる
2 住宅宿泊事業法に対応した標準管理規約の改正案
3 特区民泊に対応した国交省の管理規約の条項案
4 マンション管理規約による民泊禁止は無効となる可能性がある

1 民泊の規制緩和により管理組合は民法対応が必要となる

平成27年から特区民泊の制度の運用が始まりました。
詳しくはこちら|民泊条例制定|理論・進捗|具体的サービス=TOMARERU
平成29年には住宅宿泊事業法(民泊新法)が制定され,平成30年には施行される予定となっています。
詳しくはこちら|住宅宿泊事業法(平成29年民泊新法)の条文の全文
このような民泊の規制緩和によって実際に大きな影響が生じつつあるのがマンション(区分所有建物)の対応です。
具体的には,管理規約でこのような適法な民泊を禁止するか,認めるか,という問題です。
以前は,民泊には違法(と思われる)ものが多く,保健所の調査や警察の捜査の対象となるケースがよくありました。
今後,民泊が適法になると,保健所や警察は手を出せません。
管理組合が直接対応するという状況になります。
むしろ,以前は,管理組合だけで対応する必要がなかったといえます。

2 住宅宿泊事業法に対応した標準管理規約の改正案

管理組合が民泊に対応する具体的内容は,管理規約の整備です。
要するに,区分所有者の総意として民泊を禁止するか認めるかを決めるという本質的なことです。
ところで平成29年に住宅宿泊事業法が制定され,平成30年には施行されます。
適法な民泊が非常に多く誕生します。
そこで,国土交通省は,標準管理規約に民泊の禁止する条項と認める条項を追加する予定です。
平成29年8月時点では原案が公表されているにとどまります。これを紹介します。

<住宅宿泊事業法に対応した標準管理規約の改正案>

あ 共通事項

マンション標準管理規約(単棟型)について
12条1項の住居専用規定の後に
12条2項を追加する(いorう)

い 新法民泊を可能とする条項

区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用することができる。

う 新法民泊を禁止する場合

区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用してはならない。

え 情報ソース

平成29年6月19日
『マンション標準管理規約』の改正案に関するパブリックコメント開始
このアナウンスにおける『別紙1』である
外部サイト|国土交通省|『マンション標準管理規約』の改正案・パブコメ

3 特区民泊に対応した国交省の管理規約の条項案

適法な民泊は,住宅宿泊事業法制定より前からありました。
住宅宿泊事業法の制定前の,いわゆる合法民泊である特区民泊です。
特区民泊の制度が始まり,普及しつつあった時期に,国土交通省は,特区民泊に対応した管理規約の条項サンプルを公表しています。
前記の平成29年の標準管理規約の案とほとんど同じです。ただし,禁止or認めるという判断を使用細則に委ねる条項もあります。
使用細則に委任する条項は,住宅宿泊事業法への対応でも使えます。

<特区民泊に対応した国交省の管理規約の条項案>

あ 共通事項

マンション標準管理規約(単棟型)について
12条1項の住居専用規定の後に
12条2項を追加する(い〜え)

い 特区民泊を認める条項

区分所有者は、その専有部分を国家戦略特別区域法第13条第1項の特定認定を受けて行う国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業に使用することができる。

う 禁止を明示する条項

区分所有者は、その専有部分を国家戦略特別区域法第13条第1項の特定認定を受けて行う国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業に使用してはならない。

え 使用細則に委ねる条項

区分所有者が、その専有部分を国家戦略特別区域法第13条第1項の特定認定を受けて行う国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業に使用することを可能とするか否かについては、使用細則に定めることができるものとする。

お 情報ソース

国住マ第39号国住賃第22号
平成28年11月11日
国土交通省住宅局長
外部サイト|国土交通省|平成28年11月11日国土交通省住宅局長通達

4 マンション管理規約による民泊禁止は無効となる可能性がある

以上は,マンションの管理規約の条項のサンプルの説明でした。
国交省がサンプルを出しているので,総会(集会)で規約を設定(変更)すれば民泊が禁止できると思ってしまうかもしれません。
しかし,これについては法的な難しい解釈があります。
別の記事で説明します。
詳しくはこちら|マンション管理規約で民泊を禁止できるか(有効性や住宅宿泊事業法との関係)

本記事では,マンション管理規約の民泊の禁止や許諾の条項の公的サンプルを紹介しました。
実際には,総会でこのような条項を設定できるかどうかという解釈の問題もあります(前記)。
実際に民泊の運営をしている方や始める予定の方は,本記事の内容だけで判断せず,弁護士の法律相談をご利用くださることを強くお勧めします。

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