1 不動産売買・建築請負トラブル解決の全体像
2 売買・請負における欠陥・不備の法的責任の種類
3 法的責任を負う者
4 瑕疵担保責任(概要)
5 責任の期間制限(概要)
6 契約責任と不法行為責任の比較
7 不法行為責任が有利な理由

1 不動産売買・建築請負トラブル解決の全体像

不動産の売買や建築の請負工事では,あとから欠陥が発覚することがあります。
そうすると,いろいろな種類の法的な責任が生じることがあります。
法的なトラブル解決の基礎となるものです。
本記事では,不動産売買や建築請負におけるいろいろな欠陥や不備についての法的責任の種類を説明します。
まずはトラブルの代表的な内容と解決の大きな方向性をまとめます。

<不動産売買・建築請負トラブル解決の全体像>

あ 売買のトラブルの具体例

中古で戸建住宅を購入した
その後,床が傾いていることが分かった
購入する以前から基礎が弱かったと思う

い 建築請負のトラブルの具体例

住居の新築工事を依頼した
引渡を受けてから家が傾いていることが分かった
基礎部分に手抜き工事があったと思われる
詳しくはこちら|不動産売買・建築請負における欠陥の典型例

う 解決の大きな方向性

売主・請負人・仲介業者の責任が発生している可能性がある
→解除や損害賠償請求をする

2 売買・請負における欠陥・不備の法的責任の種類

不動産売買や建物の建築請負工事における欠陥や不備に関する法的責任の種類をまとめます。

<売買・請負における欠陥・不備の法的責任の種類>

種類 損害賠償 契約解消(解除) 分類 根拠
瑕疵担保責任 瑕疵担保責任 民法570条
調査義務違反 債務不履行or不法行為責任 民法415条,709条
説明(告知)義務違反 債務不履行or不法行為責任 民法415条,709条
錯誤無効,詐欺取消 意思表示の瑕疵 民法95,96条
刑事上の詐欺罪 刑事罰(犯罪) 刑法246条

3 法的責任を負う者

前記のまとめの表についての補足説明をまとめます。

<法的責任を負う者>

あ 売買
責任の種類 売主 売り側仲介業者
瑕疵担保責任
調査・説明義務違反 ◯(※1)

※1 買主と委託関係がなくても責任が生じる

い 建物建築請負

瑕疵担保責任を負う者
→建築の請負人(建築業者)

4 瑕疵担保責任(概要)

欠陥についての責任としては,瑕疵担保責任がストレートな発想です。
瑕疵担保責任が発生する要件や効果についての詳しい内容は別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|売買・請負の瑕疵担保責任の基本

5 責任の期間制限(概要)

売買や請負に関する各種の法的責任には期間制限があります。
実際に責任追及をする場合にはしっかりと把握している必要があります。
これについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|売買における欠陥に関する責任の期間制限と実務的な選択

6 契約責任と不法行為責任の比較

売買や請負に関する法的責任にはいろいろなものがあります(前記)。
分類の仕方として,契約責任と不法行為責任に分けるものもあります。
この2つに分類して,比較をしてみます。
実務で最適な解決策を選択する時に検討する内容といえます。

<契約責任と不法行為責任の比較>

あ 契約責任と不法行為責任の分類
責任の種類 内容の例
契約責任 債務不履行による損害賠償請求・解除権
不法行為責任 不法行為による損害賠償請求権
い 注意義務の程度

一般的・抽象的には,契約責任の注意義務の方が高度である
※川村俊雄『不動産仲介契約・現代契約法大系3』p292

う 実務での選択の傾向

実務では不法行為責任の追及(選択)が多い(後記※2)
※河村貢/塩崎勤『裁判実務大系(11)不動産訴訟法』青林書院1987年p428

7 不法行為責任が有利な理由

実務では,契約責任よりも不法行為責任を選択する傾向があります(前記)。
その理由,つまり不法行為責任の方が有利な事情をまとめます。

<不法行為責任が有利な理由(※2)>

あ 契約の立証困難性

契約の存在自体が不明確で立証困難な場合が多い

い 注意義務の有無・程度

業者の契約上の義務が具体的に規定されていない場合が多い
契約責任と不法行為の比較について
→業者の注意義務の有無・程度に差異はあまりない

う 複数業者の連帯責任

複数の業者が介在しているケースにおいて
不法行為責任であれば
共同不法行為として業者の連帯責任を追及できる
※川村俊雄『不動産仲介契約・現代契約法大系3』p291
※西垣道夫『宅地建物取引業者の取引と不法行為(上)』/『NBL208号』p33