1 共有不動産の賃貸借における賃料請求権の帰属
2 共有不動産の賃貸借における代理受領と分配
3 賃貸人の相続における賃料の帰属(概要)
4 賃貸人の相続の際の賃借人の対応(賃料供託)

1 共有不動産の賃貸借における賃料請求権の帰属

収益不動産を複数の者で共有しているケースもよくあります。
この場合の賃料請求権は,共有者に割合的に帰属することになります。

<共有不動産の賃貸借における賃料請求権の帰属>

あ 前提事情

賃貸借契約が締結されている
賃貸人が複数である
具体例;収益不動産を共有している

い 賃料の扱い|原則論

特に合意がない場合
→賃料債権は『可分』となる
=各共有者が持分割合相当の金額を賃借人に請求できる
※最高裁平成17年9月8日参照
詳しくはこちら|複数の賃貸人(共同賃貸人)の金銭債権・債務の可分性(賃料債権・保証金・敷金返還債務)

2 共有不動産の賃貸借における代理受領と分配

賃貸借の賃貸人が複数人存在する場合には,現実には通常,賃貸人のうち1人が代表として賃料を受領します。
もちろん,受領後には,各共有者(賃貸人)に賃料を分配する義務があります。
なお,賃料を受領する代表者を変更する,とか,各共有者が賃料のうち各自の持分割合相当額を請求するように変更することは自由にできません。
賃借人も含めて合意した内容となっている(契約書に記載されている)場合には,当然ですが,賃貸人と賃借人が変更に同意する必要があります。その前段階として,賃貸人として賃料支払方法の変更をするという意思決定をすることは,共有物の管理行為にあたる可能性が高いでしょう。

<共有不動産の賃貸借における代理受領と分配>

あ 賃料の代理受領権限

実際には共有者の1名(A)が他の共有者(B)から受領権限の委任を受けることが多い
→共有者の1名(A)が代表として賃料を受領する
例=賃貸借契約書でA名義の預金口座が送金先として指定されている

い 代理受領後の分配

Aは受任者の引渡義務を負う
→他の共有者に持分割合に応じて分配する義務がある
※民法646条

う 代理受領権の付与の解除(概要)

賃料の支払方法として共同賃貸人(全員)と賃借人が合意している場合
→これを変更するには,賃貸人と賃借人が改めて合意する必要がある
※東京地裁昭和57年10月18日
賃貸人として賃料の支払方法を変更することは共有物の管理行為にあたると考えられる
詳しくはこちら|共同の賃貸人(共有者)間の賃料支払方法の変更と口頭の提供の効力

3 賃貸人の相続における賃料の帰属(概要)

相続によって賃貸人が複数になることがあります。
結果的に共有不動産の賃貸借という状態になります。
この場合,賃借人が困る状況になるケースがあります。
賃料の帰属の法的扱いが複雑なのです。
まずは法的扱いの概要をまとめます。

<賃貸人の相続における賃料の帰属(概要)>

賃貸人が亡くなった
賃料債権は遺産分割の前後で帰属が異なる
詳しくはこちら|賃料債権・収入×相続|遡及効の制限→分割帰属|遺産分割の対象にもできる

4 賃貸人の相続の際の賃借人の対応(賃料供託)

賃貸人の相続により賃借人が困るケースがあります。
典型例と賃借人の対応策をまとめます。

<賃貸人の相続の際の賃借人の対応(賃料供託)>

あ 前提事情

賃貸人が亡くなった
相続人は複数人であると思われる
遺産分割協議が行われている様子である
賃借人は分割協議の状況が分からない

い 賃借人の負うリスク

『賃貸人たる地位』を誰が承継したか分からない
相続人のうち1人に賃料を払った場合
→『賃貸人たる地位の承継者』ではない可能性がある
=弁済が無効となるリスクがある

う 対応策

賃借人は,賃料について,債権者不確知による弁済供託を行う
→債務不履行にならずに済む
※民法494条

え 相続人の調査の要否(概要)

債務者が債権者(賃貸人の相続人)を確知できないことについて過失がある場合には供託は無効となる
→一定の調査をしておく必要はある
詳しくはこちら|債権者不確知による弁済供託の基本や典型例(債権者の相続・権能なき社団)

本記事では,共有不動産を対象とする賃貸借契約における賃料に関する問題を説明しました。
実際には,個別的な事情や主張・立証のやり方次第で結論が違ってきます。
実際に共有不動産の賃貸借の賃料に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。