土地を所有しています。
3年後に住居を建築する予定です。
それまでの間は土地を利用する予定はありません。
そこで,友人に3年間だけ土地を賃貸しました。
友人には簡易な建物の建築を許しました。
借地として契約期間は30年となってしまうのでしょうか。

1 土地賃貸借が一時使用目的に該当すると,借地期間などの適用がない
2 一時使用目的客観的+合理的理由があれば認められる
3 建物が存在する場合でも経緯から一時的と分かれば一時使用目的が認められる
4 土地のリースバックは,取り壊し予定が明確なので一時使用目的と認められる
5 区画整理等で長期間の土地利用が不可能な場合,一時使用目的となる
6 賃貸人の土地利用計画を借地人が十分理解していないと一時使用目的と認められない
7 裁判上の和解で短期間の土地賃貸借を合意した場合,原則的に一時使用目的と認められる
8 裁判上の和解でも,『賃貸借期間』が長いと一時使用目的が否定されることもある
9 当事者が合意しただけでは一時使用目的は認められない;強行法規性

1 土地賃貸借が一時使用目的に該当すると,借地期間などの適用がない

建物所有の土地賃貸借は,借地借家法上の『借地』となります(借地借家法2条1号)。
しかし,土地の賃貸借契約の目的が一時使用の目的であることが明確であれば,借地借家法の規定の大部分が適用されません(借地借家法25条(借地法9条))。
つまり借地ということにはなりません。
そうすると,最低期間制限(30年)も適用になりません。
例えば,契約書で『3年』と規定してあればこれは有効,ということになります。

2 一時使用目的客観的+合理的理由があれば認められる

借地借家法は,借主保護のための法律です。
仮に契約書の記載で簡単に適用を排除できるとすると,適用排除とする契約(書)が流行ってしまいましょう。
それでは意味がないので,借地借家法は契約(合意)で排除できないのが原則,とされています(強行法規性)。
つまり一時使用目的という目的がハッキリしている場合だけ,そのルールが適用されるのです。

<一時使用目的の適用条件>

短期間に限り賃貸借を存続させる,という合意について客観的・合理的な理由が存在する
※判例1

<判断要素の例>

・土地の利用目的
・地上建物の種類、設備、構造
・賃貸期間

3 建物が存在する場合でも経緯から一時的と分かれば一時使用目的が認められる

賃貸借の対象土地の上に,実際に建物が建っていると,通常は一時使用目的ではない,と考えられます。
しかし,必ず,というわけではありません。

<建物が存在しても一時使用目的と認められるケース>

背景事情等から,暫定的・一時的な建物,ということが分かる

判例では,医学就業中限定という前提で土地を貸したケースについて,一時使用目的と認めたものがあります(判例2)。
この事例においては,期間を3年としており,実際には更新や賃料(地代)増額もなされていました。
更新賃料増額は,契約期間を長期化する意図があるという認定につながる方向です。
しかし,更新や賃料増額は一時使用目的を否定することにはならないと判断されました。

4 土地のリースバックは,取り壊し予定が明確なので一時使用目的と認められる

<取り壊し予定→一時使用目的が認められる典型例>

売買契約が締結された
土地上に古い建物があり,取り壊しまでの一定期間だけ売主が住んでいることにした

このように,土地の売買契約は先行させ,その後一定期間は,買主が売主に土地を貸すということが行われます。
売却とは逆方向に賃貸借が行われるのでリースバックと呼ぶことがあります。
この賃貸借契約により,売主が所有する建物の占有権原を確保することになります。
このような経緯から,建物が取り壊し予定となっていることを重視し,このリースバックについて,一時使用目的であると認められるのです。

5 区画整理等で長期間の土地利用が不可能な場合,一時使用目的となる

(1)公的プロジェクトで長期間の利用不可能一時使用目的となる

区画整理など,公的なプロジェクトにより,長期間の利用が不可能であることが明白な土地があります。
このような場合は,その土地を賃貸しても,客観的に長期間の利用は想定されていないということが明らかです。
原則として,一時使用目的賃貸借となります(判例3)。

(2)公的プロジェクトによる影響が小さい→長期間の利用可能一時使用目的とならない

しかし一方,区画整理の具体的な内容によっては,土地の位置・形状が大幅には変わらないということもあります。
その場合,土地の賃貸借について区画整理後も賃貸借が継続するということも想定できます。
そこで,一時使用目的とは認められず,その結果,借地として扱われる可能性もあります。

