【共有物に関する負担・持分買取権の法的性質論】

1 持分買取権|先取特権との違い
2 比較|保存の先取特権|概要
3 共有物に関する負担の求償の法的性質
4 共有物の負担の求償と純粋な不当利得の違い

1 持分買取権|先取特権との違い

共有物に関する負担についてのルールがあります。
詳しくはこちら|共有物に関する負担の基本(具体例・求償・特定承継人への承継)
その一環として共有持分買取権があります。
詳しくはこちら|共有持分買取権の基本(流れ・実務的な通知方法)
本記事では,これらの規定の趣旨や細かい解釈論を説明します。
先取特権と比較すると趣旨が分かりやすいです。

<持分買取権|先取特権との違い>

あ 基本

『保存』の先取特権(後記※1)と重複する
共有物の持分買取権の方が強化されている

い 強化された内容

ア 承継 特定承継人にも『債権者保護』の内容が承継される
※民法254条
イ 占有・登記→不要 債務者の占有・登記は不要である

2 比較|保存の先取特権|概要

持分買取権と『保存の先取特権』は同じ内容が多いです。
この2つの比較をまとめます。

<比較|保存の先取特権|概要(※1)

あ 保存の先取特権

『保存』のために要した費用について
→対象動産・不動産が担保となる
※民法320条,325条1号,326条

い 先取特権の限界|動産

引渡がなされると行使できない
=債務者が占有していることが必要である
※民法333条

う 先取特権の限界|不動産

登記が必要である
※民法337条

3 共有物に関する負担の求償の法的性質

共有物に関する負担の規定を細かく分析します。
法律的な構成について見解を整理します。

<共有物に関する負担の求償の法的性質>

あ 事務管理

事務管理に基づく請求権という見解
※民法697条,702条
※最高裁平成22年1月19日
※『判例タイムズ1317号』p114
※『判例タイムズ主要民事判例解説 別冊32号』p108

い 共有の規定

共有物に関する独自の請求権という見解
※民法253条1項
※東京地裁平成24年8月22日
※東京地裁平成22年1月7日

う 不当利得返還請求権

不当利得返還請求権の1つであるという見解
※民法703条
※東京地裁平成22年11月15日

最高裁判例では『事務管理』の構成が示されていると思われます。
この法的構成の違いによる現実的な影響はないでしょう。

4 共有物の負担の求償と純粋な不当利得の違い

共有物に関する負担の求償は不当利得返還請求権と似ています。
この2つの違いをまとめます。
なお,ここでの『不当利得返還請求権』は民法703条を根拠とする純粋な(一般的な)権利です。
前記の『共有物の負担(民法253条)』の法的性質の1つとは異なります。

<共有物の負担の求償と純粋な不当利得の違い>

あ 共有物の費用の求償

相手方が支払に応じない場合
→相手方の共有持分を強制的に買い取ることができる
『持分買取権』のことである
詳しくはこちら|共有持分買取権の基本(流れ・実務的な通知方法)
※民法253条2項

い 純粋な不当利得返還請求権

金銭請求以外の請求はない
※民法703条

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