1 重要事項説明とは?
2 買付証明書に押印したのにキャンセルできる?
3 手付解除ができない場合
4 瑕疵担保責任とは?(売買,建築)
5 過去の『死亡事故』の告知義務
6 不動産トラブル解決の流れ(交渉→調停→訴訟)
7 裁判所の専門委員とは?
8 都道府県の建築紛争調整手続とは?

1 重要事項説明とは?

不動産仲介業者は,売買や賃貸の仲介を行う場合,顧客=契約当事者に対して,一定の重要事項を説明する義務があります。
契約を締結し,入居した後に不備に気付いたという場合に重要事項説明義務の違反が問題になります。
文字どおり重要な事項が決まっています。
見落として後から問題になりそうなことが先回りして説明されるようになっているのです。
実務上,トラブルになるのは,『説明が抜けていた』とか『聞いていなかった』というものです。
通常,重要事項説明書という書面にされていて,しかも,契約当事者が確認後サインしています。
それでもトラブルになることはあります。
宅建業者は,不動産売買において重要説明義務がある

2 買付証明書に押印したのにキャンセルできる?

不動産の売買において,交渉の最初に買付証明書を調印することがあります。
要するに『この不動産を買います』というメッセージです。
その後,交渉が決裂して『買わない』ということがあります。
このような場合契約違反という誤解もあります。
しかし,買付証明書は,判例において契約締結ではないとハッキリしています。
逆に言えば買付証明書優先交渉権というレベルに過ぎないのです。
詳しくはこちら|買付証明書・売渡承諾書・仮契約書|記載事項・活用方法・法的意味

3 手付解除ができない場合

不動産の売買契約は,他の売買と比べて,規模が大きいです。
最後まで慎重に考えたり悩んだりします。
そこで,慣行として手付金という制度が活用されています。
専門的には手付にはいくつかの種類があります。
通常は,解約手付という性質となります。
その結果,売買契約締結をした後でも無条件解除ができるのです。
理由なく解除できる代わりに手付放棄が必要です。
逆に言うと通常の解除では『違約金』が必要なところ,手付なら手付放棄で済むということです。
手付を放棄することにより無条件の解除ができる;手付解除
ただ,ここで大きな問題が生じることがあります。
『履行の着手』があった場合は手付放棄はできないのです。
『履行の着手(時期)』については,契約の内容によって違ってきます。
当事者で解釈が異なる→トラブルに発展,ということが多いシーンです。
不動産売買,建築契約の『履行の着手』は移転登記,引渡,建設工事のいずれかである

4 瑕疵担保責任とは?(売買,建築)

不動産を購入した後に,不備欠陥が発覚することがあります。
建物であれば,構造の欠陥,雨漏り,シロアリ被害などが典型です。
詳しくはこちら|不動産売買・建築請負における欠陥の典型例
土地でも,地下に廃棄物が埋まっているなど,欠陥はあり得ます。
法的には,このような不備欠陥のことを瑕疵(かし)と言います。
そして,瑕疵が発覚した場合,損害賠償請求や解除が認められることがあります。
このような法的な効果(責任)を瑕疵担保責任と言います。

瑕疵常識的,平均的な性能を基準に,それより劣る場合に当てはまります。
実際には,不備のレベルが常識的範囲内範囲外なのか,という程度で見解が異なることが多いです。

また,瑕疵担保責任時間制限がちょっと複雑です。
不備の対象によって1年から10年まで幅広い設定があるのです。
詳しくはこちら|瑕疵担保責任の期間制限の規定と特約の制限(まとめ)
しかも,その一部は特約(契約の規定)で変更したり,排除したりできるのです。
この時間制限にひっかかってしまう,ということも多いです。
これを延ばす方法として不法行為責任を使う,という高度なテクニックも使える時には使うべきです。
詳しくはこちら|建物の欠陥|瑕疵担保の弱点→不法行為責任でカバー|期間制限・請求相手

5 過去の『死亡事故』の告知義務

(1)『人の死』は心理的瑕疵となる

不動産を購入後に『その物件や周辺で死亡事故や自然死があった』と発覚することがあります。
土地や建物を使用する際,物理的に困ることはありません。
しかし,常識的に,快適に居住する,という根本的な不動産の機能に不備がある,と考えられます。
この点,法的にも心理的瑕疵として,瑕疵担保責任の対象とされます。
裏を返すと売買の際に,説明義務告知義務がある,ということです。
俗に言う『ワケあり物件』のことです。
詳しくはこちら|不動産売買・賃貸×過去の人の死|基本|法的構成・責任・発覚ルート

(2)告知義務は死後何年

ただ,心理的瑕疵は,その範囲が不明確です。
つまり事故死自然死(大往生)の後,何年間影響が続くのか,ということは法律に定められていません。
非常に大まかな目安で自殺は7年というものもあります。
詳しくはこちら|不動産売買・賃貸×『過去の人の死』|告知義務・損害賠償|包括的判断基準
しかし,他の死因(他殺(殺人),事故死,自然死)では違いますし,また,物件の環境でも違ってきます。
事故死の後,別の入居者が『介在』すれば,その後は告知義務はない,と言われることもあります。
人の死の後,入居者が介在すると,その後は説明義務がなくなる傾向;介在ロンダリング
言わば介在入居者ロンダリングのような感じですね。
確かにそのような判例はありますが,形式的に『介在』させれば告知義務はなくなるという単純なものではありません。

