1 生命保険契約照会制度(相続時の一括照会)
2 照会できる生命保険契約
3 相続の際に照会できる者
4 判断能力低下の際に照会できる者(参考)
5 一括照会の手続
6 平成29年以前の一括照会制度(参考)

1 生命保険契約照会制度(相続時の一括照会)

相続・遺産分割の際は、相続財産(遺産)を探し出して特定、確定する段階だけでも多くの手間、時間を要するケースもよくあります。この点、生命保険金は、相続財産そのものではなくても、場合によっては特別受益としてカウントされ、遺産分割に影響します。
詳しくはこちら|相続における生命保険金の扱いの全体像(相続財産・特別受益・遺留分)
結局、相続の問題では、相続財産とともに、生命保険についても探し出す必要があるのです。以前は生命保険会社ごとに照会する必要がありました。
この点、令和3年7月に、日本国内で営業するすべての生命保険会社に対して一括して調査できる便利な制度(生命保険契約照会制度)開始しました。これを利用すると調査漏れがなくなります。
生命保険協会|生命保険契約照会制度のご案内
本記事ではこの制度について説明します。

2 照会できる生命保険契約

相続の際に、一括して照会できる、つまり、回答される内容は、被相続人(調査対象者)が、契約者または被保険者となっている契約の有無です。どの保険会社に保険契約がある、ということが回答されるのです。保険契約の内容がどのようなものか、ということは回答されません。
もちろん、保険会社が判明すれば、その次に、その保険会社に対して保険内容の開示を請求すれば、回答を得られます。

照会できる生命保険契約

調査対象となる生命保険契約の範囲
会員会社は、生命保険協会が照会を受け付けた日現在有効に継続している個人保険契約(※)の契約者および被保険者の名寄せを行い、照会対象者にかかる生命保険契約の有無について調査を行います。
(※)ただし、財形保険契約及び財形年金保険契約、支払いが開始した年金保険契約、保険金等が据え置きとなっている保険契約は対象から除きます
※生命保険協会ウェブサイト

3 相続の際に照会できる者

生命保険契約の有無の一括照会ができる者は、相続人です。実際には、相続人が弁護士に相続に関する依頼をして、受任した弁護士が代理人として一括照会の手続をする、ということが多いです。

相続の際に照会できる者

生命保険契約照会制度(死亡)
本制度を利用できる方(照会者)の範囲
照会対象者が死亡している場合の照会者は、以下の通りとします。
1.照会対象者の法定相続人
2.照会対象者の法定相続人の法定代理人または任意代理人(※)
3.照会対象者の遺言執行人
(※)任意代理人の範囲は、弁護士、司法書士その他照会対象者の財産管理を適切に行うために照会対象者にかかる生命保険契約の有無を照会するにふさわしいと本会が認めた者とします。
※生命保険協会ウェブサイト

4 判断能力低下の際に照会できる者(参考)

なお、この一括照会制度が使えるのは、相続の際(死亡時)だけではありません。認知症になった場合など、自己の保険契約の契約の有無を照会する、その回答を受けるという意味を理解できない状態になった場合にも、利用できます。この場合に照会をすることができる者は、後見人(などの法定代理人)や3親等以内の親族(子やきょうだいなど)です。
このような場合には(相続・遺産分割ではなく)、財産の管理のサポートの一貫として照会するという位置づけになります。

判断能力低下の際に照会できる者(参考)

生命保険契約照会制度(認知判断能力の低下)
本制度を利用できる方(照会者)の範囲
照会対象者の認知判断能力が低下している場合の照会者は、以下の通りとします。
1.照会対象者の法定代理人(成年後見制度を利用している場合)
2.照会対象者の任意代理人(任意後見制度を利用している場合)
3.照会対象者の任意代理人(上記以外、※1、※2)
4.照会対象者の3親等以内の親族(およびその任意代理人)
(※1)法定代理人または任意後見制度に基づく任意代理人が選任されている場合には、それ以外の任意代理人からの照会申出は受け付けません。
(※2)任意代理人の範囲は、弁護士、司法書士その他照会対象者の財産管理を適切に行うために照会対象者にかかる生命保険契約の有無を照会するにふさわしいと生命保険協会が認めた者とします。
※生命保険協会ウェブサイト

5 一括照会の手続

生命保険契約照会制度(一括照会)を実際に使う場合には、WEB申請が便利です。オンラインで申請できますが、相続関係を示すための戸籍事項証明書など、書面を用意する必要があるので、事前準備を含めると、純粋にオンラインだけで完結するというわけではありません。

6 平成29年以前の一括照会制度(参考)

ところで、生命保険協会による一括照会制度は、過去にもありました。これは、相続(や判断能力低下)に限らないものであり、また、弁護士会照会を用いることが前提となっていた制度です。たとえば債権者が債務者の生命保険を把握してこれを差し押さえる、という流れの中で使うこともあったのです。
本記事で説明した一括照会(令和3年開始)のものは、相続や判断能力低下の時だけ使えるもので、一方、弁護士会照会の手続によらなくても使えます。以前の一括照会制度とは別の制度といえるでしょう。

本記事では、生命保険契約照会制度について説明しました。
実際の相続の際には、多くの財産の調査を十分に行う必要があります。
実際に相続や遺産分割に関する問題に直面している方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。