1 定期借家における解約権留保特約(普通借家との比較)
2 解約権留保特約の有効性と正当事由の要否
3 解約権留保特約の解約申入期間
4 解約留保権特約についての普通借家・定期借家の比較

1 定期借家における解約権留保特約(普通借家との比較)

定期借家では,一定の事情がある場合に,賃借人からの解約を認める中途解約権というものがあります。
詳しくはこちら|定期借家における賃借人からの中途解約権
これとは別に,中途解約を認める特約(解約権留保特約)を定めておいて,これによって解約するというものもあります。
本記事では,定期借家における解約権留保特約について,普通借家と比較しつつ説明します。

2 解約権留保特約の有効性と正当事由の要否

期間の定めのある建物賃貸借については,普通借家でも定期借家でも,特約による解約(解約権留保特約)が認められています。
これに関して,普通借家の場合は正当事由が必要です。しかし,定期借家の場合は正当事由は不要です。

<解約権留保特約の有効性と正当事由の要否>

あ 解約権留保特約の有効性

(一般的に=普通借家において)
賃貸人による解約申入を認める解約権留保特約は有効である
正当事由が必要となる
詳しくはこちら|建物賃貸借の中途解約と解約予告期間(解約権留保特約)

い 正当事由の必要性

定期借家には借地借家法26条,28条の規定が適用されないことが明確化されている
※借地借家法38条1項
→賃貸人からの解約申入に正当事由が要求されることはない
※田山輝明ほか編『新基本法コンメンタール 借地借家法』日本評論社2014年p233

3 解約権留保特約の解約申入期間

解約権留保特約に関しては,解約申入期間についてのルールがあります。これについても普通借家と定期借家では内容が異なります。
普通借家で賃貸人からの(解約留保権特約の)解約申入期間は最低でも6か月となります。
普通借家の場合は,賃貸人からの解約申入期間の制限はありません。決めていない場合には3か月となります。
賃借人からの解約申入期間は,普通借家と定期借家で共通して,制限はありません。決めていない場合には3か月となります。

<解約権留保特約の解約申入期間>

あ 普通借家における解約申入期間(参考)

期間の定めのない普通借家において
賃貸人による解約申入から6か月後に契約は終了する
※借地借家法27条1項
賃借人による解約申入については『い』と同様である
詳しくはこちら|建物賃貸借の中途解約と解約予告期間(解約権留保特約)

い 定期借家における解約申入期間

『あ』の規定(借地借家法27条)は期間の定めがない契約に適用される
→定期借家には適用がない
賃貸人・賃借人のいずれによる解約についても
解約申入期間の合意があればそれが適用される
解約申入期間についての合意がない場合
→解約申入期間は3か月となる
※民法617条
※田山輝明ほか編『新基本法コンメンタール 借地借家法』日本評論社2014年p233

4 解約留保権特約についての普通借家・定期借家の比較

以上のように,解約権留保特約に関しては,普通借家と定期借家での扱いが複雑です。
そこで,違いが分かるようにまとめておきます。

<解約留保権特約についての普通借家・定期借家の比較>

分類 賃貸人による解約 賃借人による解約
普通借家 正当事由必要・最低6か月 正当事由不要・期間制限なし(合意がなければ3か月)
定期借家 正当事由不要・期間制限なし(合意がなければ3か月) 正当事由不要・期間制限なし(合意がなければ3か月)

本記事では,定期借家における解約権留保特約について,普通借家と比較しつつ説明しました。
実際には,細かい事情や主張・立証のやり方次第で結論が違ってくることがあります。
実際に定期借家の解約に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。