【弁護士会照会|回答義務|開示拒否の正当事由・法的責任・不利益扱い】

1 弁護士会照会に対する一般的回答義務
2 弁護士会照会|回答拒否の正当事由|基準・判断要素
3 地方税法における『秘密』の解釈論|閣議決定
4 文書提出命令×守秘義務|判例の補足意見|弁護士会照会も同様
5 弁護士会照会の回答を拒否すると不利益が生じることがある
6 照会への違法な開示×法的責任|開示が違法となることもある
7 回答義務の否定事例=前科照会・開示事件

1 弁護士会照会に対する一般的回答義務

弁護士会照会を受けた機関・人は対応に困るケースがあります。
照会先は,顧客や従業員などの『情報を預かっている』機関や者です。
照会先は,『預かっている情報』を『敵』に渡すことになるのです。
この点,弁護士会照会を受けた者は開示義務を負っています。

<弁護士会照会に対する一般的回答義務>

弁護士会照会を受けた公務所または公私の団体は,正当な理由がない限り,照会された事項について報告をすべきである
※最高裁平成28年10月18日
※最高裁平成30年12月21日(回答義務の存在を前提としている)
※最高裁昭和56年4月14日
※広島高裁岡山支部平成12年5月25日
※大阪高裁平成19年1月30日
※『最高裁判所判例解説民事編(平成28年度)』法曹会2019年p339
※『自由と正義2019年11月』p12,13参照

2 弁護士会照会|回答拒否の正当事由|基準・判断要素

弁護士会照会に対する回答は『絶対的な義務』というわけではありません。
判例上『回答拒否が可能』であることを前提としているものも存在します。
結局『報告を拒否する正当事由』があれば,拒否できます。
この『正当事由』の要素は次のようなものです。

<弁護士会照会×回答拒否の正当事由|基準>

あ 開示拒否基準|概要

『利益』の比較衡量を行う
『拒否することにより得られる利益』が優先される場合
→拒否の『正当事由』ありとなる

い 報告による得られる公共的利益|例

ア 真実の発見イ 社会正義の実現ウ 裁判所の公正な判断の確保  拒否することにより得られる法益|例
ア 個人の名誉イ プライバシーウ 公務員の守秘義務エ 捜査の密行性(警察,検察関連)オ 通信の秘密

3 地方税法における『秘密』の解釈論|閣議決定

実際に弁護士会照会に対する『不当拒否』というケースがあります。
個人情報の重視から『誤解=過剰な保護』になってしまうような状況です。
例えば,行政機関が,地方税法上の『秘密』を理由にして開示を拒否することがあります。
適正な判断もありますが『誤解=過剰な保護』というものもあります。
これについて,公式な見解が出されています。

<地方税法における『秘密』の解釈論|閣議決定>

あ 閣議決定|概要

質問主意書に対する答弁
内閣衆質151第33号;第151回国会
平成13年4月6日閣議決定
地方税法22条の『秘密』について

い 決定内容

ア 公共的利益の明示 弁護士会照会の中で『公共的な利益』を示す必要がある
個別事例に即して具体的に明らかにする
イ 『公共的な利益』|内容 照会に応じた報告を受けることによって得られる利益

4 文書提出命令×守秘義務|判例の補足意見|弁護士会照会も同様

『不当な開示拒否』として弁護士会照会とは別のケースを参考として紹介します。

<文書提出命令×守秘義務|判例の補足意見>

一定の法令上の根拠に基いて開示が求められる場合
→『正当な理由』に該当する
→守秘義務の例外となる
※最高裁平成19年12月11日(補足意見)

これは『裁判所による文書提出命令』です。
しかし公的な調査という意味で,本質的には弁護士会照会でも同様と言えます。

5 弁護士会照会の回答を拒否すると不利益が生じることがある

弁護士会照会を受けた機関は回答義務があります(前述)。
従って,正当な照会に対し,合理的な理由もなく『拒否』することは『違法』です。
しかし,これに対する罰則は規定されていません。
間接的に不利益を受けることにつながることはあります。
差押の前提として金融機関・保険会社が弁護士会照会を受けたケースが典型例です。
その後の差押における『特定』が緩和される,という判断につながります。
ちょっと複雑ですので,別記事にまとめてあります。
詳しくはこちら|預貯金の差押|特定の趣旨・範囲|支店特定不要説|特定方式
詳しくはこちら|生命保険の解約返戻金の差押(特定の程度や事前の調査内容)

6 照会への違法な開示×法的責任|開示が違法となることもある

弁護士会照会は,最初に弁護士会の審査が行われ『必要性』が確認されます。
『必要性』が不十分な場合は照会が実行されません。
実際に『必要性』が足りないのに照会を実行してしまったケースもあります。
この場合は,関係者が法的責任を負うことがあります。

<照会への違法な開示×法的責任|例>

あ 責任を負う者

ア 照会先=開示に応じた者・機関イ 弁護士会ウ 申し立てた弁護士

い 責任の内容

ア 損害賠償責任 プライバシー権侵害などによるもの
イ 懲戒責任 弁護士が弁護士会から受けるペナルティー

実例を次に紹介します。

7 回答義務の否定事例=前科照会・開示事件

弁護士会照会に対する回答・開示が『違法』と判断された判例があります。
地方自治体が個人の前科を開示したケースです。

<回答義務の否定事例=前科照会・開示事件>

あ 事案

弁護士会が地方自治体に弁護士会照会を行った
地方自治体が個人の前科を開示した

い 裁判所の判断

『回答を拒否すべきであった』
→地方自治体の違法性が肯定された
=損害賠償請求が認められた

う 『回答義務』の扱い

『無条件に回答する義務』とは判断していない
※最高裁昭和56年4月14日

詳しくはこちら|プライバシー権×前科|基本|忘れられる権利|報道以外

<参考情報>

『第一東京弁護士会会報2014年2月1日』p35

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