【共同賃借人(賃借権の準共有)の賃料増減額に関する管理・変更の分類と当事者】

1 共同賃借人(賃借権の準共有)の賃料増減額に関する管理・変更の分類と当事者

賃貸借契約において、賃借人が複数であるケースがあります。共同賃借人が賃借権を準共有している状態といえます。
一般的に、(準)共有物に関する各種行為は管理行為や変更行為に分類されます。
詳しくはこちら|共有物の賃貸借に関する各種行為の管理行為・変更行為の分類(全体)
本記事では、賃借人が複数であるケースでの賃料の増減額(変更)に関わるものについて、管理行為、変更行為の分類と、誰が誰に対して行うか(当事者)について説明します。

2 準共有賃借権における賃料減額請求の分類

賃料が減額されると、賃借人にとっては有利です。そこで、賃料減額請求をすることは、(準)共有物の保存に分類されます。

準共有賃借権における賃料減額請求の分類

あ 一般的見解

ア 澤野氏見解 (賃借人が複数である賃貸借において)
減額請求については、共有物の保存に属するものと考え、賃借人の一部からの請求も認められるものと解される。
※澤野順彦稿/田山輝明ほか編『新基本法コンメンタール 借地借家法 第2版』日本評論社2019年p70
イ 山下氏見解 共同賃借人からの減額請求は、・・・、私見によれば、賃借人の1人からでも請求をなし得る余地を認めてよいのではないかと考える。
※山下寛ほか稿『賃料増減請求訴訟をめぐる諸問題(上)』/『判例タイムズ1289号』2009年4月p38

い 裁判例

賃料増減請求は共有物の管理に属する事柄であると解されるから、持分の過半数をもって決すべきであり(民法二五二条本文)、・・・
※東京地判平成7年1月23日

3 区分所有建物敷地(借地権)の賃料減額請求→管理+集会決議

共同賃借人による賃料減額請求とはいっても、区分所有建物の敷地の賃貸借(敷地利用権が賃借権であるケース)では少し特殊な扱いとなります。平成25年東京地判を紹介します。
もともとデベロッパーが地主との間で賃貸借契約を締結し、エンドユーザーが専有部分とともに借地権の準共有持分を購入した、という、一般的な分譲マンションのケースが前提です。
裁判所はまず、団体的規律に服するという判断を示します。具体的には、民法の意思決定要件(251条や252条)を適用しないで、区分所有法で修正された意思決定要件(集会決議)を適用する、ということです。
次に、「変更・管理・保存」の分類の判断になりますが、裁判所は管理に分類されると判断しました。カッコ書きで、変更にあたったとしても同じ結論、というコメントがなされていますが、これは仮定の話しなので裁判所としての判断できない(ある意味蛇足である)と思われます。

区分所有建物敷地(借地権)の賃料減額請求→管理+集会決議

あ 問題提起

本件賃貸借契約において、借地権の準共有者が個別に賃料減額請求権を行使することができるのか、準共有者の全員によってのみ行使されるべきかが争われているので、まずこの点を検討する。

い 団体的規律の適用→あり

ア 前提事実(1)、(2)のとおり、本件賃貸借契約は、ISZFとISZ2社との間で成立した単一の定期借地権設定契約に由来するものであり、その借地権の準共有持分が本件マンションの16戸の区分所有者らに譲渡されたにすぎず、この区分所有者(賃借人)らごとに個別に賃貸借契約が成立しているわけではない
そうすると、本件賃貸借契約は、その全体が単一不可分な契約というべきである上、各賃借人の負担すべき賃料額は「土地全体の月額賃料×各賃借人の準共有持分割合」の方式により算出するものとされていること(本件確認合意第4条2項)にも照らすと、個々の賃借人らごとに相対的な効力しか有しない賃料の減額請求権が行使され、個別に賃料が改定されるという事態は想定されていないと解するのが相当である。
そうすると、本件賃貸借契約の賃料の減額請求は、賃借人(区分所有者)ら全員のためにのみ行使されるものということになり、そのような性質上、当該減額請求権の行使に係る意思決定は、区分所有法及び管理組合規約の定めに従った団体的な規律に服するというべきである。・・・

う 分類→管理(または変更)

ウ 以上を踏まえて、まず区分所有法の規律を見るに、区分所有者の準共有に係る敷地の借地権の保存、管理、変更については、区分所有法21条の規定により同法17条、18条が準用されるところ、賃料減額請求権の行使が保存行為(同法18条1項ただし書)に当たると解することはできず、管理行為として(仮に、変更行為であっても本件の結論に影響しない。)、管理組合の集会の決議が必要であるが、全区分所有者の全員の一致まで要求されるものではない。
※東京地判平成25年10月29日

4 賃料増額請求の相手方

賃貸人から賃料の増額を請求する場合は、複数の賃借人の全員に対して意思表示(通知)をする必要があります。これとは別に、賃料請求の方は賃借人のうち1人だけに請求できます。似ているけど法的扱いは異なりますので注意を要します。

賃料増額請求の相手方

あ 増額請求の相手方

ア 相手方 賃貸人が賃借人に対し借地法一二条に基づく賃料増額の請求をする場合において、賃借人が複数の共同賃借人であるときは、賃借人の全員に対して増額の意思表示をすることが必要であり、
イ 一部を欠く場合の効果 その意思表示が賃借人の一部に対してされたにすぎないときは、これを受けた者との関係においてもその効力を生ずる余地がない、と解するのが相当である(最高裁昭和五〇年(オ)第四〇四号同年一〇月二日第一小法廷判決裁判集民事一一六号一五五頁参照)。
※最判昭和54年1月19日(借地について)
※最判昭和50年10月2日(借地について・同旨)

い 賃料債務の不可分性(参考)

賃貸人は、共同賃借人のうち1人に全額の賃料を請求できる
詳しくはこちら|複数の賃借人(共同賃借人)の金銭債権・債務の可分性(賃料債務・損害金債務)

5 賃料増減額請求に関する共同訴訟形態(概要)

賃借人が複数いるケースにおける、賃料の増減額請求に関する訴訟は、共同賃借人の全員が当事者になることが必須ではない、という見解が一般的です。

賃料増減額請求に関する共同訴訟形態(概要)

増減額請求権の行使を前提とする訴訟について
→類似必要的共同訴訟となる見解が一般的である
詳しくはこちら|賃料増減額請求に関する訴訟の共同訴訟形態(賃貸人または賃借人が複数ケース)

6 賃貸人が複数であるケースにおける賃料増減額請求(参考)

賃貸借契約の賃貸人が複数いるケースもあります。具体的には、共有不動産を対象とする賃貸借です。このような賃貸借でも、賃料増減額請求についての問題があります。本記事で説明したのと逆のパターンです。これについては、別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|共有物の賃貸借の賃料増減額に関する管理行為・変更行為の分類

本記事では、賃借人が複数である(賃借権の準共有)における賃料の増減額に関する変更行為、管理行為の分類と当事者について説明しました。
実際には、具体的・個別的な事情によって違う法的な分類となることもあります。
実際に、賃借人が複数である賃貸借に関わる問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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