1 借地借家法の建物再築による期間延長(総論)
2 再築の承諾による期間延長の条文規定
3 再築による期間延長と更新前後の区別
4 『承諾』のバリエーション
5 裁判所の再築許可と期間延長(概要)

1 借地借家法の建物再築による期間延長(総論)

借地借家法では,借地上の建物の再築について地主の承諾がないと解約されることもあります。
具体的には新法時代の借地の更新後(第2ラウンド)だけが解約のルールの対象です。
詳しくはこちら|借地借家法における借地上の建物の滅失や再築による解約
借地借家法には,建物の再築に関して,この解約のルールとは別のルールもあります。
建物再築について地主の承諾があると期間が延長されるという制度です。
本記事では,借地借家法における建物の再築に関する期間延長の制度について説明します。

2 再築の承諾による期間延長の条文規定

借地借家法では,建物の再築について地主の承諾がある場合は期間が延長されます。
この規定の内容は多少複雑なので整理します。

<再築の承諾による期間延長の条文規定(※1)>

あ 規定の内容

建物の築造について地主の『承諾』(後記※2)がある場合に限り
存続期間が延長される

い 延長される期間の起算点

『ア・イ』の早い方
ア 地主が承諾した日
イ 建物が築造された日

う 延長される期間の長さ(法定期間)

20年間

え 残存期間の適用

従前の残存期間が20年より長い場合
→従前の残存期間のままとなる
=期間の延長は生じない

お 延長される期間の長さ(合意)

地主・借地人は法定期間(う)より長い存続期間を合意できる
※借地借家法7条1項

3 再築による期間延長と更新前後の区別

再築による期間延長は,更新前と後の両方に適用されます。
この点,再築による解約更新後だけに適用されます。
間違えやすいのでまとめておきます。

<再築による期間延長と更新前後の区別>

あ 再築による期間延長と更新前後の区別

再築による期間延長の制度(前記※1)について
更新前と後の区別はない
=いずれについても適用される

い 再築による解約と更新前後の区別(比較)

再築による解約の制度について
更新後だけが適用対象である
詳しくはこちら|借地借家法における借地上の建物の滅失や再築による解約

4 『承諾』のバリエーション

借地借家法では,建物再築について地主の承諾があると期間が延長します(前記)。
この『承諾』には解釈上,バリエーションがあります。
結局,旧借地法の同様の規定にある『異議を述べない』と近いような扱いといえます。

<『承諾』のバリエーション(※2)>

あ 承諾擬制

初回更新前において
借地人が地主に再築する旨を通知した
地主が通知を受けてから2か月以内に異議を述べない場合
→地主の承諾があったものとみなす
更新後(第2ラウンド)については適用されない
※借地借家法7条2項

い 黙示の承諾

地主が再築を知りながら異議を述べない場合
→黙示の承諾と認められることもある
=期間延長の効果が生じる
借地法の規定(う)と実質的な違いは小さい
※寺田逸郎『新借地借家法の解説(2)』/『NBL489号』p44
※水本浩ほか『基本法コンメンタール 借地借家法 第2版補訂版』2009年p28

う 借地法の要件(参考)

建物の築造に『地主が異議を述べない』ことが期間延長の要件である
※借地法7条
詳しくはこちら|旧借地法における異議のない建物再築による期間延長(基本)

5 裁判所の再築許可と期間延長(概要)

第2ラウンドで建物の再築に地主が承諾してくれない場合,再築を強行すると,地主は解約できることになります(前記)。
借地人としては現実的には承諾がない限り再築できません。
この救済措置として,地主の承諾の代わりに裁判所が許可する手続があります。
本来,この裁判は解約を回避する目的のものです。
しかし,再築による期間延長も適用されます。
とはいっても,裁判所が個別的に延長する期間を定めることもできます。

<裁判所の再築許可と期間延長(概要)>

あ 裁判所の許可の制度(概要)

更新後(第2ラウンド)において
建物の再築について
『やむを得ない事情』がある場合
→裁判所が地主の承諾に代わる許可を与えることができる
※借地借家法18条
再築による解約に対応した制度である

い 裁判所の許可の効果

ア 基本的効果
地主による解約を回避する
イ 期間延長(法定期間)
地主による『承諾』とみなす
→再築による期間延長(前記※1)が適用される
ウ 付随的裁判による期間延長
裁判所が個別的に延長する期間を決定することができる
詳しくはこちら|借地上の建物の再築許可の裁判の効果(解約回避・期間延長)