1 建物の瑕疵担保責任|弱点|『期間制限が短い』
2 建物の瑕疵担保責任|弱点|『施主』以外は『建築会社』への請求NG
3 建物の欠陥×不法行為|期間制限が『20年』と長い
4 建物の欠陥×不法行為|『施主』以外も『建築会社』への請求OK
5 建物の欠陥|不法行為に該当する場合|2つの判例
6 建物の欠陥×不法行為|典型例
7 建物の欠陥|瑕疵担保/不法行為責任|どちらも請求できる

1 建物の瑕疵担保責任|弱点|『期間制限が短い』

一般的に,建物に欠陥がある場合の責任は『瑕疵担保責任』と言えます。
しかし『瑕疵担保責任』は弱点があります。
その1つが『期間制限』です。

<建物の欠陥|瑕疵担保責任の期間制限>

あ 概要

『瑕疵』の構造上の位置・特約により異なる

い 具体的期間|通常の範囲

ア 比較的多い期間制限
引き渡しから1〜2年
イ 期間制限の最長
引き渡しから10年

大雑把に言うと『建物の完成から10年』で通常『時間オーバー』になるのです。

2 建物の瑕疵担保責任|弱点|『施主』以外は『建築会社』への請求NG

建物建築の瑕疵担保責任の弱点はもう1つあります。
『損害賠償の請求相手』です。
建築会社に依頼した者=契約者(発注者=施主)は『建築会社』に請求できます。

問題になるのは『中古建物を購入した者』です。
購入者は『施主』ではありません。
つまり『建築会社』との間に契約関係がありません。
そのため,購入者は『建設会社への瑕疵担保としての損害賠償』を請求できません。
購入者が賠償請求できるのは『売主だけ』となるのが原則です。
通常賠償金を払える経済力があるのは『建築会社』です。
それなのに『購入者』は『建設会社』への請求が否定されているのです。

以上の『瑕疵担保責任の弱点』について乗り越えることができる場合もあります。
次に説明します。

3 建物の欠陥×不法行為|期間制限が『20年』と長い

『瑕疵担保責任』とは別の法的責任として『不法行為責任』があります。
まずは『期間制限』の点で,瑕疵担保責任とは大きく違います。

<不法行為責任×時効(期間制限)>

起算点 期間 法的性質
不法行為の時点 20年 除斥期間
被害者が『被害+加害者』を知った時 3年 消滅時効

※民法724条

詳しくはこちら|売買における欠陥に関する責任の期間制限と実務的な選択

4 建物の欠陥×不法行為|『施主』以外も『建築会社』への請求OK

『請求の相手方』という点でも『不法行為責任』は『瑕疵担保責任』より有利です。

<建物の建築・設計・施工監督者→『不法行為責任』>

あ 義務を負う者

建物の建築に携わる設計者・施工者・工事監理者

い 賠償請求をできる者

建築請負などの契約関係にない者を含む
例;居住者を含む建物利用者・隣人・通行人など
※最高裁平成19年7月6日

元々『不法行為』は契約関係を前提としない責任です。
交通事故の当事者同士を想定すると分かりやすいでしょう。

5 建物の欠陥|不法行為に該当する場合|2つの判例

以上のように『瑕疵担保責任』よりも『不法行為責任』の方が有利なことが多いです。
逆に言えば,そう容易に『不法行為』として認めるべきではない,と言えます。
この基準については,同一案件で連続して出された最高裁判例で基準が構築されています。

<建物の欠陥|不法行為に該当する要件>

次のいずれにも該当する場合

あ 建物に安全性を損なう瑕疵がある

居住者等の生命,身体又は財産を危険にさらすような瑕疵をいう
現実的な危険をもたらしている場合に限らない

い 『被害の発生』or『危険の現実化の可能性』

次のいずれかに該当する場合
ア 瑕疵により居住者などの生命or身体or財産が侵害された場合
イ 瑕疵を放置するといずれは『生命or身体or財産に対する危険』が現実化する場合

う 責任の法的性質

不法行為による損害賠償責任
※最高裁平成19年7月6日
※最高裁平成23年7月21日

平成19年判例で基本部分ができて,平成23年判例でより『拡張』されたと言えます。

6 建物の欠陥×不法行為|典型例

建物の欠陥が『不法行為』に該当する典型例をまとめます。

<不法行為が成立する典型例>

基礎部分に手抜き工事があり,家が傾いている
バルコニーの手すりの設置状況が不良→居住者に転落のリスクがある

7 建物の欠陥|瑕疵担保/不法行為責任|どちらも請求できる

建物の欠陥についての法的責任は『瑕疵担保』と『不法行為』の2つがあります(前述)。
この2つは『理論的には独立』です。
被害者としてはどちらも請求することもできます。
もちろん『損害をダブルカウント(2倍の金額の請求)』ができるわけではありません。
また期間制限やその他の要件も異なります。
最初から『一方しか成り立たない』ということもあります。