定期借家では賃借人からの『中途解約』を排除できないのでしょうか。

1 定期借家では『やむを得ない事情』の場合に例外的に中途解約ができる
2 中途解約が認められるのは転勤,療養,親族介護が主な場合である
3 定期借家契約の中途解約の条項の例
4 『中途解約リスク』はファンド運用においては大きな問題となる

1 定期借家では『やむを得ない事情』の場合に例外的に中途解約ができる

『契約』の一般論として特約がない限りは中途解約はできないと言えます。
例えば,2年間の賃貸借契約を締結した場合,期間中は約束が続くのです。
当然と言えば当然ですが,例外を理解する前提として重要です。

<一般的賃貸借における中途解約>

・中途解約は賃借人・オーナーともにできない
 (2年間の賃貸借の例)
 →借主は2年間賃料を払い続ける
 →オーナーは2年間目的物を使わせ続ける
・ただし,特約があれば,特約の内容が優先

次に定期借家の場合を考えます。
原則は一般的賃貸借と同様です。
しかし,例外が設定されています。

<定期借家における中途解約>

あ 原則

(一般的賃貸借と同様)
・中途解約は賃借人・オーナーともにできない
・ただし,(賃借人に有利な)特約があれば,特約の内容が優先

い 例外

居住用+床面積200平方メートル未満+やむを得ない事情
↓これに該当した場合
・賃借人は1か月の予告期間で中途解約ができる
・これよりも,賃借人に有利な特約があれば,特約の内容が優先
※借地借家法38条5~6項

2 中途解約が認められるのは転勤,療養,親族介護が主な場合である

一定の条件における定期借家では賃借人からの中途解約が保障されています。
中途解約が認められるための『やむを得ない事情』については,内容が条文上例示列挙されています(借地借家法38条5項)。
ここには『転勤,療養,親族の介護その他(のやむを得ない事情)』と規定されています。
そこで,例示列挙されたこれらの事情そのものと,これらと同レベルの異常事態があればやむを得ない事情として認められることになりましょう。

3 定期借家契約の中途解約の条項の例

法律の設定をそのまま,具体的建物賃貸借契約(借家)に適用する,ということもありますが,特約を設定することが一般的に行われています。

<一般的な普通借家契約の特約>

・賃借人は,2か月(例)の予告期間を伴った中途解約(解約告知)ができる
(※オーナー(賃貸人)からの中途解約特約は設定しても無効となります(原則))

<定期借家における中途解約特約の例(原則)(いずれか)>

・特約は設定しない
・『賃借人が中途解約する場合,違約金として残存期間に相当する賃料を支払う』

定期借家の中途解約の条項については,次のような例文があります。

<定期借家における中途解約特約の例(例外)(いずれか)>

例外の要件=居住用+床面積200平方メートル未満
・『賃借人は,転勤,療養,親族の介護その他のやむを得ない事情により,
 賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となった場合,
 1か月の予告期間を伴った中途解約(解約告知)ができる』
・『賃借人は,1か月の予告期間を伴った中途解約(解約予告)ができる』
 (↑賃借人に有利に条件を排除した例)

オーナー(賃貸人)からの中途解約特約は設定しても原則的に無効となります。

4 『中途解約リスク』はファンド運用においては大きな問題となる

中途解約のリスクを考えていくと,ごく一般論としては,また別の借り手を探せば良いということが言えます。
一定の空室リスクはありますが,余程急激に社会情勢が変わらない限りは,再度入居者が見つかることになりましょう。
しかし,現実的には,ローンを利用して収益物件を購入している場合など,一時的な収入減少でも,想定外の出費となることもあります。
さらに,ファンドの資金運用の一環としての建物賃貸の場合は,もっとシビアです。
ファンドの運用者(マネージャ)としては,人様(投資家)から預かった大切な資金です。
収益を獲得して当然,より大きい収益を目的として資金を預かっています。
潜在的・不確定なリスクでも,これを負う,という判断をすることには大きな責任を伴います。
そこで,ファンドの運用においては,定期借家のメリットは非常に魅力的ですが,反対の面,つまりデメリットとして中途解約リスクは玉にキズ状態です。
国土交通省の調査定期借家制度実態調査(不動産業者)2007年においても,(長期の)定期借家契約が普及しない理由として指摘されています。
中途解約の制度が改正されれば,ファンドの運用・不動産流通市場も良い効果が生じる,という予測もあります。

条文

[借地借家法]
(定期建物賃貸借)
第三十八条  期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。
2~4(略)
5  第一項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が二百平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から一月を経過することによって終了する。
6  前二項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
7(略)

判例・参考情報

[借地借家法]
(定期建物賃貸借)
第三十八条  期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。
2~4(略)
5  第一項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が二百平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から一月を経過することによって終了する。
6  前二項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
7(略)