1 借地権譲渡許可の申立人
2 借地権者と建物所有者が異なる×譲渡許可申立
3 借地権譲渡許可|申立時期|基本
4 借地権譲渡許可|申立時期|譲渡前×不合理性
5 遺贈×借地権譲渡許可|申立時期

1 借地権譲渡許可の申立人

借地権の譲渡許可申立の非訟手続があります。
本記事では申立人・申立時期について説明します。
まず,申立ができる者は借地権を譲渡する予定の者,つまり元の借地人です。

<借地権譲渡許可の申立人>

あ 基本

元の借地人が(譲渡前に)申し立てる
=譲渡人となる者である
※借地借家法19条1項

い 譲受人×申立

建物・借地権の譲受人
→申立をすることができない
※澤野順彦『実務解説借地借家法』青林書院p247

2 借地権者と建物所有者が異なる×譲渡許可申立

特殊な事情があると譲渡許可申立ができないこともあります。
借地権者・建物所有者が異なるケースについての判断を紹介します。

<借地権者と建物所有者が異なる×譲渡許可申立>

あ 事案

・借地権者A
・転借地権者=建物所有者B
2者が共同で第三者Cに借地権・転借地権を譲渡する

い 当事者の関係性

AとBが密接な関係を有していた
A・Bは転貸借関係の維持を望んでいない
→譲渡の結果,転貸借の関係が解消することになる

う 裁判所の判断

地主に不利益を与えない
→両者が共同で申し立てることを認める
※大阪高裁平成2年3月23日

え 反対説

判決の結論は疑問である
※澤野順彦『実務解説借地借家法』青林書院p249

3 借地権譲渡許可|申立時期|基本

借地権譲渡許可の申立のタイミングについてまとめます。
まずは条文の規定と解釈論のうち基本的なものを整理します。

<借地権譲渡許可|申立時期|基本>

あ 条文・規定
規定・文言 条文
『譲渡しようとする場合』 借地借家法19条1項
(参考)『譲渡セントスル場合』 借地法9条ノ2第1項
い 譲渡後の申立の却下

借地権の譲渡『後』に譲渡許可の申立をした場合
→不適法である
→却下となる
※東京地裁昭和43年3月4日
※東京高裁昭和45年9月17日
※香川保一『法曹時報』18巻11号p71

う 譲渡後と判断される典型例

建物について所有権移転登記がされた場合
→原則的に建物・借地権の譲渡があったと認める
※澤野順彦『実務解説借地借家法』青林書院p248
詳しくはこちら|借地上の建物の譲渡は借地権譲渡に該当する

え 例外

譲渡後でも一定の範囲で認めることがある

4 借地権譲渡許可|申立時期|譲渡前×不合理性

申立時期は『譲渡前』という解釈が一般的・実務的です(前記)。
この点,譲渡後の申立を認める見解もあります。
ただし,このような見解は裁判所では通常採用していません。

<借地権譲渡許可|申立時期|譲渡前×不合理性>

あ 譲渡前の申立

譲受人が誰かが特定できていない
→この状態で申立をすることになる

い 緩和的な見解

『譲渡前』という規定は『原則』の申立時期という意味である
譲渡後の申立も形式的には適法である
『一切の事情』の1つとして考慮することになる
※借地借家法19条2項
※星野英一『借地・借家法/法律学全集』有斐閣p308
※加藤正男ほか『基本法コンメンタール借地借家法』p218
※鈴木禄弥ほか『新版注釈民法(15)』有斐閣p529
※稻本洋之助ほか『コンメンタール借地借家法 第3版』日本評論社p141

5 遺贈×借地権譲渡許可|申立時期

遺贈については,受遺者(権利を取得する者)が相続人以外である場合は借地権譲渡として扱われます。
この場合,譲渡前,つまり故人の生前に申立をすることは非現実的です。
そこで,例外的に事後的な借地権譲渡許可の申立が認められます。

<遺贈×借地権譲渡許可|申立時期>

あ 遺贈と借地権譲渡(前提)

相続人以外の者へ『遺贈』により借地権が移転した
→原則として借地権譲渡に該当する

い 借地権譲渡許可の裁判の申立の可否

まだ『引渡し+所有権移転登記』がなされていない
→借地権譲渡許可の裁判の申立が認められる
※東京高裁昭和55年2月13日