1 不動産の競売の差押の全体像
2 差押の効力は通常差押登記の時点で発生する
3 差押の効力の内容(種類全体)
4 差押の効力の客観的範囲
5 差押により消滅時効が中断される
6 差押による根抵当権の元本確定

1 不動産の競売の差押の全体像

強制執行や担保権の実行として不動産の競売が行われるケースはよくあります。
競売の手続では,最初に差押が行われます。
本記事では,差押の効果の全体像を説明します。

2 差押の効力は通常差押登記の時点で発生する

最初に,差押の効力が発生する時期を説明します。
実務では,最初に差押の登記を行い,この時点で差押の効力が発生します。

<差押の効力発生時期>

あ 条文規定

差押の効力は『ア・イ』の早い方の時点で生じる
ア 強制競売の開始決定が債務者に送達された時
イ 差押の登記がなされた時
※民事執行法46条1項

い 実務の手順

差押登記の完了(差押の効力発生)を確認した後に
裁判所が開始決定を債務者に送達している
※浦野雄幸編『基本法コンメンタール 民事執行法 第6版』日本評論社2009年p151,152

3 差押の効力の内容(種類全体)

差押の効力の内容のうち主なものは債務者による処分を制限する効力です。
債務者による使用はほとんど制限されません。
それ以外に時効中断や根抵当権の元本確定などの効果もあります。

<差押の効力の内容(種類全体)>

あ 処分制限効

交換価値を維持するために
債務者による処分を制限する

い 使用制限効

交換価値が維持される用法である限り
債務者による使用は制限されない
詳しくはこちら|不動産競売における差押の処分制限効と使用制限効

う その他の効力

時効中断・根抵当権の元本確定など(後記※1,※2)

4 差押の効力の客観的範囲

差押の処分制限の効力が及ぶ範囲が問題となることがあります。
具体的には,借地上の建物を対象とする差押では,借地権も対象に含まれるのです。

<差押の効力の客観的範囲>

あ 建物と借地権

建物の差押の効力について
借地権に及ぶという見解が一般的である
→買受人は建物の所有権と敷地利用権を取得する
敷地利用権の内容=地上権or賃借権(借地権)
※東京地裁昭和33年7月19日
※浦野雄幸編『基本法コンメンタール 民事執行法 第6版』日本評論社2009年p153,154

い 借地権譲渡の承諾or許可

買受人は借地権譲渡の承諾or許可を要する
詳しくはこちら|借地上の建物の競売・公売における買受人譲渡許可の裁判の趣旨と特徴

5 差押により消滅時効が中断される

差押は時効中断の効力もあります。

<差押による時効中断の効力(※1)>

差押の効力が生じた場合
→競売申立の時点にさかのぼって時効中断の効力が生じる
※民法147条2項
※浦野雄幸編『基本法コンメンタール 民事執行法 第6版』日本評論社2009年p154

6 差押による根抵当権の元本確定

差押の効力の1つとして,根抵当権の元本確定もあります。
根抵当権者自身の申立か,別の者の申立かによって元本が確定する時期が異なります。

<差押による根抵当権の元本確定(※2)>

あ 共通する前提事情

担保権実行による競売のケース
=差押の規定が準用される
※民事執行法188条

い 根抵当権者による申立

根抵当権者が競売の申立をした場合
→申立の時点で担保すべき元本が確定する
※民法398条の20第1項1号

う 根抵当権者以外による申立

根抵当権者以外の第三者が競売を申し立てた場合
→根抵当権者が競売手続の開始を知った時から2週間後に元本が確定する
※民法398条の20第1項3号