1 不動産売買における調査・説明義務(総論)
2 仲介業者の一般的な善管注意義務(概要)
3 売買における仲介業者の一般的な調査・説明義務
4 周辺環境に関する調査・説明義務の内容
5 場所的・環境的要因に関する説明義務の内容
6 調査・説明義務違反による責任
7 周辺環境についての調査・説明義務の実例(概要)

1 不動産売買における調査・説明義務(総論)

不動産は規模の大きな財産の取引といえます。
後から想定していなかったことが発覚して問題となるケースがよくあります。
法律的な責任としては売主や仲介業者の調査や説明の義務に違反があったというものがあります。
本記事では,不動産売買における調査や説明義務の基本的な内容を説明します。
なお,これとは別に,不動産の『瑕疵』として売主が責任を負うというものもあります。
詳しくはこちら|売買・請負の瑕疵担保責任の基本

2 仲介業者の一般的な善管注意義務(概要)

買主からみると,売主は契約の相手方であり,利益が対立する立場です。
この点,買主が依頼した仲介業者は立場が大きく異なります。
買主が料金を払って『有利・スムーズな取引』を頼んでいるのです。
仲介業者は,法的には善管注意義務という高度な義務を負います。

<仲介業者の一般的な善管注意義務(概要)>

あ 善管注意義務

委託の趣旨に則り善良な管理者の注意をもって
売主買主双方の間をあっせん仲介する
※民法644条

い 具体的な配慮義務

『ア・イ』の配慮をする義務がある
ア 売買契約が支障なく履行される
イ 当事者双方がその契約の目的を達する
※東京高裁昭和28年1月30日
詳しくはこちら|仲介契約の基本(元付/客付・準委任の扱い・誠実義務・善管注意義務)

3 売買における仲介業者の一般的な調査・説明義務

不動産の売買契約の中心は『対象物(不動産)を譲渡する』というものです。
解釈上,これに加えて付随的に『安全性について調査する義務』も認められています。

<売買における仲介業者の一般的な調査・説明義務>

あ 調査・説明義務を負う者

売主・仲介業者
仲介業者は事情によって責任の有無が違う

い 調査義務|原則

ア 予見可能かつ通常の調査で判明する範囲の調査で足りる
イ 公的機関による検査の実施の有無についての調査で足りる
ウ 安全性について独自に調査する必要はない
※大阪地裁平成10年7月29日

う 調査義務|例外=責任が加重される

次の事項については『独自の調査』も行う義務がある
例;買主(候補者)の購入目的・趣旨に関わる事項など
※神戸地裁昭和61年9月3日

なお土地売買での『地盤』に関する調査義務・責任については別に説明しています。
詳しくはこちら|土地売買×地盤沈下・軟弱地盤・液状化|法的責任・判断基準

4 周辺環境に関する調査・説明義務の内容

特別な事情がある場合は売主の調査・説明義務の解釈も違ってきます。
周辺環境に関する『特別な前提事情』をまずはまとめます。

<周辺環境に関する調査・説明義務の内容>

あ 前提事情

次のいずれも該当する場合『調査・説明義務』が生じる
ア 近隣の環境変化+対象物件の環境悪化が生じる事情が存在する
イ 売主に『明らかな認識可能性』がある

い 認識可能性|内容

次のいずれかに該当するという意味である
ア 環境悪化の事情を知っていた
イ 簡単な調査により環境悪化の事情を知り得た

う 環境悪化の例|日照系

近隣に高層マンションが建設される事情が存在した
売買対象のマンションの日照・眺望・通風に悪影響が生じる
※札幌地裁昭和63年6月28日

5 場所的・環境的要因に関する説明義務の内容

土地の売買時の場所的・環境的要因の説明義務をまとめます。

<場所的・環境的要因に関する説明義務の内容>

あ 基本的事項

一定の重要な事項について
→信義則による説明義務が生じる
場所的・環境的要因による土地の性状も対象となる
例;建物の浸水リスク
詳しくはこちら|建物・マンション売買における水害・浸水リスクの責任

い 説明義務|知っていた場合

重要な事項を具体的に認識していた場合
→説明義務が生じる

う 説明義務|知らなかった場合

次のすべてに該当する場合に説明義務が生じる
ア 法令上の義務or業界の慣行がある
重大な事態の発生可能性を説明する法的義務or慣行
イ 情報入手の容易性
情報を入手することが現実的に可能である
※東京高裁平成15年9月25日

売主や仲介業者の知っている事情によって説明義務の有無が違うのです。

6 調査・説明義務違反による責任

不動産売買で『調査・説明義務』があるのに不十分だった場合の責任をまとめます。

<調査・説明義務違反による責任>

あ 法的根拠

債務不履行責任

い 責任の内容

ア 損害賠償責任
『調査or説明義務違反』によって生じた『損害』
イ 契約解除
程度・事情によって解除が認められることもある
※民法415条,541条
※札幌地裁昭和63年6月28日

7 周辺環境についての調査・説明義務の実例(概要)

不動産の購入後に周辺環境について想定と違うことに気付くケースは多いです。
このようなトラブルについて,実際に裁判所が判断をした判例が蓄積されています。
いくつかの判例について,別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|セールストーク×法的責任|環境保証タイプ|眺望・日照・通風・騒音
詳しくはこちら|土地売買における境界未確定と売主・仲介業者の調査・説明義務違反
詳しくはこちら|建物・マンション売買における水害・浸水リスクの責任