1 定期借家における賃料改定特約(賃料増減額請求権を排除する特約)
2 賃料改定特約の排除の適用除外
3 有効となる賃料改定特約の具体例
4 無効となる賃料改定特約の具体例
5 賃料不改定特約+改定を認める特約の有効性
6 賃料不改定特約+協議による改定を認める特約の有効性

1 定期借家における賃料改定特約(賃料増減額請求権を排除する特約)

定期借家普通借家とで異なる扱いとなるものの1つに,賃料改定特約の有効性があります。
本記事では,定期借家における賃料改定特約について説明します。

2 賃料改定特約の排除の適用除外

まず,普通借家では,賃料増減額請求は強く保護されています。増額を否定する特約以外の(賃料の増減額に関する)規定は無効となります。
しかし,定期借家にはこのルールは適用されません。つまり,賃料増減額を否定する特約も有効となるのです。

<賃料改定特約の排除の適用除外>

あ 普通借家(参考)

賃料増減額請求権の強行法規性(前提)
不増額特約以外の賃料に関する特約によって
賃料増減額請求権を排除することはできない
※借地借家法32条1項
詳しくはこちら|賃料に関する特約の一般的な有効性判断基準(限定的有効説)

い 定期借家

定期借家について
契約自由を原則とする
→明文により賃料改定特約を有効とした
=賃料改定特約は無効とされない
※借地借家法38条7項

3 有効となる賃料改定特約の具体例

定期借家では賃料の増減額に関する特約が有効となります(前記)。有効となる特約にはいろいろなバリエーションがあります。単純に賃料の金額を動かさないというものもあれば,一定の割合や特定の指標によって賃料の金額を動かす(増減させる)というものもよくあります。

<有効となる賃料改定特約の具体例>

あ 単純不改定

期間中は賃料の改定を行わない

い 固定増減率

一定の期間経過ごとに一定の割合で賃料を増額する

う 変動増減率

一定の期間経過ごとに特定の指数の変動に応じて賃料を改定する
例=消費者物価指数
※田山輝明ほか編『新基本法コンメンタール 借地借家法』日本評論社2014年p233

4 無効となる賃料改定特約の具体例

賃料に関する特約の定め方によっては,当事者が想定しない解釈がなされてしまうこともあります。
具体的には,当事者の協議で賃料を定める,という内容の特約です。結果的に賃料増減額は可能(排除していない)という扱いになってしまいます。

<無効となる賃料改定特約の具体例>

あ 特約の内容

『賃料を当事者間の協議で定める』という特約

い 解釈

単に賃料の決め方を決めたにすぎない
→賃料が客観的に決まらない
賃料増減額請求権の規定の適用を排除することにならない
→特約としては無効である
※田山輝明ほか編『新基本法コンメンタール 借地借家法』日本評論社2014年p233,234

5 賃料不改定特約+改定を認める特約の有効性

以下,複数の条項(特約)の組み合わせの解釈が問題となった具体的事案(裁判例)を紹介します。
まず,賃料を改定しないという条項と,これとは別に,一定期日以降は協議して賃料を改定できるという条項を設定した事案です。
裁判所は,この期日以降には賃料増減額請求を認めるものであると解釈しました。

<賃料不改定特約+改定を認める特約の有効性>

あ 特約の内容

定期借家の契約において『ア・イ』の2つの特約が記載されていた
ア 賃料不改定特約
イ 改定を認める特約
『◯年◯月◯日以降は,協議の上賃料を改定することができる』

い 特約の有効性

◯年◯月◯日以降は賃料増減額請求が可能である
=賃料不改定特約の効力が否定(制限)された
※東京地裁平成21年6月1日

6 賃料不改定特約+協議による改定を認める特約の有効性

賃料を改定しないという条項と,これとは別に,協議が成立した『場合』に賃料を改定するという条項を設定した事案です。
あくまでも協議が成立した『場合』だけに賃料が変動するのであり,協議が成立しない限りは変動しないと読めます。
そこで裁判所は,賃料を改定しないという特約を有効と認めました。
前記の2つの事案(裁判例)と比べると,条項(特約)の中に『(協議が成立した)場合』という言葉が入っているところが結論の違いにつながったと思えます。

<賃料不改定特約+協議による改定を認める特約の有効性>

あ 定期借家の契約において『ア・イ』の2つの特約が記載されていた

ア 賃料不改定特約
イ 協議による賃料改定を認める特約
『協議が成立した場合には賃料を改定することができる』

い 特約の有効性

賃料不改定特約は有効である
※東京地裁平成23年3月29日

本記事では,定期借家における賃料改定特約について説明しました。
実際には,細かい事情や主張・立証のやり方次第で結論は違ってきます。
実際に定期借家の賃料の金額に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。