【弁護士会照会による生命保険の情報(契約内容)の取得】

1 弁護士会照会による生命保険の情報の取得(総論)
2 生命保険の情報を取得・活用する典型例
3 生命保険の照会に必要な情報
4 弁護士会照会に対する生命保険会社の情報開示の実情
5 弁護士会照会による生命保険協会への一括照会
6 生命保険協会の一括照会の制度の終了(平成29年5月)
7 令和3年開始の一括照会制度(概要)
8 現在の弁護士会照会による生命保険の照会方法

1 弁護士会照会による生命保険の情報の取得(総論)

いろいろな問題解決の手続の中で、生命保険の情報が必要となる、あるいは活用できるという場面があります。
自分以外の名義の生命保険の情報を取得する方法の1つに弁護士会照会があります。
詳しくはこちら|弁護士会照会|基本|公的性格・調査対象・手続の流れ
本記事では、弁護士会照会により生命保険の情報する方法や実情について説明します。

2 生命保険の情報を取得・活用する典型例

生命保険の情報を取得し活用する状況は主に3つあります。

<生命保険の情報を取得・活用する典型例>

あ 差押

債務者名義の保険契約の有無や内容の情報を得る
解約返戻金の差押をする
詳しくはこちら|生命保険の差押|解約返戻金を受け取る|特定の程度=証券番号不要

い 相続

被相続人名義の保険契約の有無や内容の情報を得る
→相続財産となる(遺産分割の対象とする)
詳しくはこちら|相続財産の範囲|一身専属権・慰謝料請求権・損害賠償×損益相殺・継続的保証

う 財産分与(離婚)

相手方(配偶者)名義の保険契約の有無や内容の情報を得る
→清算的財産分与の対象とする
詳しくはこちら|財産分与の対象財産=夫婦共有財産(基本・典型的な内容・特有財産)

3 生命保険の照会に必要な情報

生命保険の照会に必要な情報は個人を特定するものです。
最低限、これだけが判明すれば照会できるのです。

<生命保険の照会に必要な情報>

対象者の氏名・生年月日・住所

4 弁護士会照会に対する生命保険会社の情報開示の実情

弁護士会から弁護士会照会がなされた場合、生命保険会社は回答義務があるので、通常は回答(開示)します。
しかし、中には、開示を拒否するという誤った扱いがなされるケースもあります。

<弁護士会照会に対する生命保険会社の情報開示の実情>

あ 理論面

弁護士会照会がなされた場合
→一般的な開示義務がある
詳しくはこちら|弁護士会照会|回答義務|開示拒否の正当事由・法的責任・不利益扱い

い 実情

生命保険会社が開示(回答)を拒否した事例がある
顧客に対する守秘義務を利用とするものが多い
不当な理由(回答拒否)である
※『自由と正義2011年12月』日本弁護士連合会p28〜

5 弁護士会照会による生命保険協会への一括照会

実際には、対象者名義の保険契約がどの保険会社にあるのか分からないというケースも多いです。
そのような場合は、生命保険協会だけに照会すれば、41社が確認して回答してくれるシステムがありました。

<弁護士会照会による生命保険協会への一括照会(※1)

あ 対象となる保険

生命保険全般
簡易生命保険を含む

い 照会先

一般社団法人生命保険協会だけを照会先として照会する

う 回答

生命保険協会が取り次ぐ
→生保協会加盟の各保険会社41社が回答する

え 実情

原則として回答されていた
※『自由と正義2011年12月』日本弁護士連合会p28〜
※第一東京弁護士会業務改革委員会第8部会『弁護士法第23条の2 照会の手引き 6訂版』第一東京弁護士会2016年p152

6 生命保険協会の一括照会の制度の終了(平成29年5月)

生命保険協会が一括照会に応じていたのは、自主的な対応(サービス)でした。
平成29年5月で、このサービス期間は終了しました。

<生命保険協会の一括照会の制度の終了(平成29年5月)>

あ 取次ぎサービスの終了

平成29年5月において
生命保険協会による取次ぎサービス(前記※1)は終了した
※平成29年5月第一東京弁護士会『生命保険協会の取次ぎ終了について』(配布物)

い サービス終了の理由

今まで無償サービスとして行ってきた
しかし業務量過多により続けることが難しくなった
個人情報に配慮する必要もあった
→サービスを終了した
※平成29年6月一般社団法人生命保険協会本部総務部契約生保グループヒアリング

う 影響

生命保険加入者にとって
情報が関係者に補足(取得)されるリスクが減少した

7 令和3年開始の一括照会制度(概要)

その後、令和3年に、生命保険協会による一括照会制度は改めて開始しました。しかし、相続や判断能力低下となった者を対象とするものであり、また、弁護士会照会の手続によらない照会である、という点で、前述の制度(平成29年以前)とは違う制度といえるでしょう。令和3年に開始した一括照会制度については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|生命保険契約照会制度(相続時の一括照会)

8 現在の弁護士会照会による生命保険の照会方法

現在では、各個別の生命保険会社を照会先として、弁護士会照会を行う必要があります。
一斉に多数の保険会社を照会先として照会の申出をすることは可能です。
しかし、手間や手数料が異様に高くなってしまいます。
他の情報で紹介先を絞り込む方法が望ましいです。

<現在の弁護士会照会による生命保険の照会方法>

あ 個別的照会

各保険会社を個別の照会先として照会する必要がある
照会先1社ごとに1件分のに照会手数料が発生する
※平成29年5月第一東京弁護士会配布物『生命保険協会の取次ぎ終了について』

い 実務的な工夫

他の情報から保険契約がありそうな保険会社を絞る
例;預金口座からの保険料引落から保険会社を特定する
→最小限の照会先に対して照会の申出をする

本記事では、弁護士会照会によって生命保険の情報を取得することについて説明しました。
実際には、個別的な事情により最適な対応方法が違ってきます。
実際に保険などの財産の調査の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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