【利害関係者・敵対当事者が受領した送達の有効性(再審・追認など)】

1 利害関係者・敵対当事者が受領した送達の有効性
2 事実上の利害関係者が受領した送達の有効性
3 敵対当事者が受領した送達の有効性

1 利害関係者・敵対当事者が受領した送達の有効性

民事訴訟や保全手続では,送達の手続が取られます。当然ですが,当事者やその他の受領する権限を持つ者が受領して送達が完了します。
詳しくはこちら|送達の種類(通常送達・就業先送達・補充送達・付郵便送達・公示送達)
この点,送達を本来受領するべき者以外の者が受領したということが生じることもあります。本記事ではこのようなケースにおける送達の有効性について説明します。

2 事実上の利害関係者が受領した送達の有効性

送達を本来受領すべき者(当事者)と同じ場所に,利害関係を持つ者が居住していることもあります。この利害関係者が送達を受領してしまった場合でも,原則的に送達は(補充送達として)有効です。
しかし,仮に当事者が訴訟を起こされたこと自体を知らないまま判決が出されて確定したようなケースでは,判決の効力を当事者に及ぼすのは不合理です。そこで,判決の確定は認めつつ,再審事由として扱うことになります。結果的に判決の効力を否定することにつながります。

<事実上の利害関係者が受領した送達の有効性>

あ 原則

送達場所において,事実上利害関係を有する者が送達を受領した場合
補充送達として有効である
※民事訴訟法106条1項
詳しくはこちら|送達の種類(通常送達・就業先送達・補充送達・付郵便送達・公示送達)

い 例外=当事者が交付を受けなかった場合

受領者(同居人)から当事者に交付されなかった
→当事者がまったく知らないまま判決が確定するに至った
→この場合は再審事由となる
※最高裁平成19年3月20日

3 敵対当事者が受領した送達の有効性

実際に,送達を本来受領するべき当事者と同じ場所に敵対する当事者が居住しているケースもあります。
具体例は,家庭内別居の状況にある夫婦の一方が離婚訴訟を提起したようなケースです。原告が訴訟を提起して,裁判所が被告の住所(原告の住所と同じ)に訴状を送達します。これを原告が受領してしまったという状況です。
受領した者は同居人ではありますが,対立する当事者(敵対する者)です。この関係性から,双方代理として送達は無効となります。
ただし,その後,本来受領すべき者(被告)自身が送達(された書類)を受領したような場合には,結果的に有効となる扱いもあります。

<敵対当事者が受領した送達の有効性>

あ 原則

敵対する当事者が送達を受領した場合
双方代理として無効となる
敵対する当事者と同視し得る者が受領した場合も含む
※民法108条

い 例外=追認

当事者本人が異議なく受領した場合
→責問権放棄or追認として有効となる
※札幌高裁昭和31年12月14日
※『基本法コンメンタール民事訴訟法1』p267

本記事では,利害関係者や敵対当事者が受領してしまった送達の有効性について説明しました。
実際には,個別的な状況や主張・立証のやり方次第で結論が違ってくることもあります。
実際に不備のある送達に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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