1 清算的財産分与の対象財産(基本)
2 典型的なプラスの夫婦共有財産
3 保険に関する夫婦共有財産性
4 動産に関する夫婦共有財産性
5 典型的なマイナスの夫婦共有財産
6 マイナス財産の財産分与
7 特有財産

1 清算的財産分与の対象財産(基本)

財産分与の分類のうち主要なものは清算的財産分与です。
詳しくはこちら|財産分与の基本(3つの分類・典型的な対立の要因)
本記事では,清算的財産分与で分ける対象となる財産について説明します。
対象となる財産は,民法上,夫婦の協力によって得た財産と規定されています。
実質的な夫婦の財産なので『夫婦共有財産』と呼びます。

<清算的財産分与の対象財産(基本)>

あ 条文規定(要約)

夫婦がその協力によって得た財産
※民法768条3項

い ネーミング

『夫婦共有財産』と呼ぶ

う 除外される財産(概要)

夫婦一方の所有財産であっても
夫婦の協力によって得たものではない場合
→夫婦共有財産ではない(後記※3)
『特有財産』(固有財産)と呼ぶ

2 典型的なプラスの夫婦共有財産

夫婦共有財産の内容はとても幅広いです。
まず,一般的な財産,つまりプラス財産の典型的なものをまとめます。

<典型的なプラスの夫婦共有財産>

あ 不動産

例;土地・建物・借地権
不動産の売却代金も含まれる
※東京高裁昭和57年2月16日;借地権について
※東京高裁平成8年12月25日;借地権について

い 預貯金・現金

生活費の一部を貯めた『へそくり』も含む
詳しくはこちら|預貯金は代表的な財産分与の対象であるが例外もある

う 保険

夫婦共有財産により保険料を負担していた場合
→保険に関する財産が夫婦共有財産となる(後記※1)

え 有価証券・金融商品

例;株式・投資信託
※広島高裁岡山支部平成16年6月18日;株式について

お 自動車
か 動産

ア 宝石類
夫婦の一方の固有財産となることもある(後記※2)
イ 美術品・骨董品
ウ 家財道具

き 会員権

例;ゴルフ会員権・レジャークラブ会員権
※東京地裁平成5年2月26日;ゴルフ会員権について
※東京高裁平成7年4月27日;ゴルフ会員権について

く 将来に具体化する財産

ア 退職金
詳しくはこちら|将来の退職金の財産分与・資格の価値の財産分与
イ 年金受給権
詳しくはこちら|年金分割の制度趣旨|公的年金の基本事項=被保険者・標準報酬
ウ 資格
財産として扱うこともある
例;医師や弁護士など
詳しくはこちら|将来の退職金の財産分与・資格の価値の財産分与

け 婚姻費用の未払い分

婚姻費用の未払い期間がある場合
→この清算も財産分与に含める
詳しくはこちら|財産分与における過去の生活費負担の過不足(未払い婚姻費用)の清算

こ ペット(動物)

詳しくはこちら|離婚とペットの奪い合い|引き取り手≒親権者の判断|内縁解消・同棲解消でも同様

3 保険に関する夫婦共有財産性

夫婦共有財産の1つに保険があります(前記)。
保険とはいっても,財産としての具体的内容にはいろいろなものがあります。

<保険に関する夫婦共有財産性(※1)>

あ 生命保険の満期金

※東京高裁昭和57年2月16日

い 損害保険金

ア 事案
夫が交通事故により身体障害者となった
損害保険金が夫に支払われた
保険金のうち一部を夫婦共有財産とした
イ 対象部分
逸失利益額のうち婚姻中の期間に対応する部分
ウ 期間算定の終期
離婚成立時点まで
※大阪高裁平成17年6月9日

う 解約返戻金

満期前の保険について
→解約返戻金が夫婦共有財産となる
詳しくはこちら|死亡生命保険等は被保険者の同意が必要,事情によっては被保険者が解除請求できる

4 動産に関する夫婦共有財産性

動産も夫婦共有財産の1つです。
具体的な内容によっては,例外的に夫婦共有財産として否定されることもあります。

<動産に関する夫婦共有財産性(※2)>

あ 一般的な扱い

宝石類について
→夫婦共有財産とした
※東京高裁平成7年4月27日

い 固有財産という扱い

妻の宝石類について
→社会通念上の専用品(固有財産)とした
→清算的財産分与の対象ではない
※名古屋家裁平成10年6月26日

5 典型的なマイナスの夫婦共有財産

清算的財産分与の対象としてマイナスの財産もあります。

<典型的なマイナスの夫婦共有財産>

夫婦の一方が負う債務
例;住宅ローンなど

6 マイナス財産の財産分与

債務についてはプラス財産と大きく違うところがあります。
単純に『分ける』ことができないのです。

<マイナス財産の財産分与>

あ 当事者間での効力

債務を引き受ける者を決めることについて
例;どちらが返済するのか
→夫婦間で合意することは有効である

い 債権者への効力

ア 法的効力
債務を引き受ける合意について
債権者の承諾がない限り,債権者には効力が及ばない
イ 具体的状況
債務の返済が遅滞(滞納)となった
→債権者は従前の債務者に対する請求・強制執行ができる

債務の財産分与では,当事者間の扱いと債権者との関係が別の扱いとなるのです。

7 特有財産

夫婦の一方の所有物でも,夫婦共有財産ではないものもあります。
これを『特有財産』と呼んでいます。

<特有財産(※3)>

あ 特有財産

ア 夫婦の一方が結婚前から保有していた資産
イ 夫婦の一方が相続・贈与により取得した資産
ウ 日常生活の範囲内で夫婦の一方が単独で使用するもの
例;洋服・化粧品・アクセサリー
エ 結婚後に,一方が独自の才覚で自らの財産として形成したもの
例;株式の利益
→『アやイ』の派生的な財産,とも言える

い 子供の固有の財産

例;子供名義の預貯金
お年玉やお祝いを蓄えたもの
※高松高裁平成9年3月27日
詳しくはこちら|子供名義の預貯金は原資や経緯によって財産分与での扱いが決まる