すぐ隣に高層マンションの建設が始まっています。
日当たりが悪くなるとか,工事の騒音について,要望を申し入れています。
話し合いはしましたが,結局,施主・建築会社は当初の予定どおりに工事を始めています。
そこで,建築紛争調整の手続きをしようと思います。
どのような手続きなのでしょうか。

1 建築に関する紛争の解決手段として都道府県が行う建築紛争調整手続がある
2 都道府県の建築紛争調整手続は,建築の専門家が関与して話し合いをする
3 都道府県の『調停』と裁判所の『調停』は,不出頭ペナルティ,成立時の執行力などが異なる
4 建築紛争解決手段の選択方法のまとめ

1 建築に関する紛争の解決手段として都道府県が行う建築紛争調整手続がある

<事例設定>

すぐ隣に高層マンションの建設が始まっている
日当たりが悪くなるとか,工事の騒音について,要望を申し入れている
話し合いはしたけど,結局,施主・建築会社は当初の予定どおりに工事を始めている
裁判所以外で,話し合いをサポートしてくれる手続はないのか

建築に関する紛争を解決する手段として,都道府県が独自に制度を設けています。
東京都の場合,昭和53年7月に、東京都中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例を制定しました。
これに基づいて,『あっせん』や『調停』という手続が利用できるようになりました。
これらは裁判所ではなく,都道府県が実施する手続です。

2 都道府県の建築紛争調整手続は,建築の専門家が関与して話し合いをする

東京都の建築紛争調整の手続内容を説明します。

(1)『あっせん』

当事者が呼び出され,都の職員が双方から言い分を聴取します。
当然,図面などの資料が多く用いられることになります。
都の職員からは解決に向けた意見が述べられることになります。
ただし,最終的に,当事者双方が合意に至らないと成立しません。
成立すれば和解書などの調印が行われます。
成立しない場合は,打切りとしてあっせん手続が終了します。

(2)『調停』

あっせん手続が打切りで終了した場合,当事者双方が了承すれば,調停の手続きに進むこともできます。
この手続きの仲介役は調停委員です。
法律,建築,環境問題の専門家3名以上で調停委員が構成されます。
あっせんと同様に,調停委員から意見が述べられることになります。
意見だけでなく,調停案を作成して提示してくれることもあります。
ただし,調停案も,双方が合意しない限り成立しません。
最終的に合意に至らない場合は,打切り,として手続きは終了します。

以上は東京都の制度です。
他の都道府県の手続も似ていますが,異なることもあります。
ご注意下さい。

3 都道府県の『調停』と裁判所の『調停』は,不出頭ペナルティ,成立時の執行力などが異なる

都道府県の建築紛争手続には『調停』が含まれることもあります。
都道府県の紛争解決手続は,仮に『調停』というネーミングだとしても,裁判所の『調停』とは異なります。
例えば,東京都の『建築紛争の調整』という手続は,俗称として『調停』と呼ばれています。
いずれにしてもあまりネーミング自体で内容が決まるわけではありません。
以下,都道府県による『調停』と裁判所の『調停』の違いをまとめます。

(1)都道府県の『調停』では,不出頭のペナルティとして公表されることがある

裁判所の『調停』では,そのようなペナルティはありません。

(2)都道府県の調停では,賠償金等の金額についての調整は行わない

賠償金等の金額の調整は本格的・本質的な紛争解決と言えます。
本来的には裁判所が扱うべきものです。
このような考えから,都道府県のあっせんや調停では,金額の調整ではなく,建築の内容について改善することを目的としております。
裁判所の調停は,特に対象に限定はありません。
賠償金の支払により解決する,という方向で協議が進むことも多いです。

<都道府県のあっせん調停における調整の対象(例)>

・建設位置・高さ
・目隠しや防音装置の設置

(3)裁判所の『調停』では,成立した内容について強制力が伴う

裁判所で調停が成立した場合,調停調書として記録になります。
後日,合意内容について不履行があった場合,調停調書に基づいて強制執行が可能です。
すなわち,建築差止の執行や,賠償金未払い時に財産差押をする,などです。
<→別項目;債務名義は確定判決以外にも多くの種類がある
しかし,都道府県の手続きによる合意(和解)内容については,そのままでは強制執行できません。

4 建築紛争解決手段の選択方法のまとめ

建築に関する紛争解決の手段は複数あるのです。
特に,申し立てる順序などルールがあるわけではありません。
どの手続きを利用したら解決の可能性が高まるか,また時間・費用のコストも含めて考えるべきです。

(1)建築紛争調整(都道府県の手続き)

対立があまり深くない場合に適しています。
双方とも,第三者からの公的・合理的な見解をもらえれば,譲歩する意向を見せている,というような場合が典型です。
ただし,金銭的な解決を想定している場合は不向きです。

(2)裁判所の調停

対立があまり深くない場合に適しています。
金銭的な解決を想定している場合にも対応できます。

(3)訴訟(仮処分)

対立が深い場合に適しています。
実際には,和解で終わることも多いです。
裁判所が和解の調整を行うことも多いのです。
もちろん,双方が合意しないと和解は成立しません。
ただ,調停の場合と異なり,最終的には判決という強制的な結論が待ち構えています。
裁判所の心証による,有利・不利を認識しながら協議をすることになります。
だからこそ,和解で終了することが多いのです。

(4)その他

建築確認自体にミスがあり,違法建築となっているよう場合は,建築確認についての審査請求などの手続きもあります。