1 用語|法律上の正式名称/俗称|説明の前提
2 管理規約の変更|集会×決議要件|4分の3以上と高い
3 規約の有効性|共用部分|原則は有効
4 規約の有効性|専用部分|原則は無効
5 規約設定×特定の区分所有者の『承諾』|基本
6 規約変更×特定の区分所有者の『承諾』|解釈論
7 使用細則×特定の区分所有者の『承諾』
8 管理規約の扱い|効力の範囲・売却時の扱い
9 弁護士費用を負担する違約金条項は有効である(概要)

1 用語|法律上の正式名称/俗称|説明の前提

本記事では,マンション管理規約の設定・変更の手続を説明します。
最初に,用語・語法で紛らわしいものをまとめておきます。

<用語|法律上の正式名称/俗称>

法律上の正式名称 俗称
規約 (マンション)管理規約
集会 総会

以下,基本的に『管理規約』『集会』の呼称を用います。

2 管理規約の変更|集会×決議要件|4分の3以上と高い

管理規約の設定・変更には集会の決議が必要です。
これについてまとめます。

<管理規約の変更|集会×決議要件>

あ 集会開催

規約の設定・変更・廃止
→集会(総会)の決議が必要

い 招集通知・内容

集会日の1週間前までに通知する
『目的事項』『議案の要領』の記載が必要である

う 決議要件|法律上の規定

次のそれぞれの『4分の3』以上の賛成
ア 区分所有者の『頭数』
イ 議決権割合
専有部分の床面積割合で算定される

え 決議要件|緩和

規約に規定することによる緩和はできない
※区分所有法31条
詳しくはこちら|区分所有法の集会・総会|基本|決議要件|管理規約の効力

マンション所有者の頭数・床面積割合の両方の『4分の3以上』の賛成が必要です。
つまり大部分の所有者の賛成がない限り規約の追加はできないのです。
さらにこの決議要件は『緩和する規定』自体が禁止されています。
『変更工事』の場合は『規約による決議要件緩和』が認められています。
要するに『規約』はそう簡単に動かすことができないことになっているのです。

3 規約の有効性|共用部分|原則は有効

管理規約でどのような事項でも定められるわけではありません。
まずは『共用部分』に関する規約の条項について有効性をまとめます。

<規約の有効性|共用部分>

あ 共用部分の管理に関する事項|原則

規約で定めることができる
→規約の設定は有効である

い 共用部分の管理に関する事項|例外

規約が共同生活の維持を超えて過酷なものである場合
→効力が否定される
※民法90条
※東京高裁昭和47年5月30日

4 規約の有効性|専用部分|原則は無効

規約のうち専用部分に関する規定の有効性についてまとめます。

<規約の有効性|専用部分>

あ 専有部分に関する事項|原則

専有部分の管理・使用は『区分所有権』に基づく
→区分所有者の自由
=制限を受けない
→原則として規約で定めることができない
→『特段の事情』がない限り,規約の設定は無効である

い 専有部分に関する事項|特段の事情

区分所有者全体に影響を及ぼす事項である場合
→『特段の事情』ありと言える
=『共同利益』『区分所有者相互間の事項』に該当する
※区分所有法6条,30条1項
→規約で定めることができる
※大阪高裁平成20年4月16日

5 規約設定×特定の区分所有者の『承諾』|基本

管理規約として定めることはできるけれど個別的承諾が必要なものもあります。

<規約設定×特定の区分所有者の『承諾』|基本>

あ 規約の設定・変更・廃止×『承諾』

『一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼす』場合
→当該区分所有者の『承諾』が必要である
※区分所有法31条1項後段

い 『特別の影響を及ぼす』|解釈

ア 比較衡量
次の2つを比較衡量する
・規約の設定・変更・廃止の必要性・合理性
・一部の区分所有者が受ける不利益
イ 受忍限度
一部の区分所有者が受ける不利益が『受忍限度』を超える場合
→『特別の影響を及ぼす』と判断する

6 規約変更×特定の区分所有者の『承諾』|解釈論

規約変更のための区分所有者の『承諾』について具体例を紹介します。

<規約変更×特定の区分所有者の『承諾』|解釈論>

あ 駐車場の料金増額→『承諾』不要|判例

規約変更案=駐車場の料金増額
ア 規約変更(増額)の必要性・合理性がある
イ 変更内容(増額幅)が社会通念上相当な範囲である
→『受忍限度』を超えない
→『特別の影響』なし
→『承諾』がなくても規約変更は有効である
※最高裁平成10年10月30日

い 住居専用規定の新設→『承諾』必要|解釈論

ア 前提事情
既に住居以外の形態で使用している区分所有者がいる
規約変更案=住居専用規定を新たに設定する
イ 解釈論
住居以外の使用をしている区分所有者にとっては『損害』が大きい
→『受忍限度』を超える
→『特別の影響』あり
→規約変更のためには『承諾』が必要である
※稲本洋之助ほか『コンメンタール マンション標準管理規約』日本評論社p52〜

7 使用細則×特定の区分所有者の『承諾』

『規約』と似ているものに『使用細則』があります。
(別記事『使用細則・基本・シェアリング制限』;リンクは末尾に表示)
使用細則の設定の場合でも,前記『承諾』の制度は適用されます。

<使用細則×特定の区分所有者の『承諾』>

細則の制定について
『一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼす』場合
→当該区分所有者の『承諾』が必要である
※区分所有法31条1項後段類推適用
※最高裁平成10年10月30日

8 管理規約の扱い|効力の範囲・売却時の扱い

管理規約は特殊な効力・扱いがあります。

<管理規約の扱い|効力の範囲・売却時の扱い>

あ 規約×効力の範囲

購入者などの第三者にも効力を生じる
→『集会の決議』と同様である
※区分所有法46条
詳しくはこちら|区分所有法の集会・総会|基本|決議要件|管理規約の効力

い 規約×売却時の扱い

専有部分を売却する時
→管理規約は『重要事項説明義務』の対象になる
※宅建業法35条1項6号
詳しくはこちら|宅建業者・重要事項説明義務|基本|内容・説明する場面・方法

管理規約は多数の区分所有者の『共同生活』『共同の利益』に関わります。
このような性格が反映されているのです。

9 弁護士費用を負担する違約金条項は有効である(概要)

管理規約の中に,違反者が違約金を負担する条項を設定する実例もあります。
管理費の滞納に関して,回収のために要する弁護士費用を滞納者が負担する条項を有効とした裁判例があります。
詳しくはこちら|『弁護士費用加算条項』の有効性|東京高裁H26.4.16マンション管理規約で有効と認めた
悪質な者の行為によるコストを他の区分所有者が負担しないような工夫といえます。

本記事では,マンション管理規約に関する基本的な内容を説明しました。
実際には,設定する条項ごとに有効性を慎重に検討する必要があります。
実際にマンション管理規約の設定(変更)の問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。