6 賃貸人の土地利用計画を借地人が十分理解していないと一時使用目的と認められない

判例の理論では,一時使用目的と言えるためには,短期間限定,ということが客観的であることが要求されています。
地主側の計画である場合は,これが具体化していて,かつ,賃借人も了解していることがポイントです。
逆に,賃借人が地主側の計画を知らなかった場合は,一時使用目的が認められないこともあります(最判昭和36年7月6日)。
要は,借地人サイドから見ると後付けで利用計画を作ったということになってしまうからです。
このようなケースにおいては,賃貸借契約締結当初より,次のような工夫をしておくと良いでしょう。

<地主側の土地利用計画→一般の借地と扱われるリスクを回避する工夫>

・一定期間後の土地利用計画を地主から賃借人に十分に説明しておく
・賃貸借契約書に,土地利用計画の内容を記載しておく
・土地利用計画に関する設計図,図面等を保管しておく

このような工夫は,地主・賃借人の認識を共通にしておくことにつながります。
無用な誤解,誤った主張を回避することになります。

7 裁判上の和解で短期間の土地賃貸借を合意した場合,原則的に一時使用目的と認められる

(1)裁判上の和解として短期間の土地賃貸借を合意することがある

裁判上の和解として,1年〜数年の土地賃貸借契約を合意することがあります。
裁判上の和解は,裁判官が関与して条項を作成し,調書として完成します。
つまり,裁判官が内容をチェックしているのです。
ここで,短期間限定の賃貸借として裁判上の和解が成立していれば,一時使用目的として有効です。

(2)裁判官がチェックしているので一時使用目的として期間も有効である

仮に一時使用目的ではないとすれば,最低限の期間30年となります。
和解内容が借地借家法違反となってしまいます。
裁判官の適法性チェックが誤っていた,ということになります。
結局裁判官が判断を誤っていない一時使用目的として有効である,という考え方になります。

8 裁判上の和解でも,『賃貸借期間』が長いと一時使用目的が否定されることもある

(1)裁判上の和解による『期間』(一時使用目的)が否定されたこともある

裁判上の和解における一時使用目的の土地賃貸借について,別の訴訟で有効性が否定された判例があります(判例5)。
つまり更新はないという条項が無効とされたのです。

(2)期間が22年と中途半端であったため一時使用目的にしては長い,と考えられた

この判例で,一時使用目的を否定した決め手は期間が長いということです。
契約期間が22年とされていたのです。
さすがに長いので短期間限定という意図は見えない,と判断されたのです。
裁判上の和解の有効性が否定されるという意味でレアなケースです。

9 当事者が合意しただけでは一時使用目的は認められない;強行法規性

(1)当事者が合意しただけでは一時使用目的は認められない

実際に,契約書に『一時使用目的』ということが明記されているけれど,現実的な短期限定の必要性・特殊性が一切ない,というケースがあります。
このような場合は,短期限定という客観的・合理的理由がない,ということになり,一時使用目的とは認められません。
合意しても無効,という性質を強行法規性と言います。

(2)長期間経過後に紛争が具体化することが多い

契約開始当時は,地主・賃借人ともに意向は合致しているのでトラブルになることはないでしょう。
しかし,長期間が経過し,気持ちが変わってきたり,また,相続により当事者に変更が生じると,借地権の主張が不意に飛び出すこともあります。

(3)一時使用目的は後から否定されるリスクがあるので定期借地契約が確実で使いやすい

土地の賃貸借があり,賃借人が土地上に建物を建てる,という場合は,十分に慎重に契約内容・契約書の確認・検討を行っておくべきです。
具体的には,現在は,定期借地契約,が整備されています。
<→別項目;定期借地契約
この方式で契約すれば,後から解釈が割れるリスクを避けることができます。
逆に一時使用目的賃貸借は,利用する場面が一挙に減っています。

条文

[借地借家法]
(一時使用目的の借地権)
第二十五条  第三条から第八条まで、第十三条、第十七条、第十八条及び第二十二条から前条までの規定は、臨時設備の設置その他一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合には、適用しない。
[借地法] 
第9条 第2条乃至前条ノ規定ハ臨時設備其ノ他一時使用ノ為借地権ヲ設定シタルコト明ナル場合ニハ之ヲ適用セス