(3)『人の死』に関する告知義務,損害賠償の範囲のまとめ

過去の事故死などによる心理的瑕疵は,売買だけではなく賃貸についてもあてはまります。
非常に多くの判例が蓄積されていますが,定量的な分析はないので,当事務所で告知義務の年数賃料相場の変化をまとめてあります。
詳しくはこちら|不動産売買・賃貸×『過去の人の死』|告知義務・損害賠償|包括的判断基準

6 不動産トラブル解決の流れ(交渉→調停→訴訟)

不動産売買や建築について,瑕疵担保責任その他のトラブルの際の解決方法について説明します。

(1)交渉

通常は最初に交渉を行います。
弁護士が依頼を受けて代理人交渉を行うこともあります。
当事者の見解が離れていて,合意に至る可能性が低いという場合は,弁護士が介入した方が良いでしょう。
その後に調停や訴訟などの法的手続に進む可能性があるわけです。
交渉は,その前哨戦です。
具体的には,訴訟で不利になる主張をしない,かつ,相手から,証拠で有利になる主張を獲得するという駆引きになっているのです。
弁護士が代理人として交渉する場合は,最初に内容証明で通知するのが通常です。
記録,証拠になりますし,相手としても,正式な対応,法的手段を取ることもあるということを認識しやすいです。

(2)調停やその他のADR

ごく一般論では,交渉が決裂したら,訴訟を利用します。
訴訟は,最終的に主張,証拠の判断によって判決がなされます。
当事者が納得,合意に至らなくても解決に至るという,強制力があるところがメリットなのです。
逆に言えば,第三者の介在によって合意に至る可能性が高いという場合は,訴訟以外の手段も検討します。
民事調停もありますし,建築など,一定の種類の紛争については,都道府県の建築紛争調整も利用できます。
ガイド|都道府県の建築紛争調整手続とは?

(3)訴訟

最終的な紛争解決手段です。
特徴は,当事者の主張,立証によって,当事者が納得,合意しなくても判決に至る,というところです。
逆に,法的主張,立証の程度によっては不本意にも負けてしまうということがあるのです。
主張する内容を取捨選択,証拠の獲得,確保,ということが結論に直結します。
また,実際には和解で終了するということが多いです。
ご相談者へ;訴訟;判決/和解レシオ
では,主張や立証は意味がないかと言えば,そうではありません。
実際には裁判官の和解勧告に当事者が応じるというケースが多いです。
裁判官の指摘は判決内容に近いはずなので,当事者としても応じざるを得ないという傾向があります。
そして,裁判官の和解勧告の内容を当方に有利にする,ためには,それまでの主張,立証で心証を当方有利に持ち込むことが非常に重要なのです。
突き詰めると有利な結果を獲得できるために必須の要素は効果的な主張,立証を特定できるスキルということになります。
さらに言えば,クリエイティブな発想と言うよりも案件の種類ごとのノウハウ,多くの暗黙のパターンなのです。

この点,みずほ中央法律事務所では,不動産に関するノウハウを多く蓄積,集結し,弁護士全員で共有しています。
複数弁護士で担当しています。
安心してご相談,ご依頼いただけます。
実績の一部をまとめてありますので,ご覧ください。
不動産に関する解決実績|弁護士専門ガイド

7 裁判所の専門委員とは?

裁判によって建築の瑕疵を判断するとは言っても,裁判官は建築の素人です。
争点は,完成した状態が平均的,常識的レベルかという程度の判断になることがほとんどです。
そこで,裁判所は専門家の協力を得ます。
具体的には,専門委員として建築の専門家が関与するシステムがあります。
東京地裁では民事22部が建築紛争専門部となっており,専門委員の利用ができます。
私的鑑定や,通常の鑑定人の場合,当事者がその費用を負担します。
詳しくはこちら|建物の瑕疵の鑑定(建築士の検査・調査)費用の相場と誰が負担するか

しかし,専門委員の場合は,裁判所内部扱いなので,特に追加で費用は必要とされません。
ただし,新築の建築新築建物の売買だけが対象とされています。
中古建物の売買,は対象外です。
東京地裁民事22部(建築紛争専門部)では新築だけが対象とされる

8 都道府県の建築紛争調整手続とは?

建築に関する紛争の解決手続は,裁判所の訴訟だけではありません。
都道府県が独自に調整手続を運用しています。
建築に関する紛争の解決手段として都道府県が行う建築紛争調整手続がある
東京都の場合,『あっせん』や『調停』という手続があります。
ネーミングは似ていますが,裁判所の手続とはまったく別のものです。
建築の専門家が関与してくれるのは有用です。
一方で,不出頭に対するペナルティ成立した場合の執行力などは,訴訟よりも劣ります。
都道府県の『調停』と裁判所の『調停』は,不出頭ペナルティ,成立時の執行力などが異なる
まとめると,ある程度合意に達する可能性が見えるという場合にはこの解決手段を選択すると良いでしょう。
もちろん,都道府県の建築紛争解決手続でも,前提となる事情の主張,立証は結果に結びつきます。
適切な事情や資料(証拠)のピックアップはノウハウのある弁護士が行う方が良いでしょう。
建築紛争解決手段の選択方法のまとめ