判例・参考情報

(判例1)
[最高裁判所第1小法廷昭和42年(オ)第666号請求異議事件昭和43年3月28日]
その目的とされた土地の利用目的、地上建物の種類、設備、構造、賃貸期間等、諸般の事情を考慮し、賃貸借当事者間に短期間にかぎり賃貸借を存続させる合意が成立したと認められる客観的合理的な理由が存する場合にかぎり、右賃貸借が借地法九条にいう一時使用の賃貸借に該当するものと解すべく、(略)

(判例2)
[最高裁判所第3小法廷昭和35年(オ)第1066号家屋収去土地明渡請求事件昭和37年2月6日]
 而して、原審確定の右事実関係の下においては、被上告人の長男が医学修業中であり、卒業後本件土地にて医家の業務を開始することを予定して居つたので、地主であり、賃貸人である被上告人が、このことを考慮し、賃貸借の期間を右医業開始確定の時までとするため、本件土地上に建築せらるべき建物を戦災復旧用建坪一五坪のバラック住宅と限定し、特に条件を一時使用とする旨を契約書に明記してなされた本件土地の賃貸借契約は、たとえ右医家開業の時期が明確に定つて居らなかつたため、一応、賃貸借期間を三年と定め、その後医業開始に至らなかつたので、その期間を更新し或はその間に賃料を増額した事迹があつたとしても、これを一時使用のためのものとなすに妨げない。

(判例3)
[最高裁判所第1小法廷昭和30年(オ)第297号建物収去土地明渡請求事件昭和32年2月7日]
原判決は、訴外Aと被上告人との間の判示旧宅地の賃貸借は一時使用を目的とするものであることを認め、右賃貸借は、昭和二三年六月二三日右土地につき換地予定地の指定通知がなされると同時に終了したものであり、従つて上告人が本件建物を競落した昭和二五年九月一二日当時、訴外Aは右土地の換地である本件土地について借地権を有しなかつたものであることを認定し、また、右建物の競売手続において、建物の敷地について借地権あるものとして手続が進行せられたものであることを認むベき証拠はなく、建物の売買取引において特に取毀ち売却する旨の条件なきときは常に必ず敷地使用権あるものとして売却せられたものと認むべき根拠もない旨を判示した。原審の右判断は、その挙示の証拠に照らし、これを是認することができる。

(判例4)
[最高裁判所第1小法廷昭和42年(オ)第666号請求異議事件昭和43年3月28日]
本件賃貸借は被上告人の上告人に対する建物収去土地明渡請求事件についての裁判上の和解において成立したというのであり、また、右賃貸借において期間が一〇年と定められたのは、被上告人が右期間内に限り右土地を賃貸し、上告人がその期間内に限り、右土地を賃借し、その期間経過とともに地上建物を収去して土地を明渡すことを約したに基づくということを認めるに難くなく、右の事実、および本件賃貸借成立にいたる経緯に照らせば、本件和解当事者である上告人と被上告人は、期間の点につき借地法の規定の適用を受くべき契約を締結する意思がなかつたものと認め得るのである。しからば、本件賃貸借は一時使用のものであつたというべく(略)

(判例5)
[最高裁判所第3小法廷昭和44年(オ)第1141号請求異議事件昭和45年7月21日]
土地の賃貸借が借地法九条にいう一時使用の賃貸借に該当し、同法一一条の適用が排除されるものというためには、その対象とされた土地の利用目的、地上建物の種類、設備、構造、賃貸期間等諸般の事情を考慮し、賃貸借当事者間に、短期間にかぎり賃貸借を存続させる合意が成立したと認められる客観的合理的理由が存することを要するものである。そして、その期間が短期というのは、借地上に建物を所有する通常の場合を基準として、特にその期間が短かいことを意味するものにほかならないから、その期間は、少なくとも借地法自体が定める借地権の存続期間よりは相当短かいものにかぎられるものというべく、これが右存続期間に達するような長期のものは、到底一時使用の賃貸借とはいえないものと解すべきである。けだし、本来借地法の認めるような長期間の賃貸借を、右にいう一時使用の賃貸借として、同法一一条の規定を排除しうべきものとするならば、その存続期間においては同法の保護に値する借地権において、更新その他個々の強行規定の適用を事前の合意により排除しうる結果となり、同法一一条の適用を不当に免れるおそれなしとしないからである。
 したがつて、本件のように、賃貸借期間が二〇年と定められた場合においては、それが裁判上の和解によつて定められたとか、右契約締結前後の事情いかんなどは、賃貸借期間満了の際、更新拒絶の正当事由があるか否かの判断にあたり、その一資料として考慮するのは格別、それらの事情のみから、右賃貸借を一時使用のためのものと断ずることはできない。