【仮想通貨交換業者の登録審査における事前相談とドラフト審査の制度(金融庁資料)】

1 仮想通貨交換業者の登録審査における事前相談とドラフト審査の制度
2 事前相談のプロセス
3 事前相談における説明事項
4 ドラフトの事前面談での主な確認事項
5 ドラフト書面の事前審査での主な確認事項
6 正式な登録申請書の受理のプロセス
7 金融庁の資料のソース

1 仮想通貨交換業者の登録審査における事前相談とドラフト審査の制度

仮想通貨交換業者の登録制度は平成29年4月に始まり,その後,実際に登録申請についての審査が行われています。
審査の内容(登録の要件)は,法令上は抽象的な規定しかないため,実際の金融庁(財務省)の審査には手探りという状況がありました。
詳しくはこちら|平成30年前半の仮想通貨交換業者の規制(登録審査)の厳格化
平成30年に入ると,金融庁での審査の流れができてきました。
詳しくはこちら|仮想通貨交換業者の登録申請の手続の流れ(事前面談・ドラフト審査・本申請)
具体的には事前相談ドラフト審査というプロセスを作ったのです。
これらの審査のプロセスについては,金融庁が公式に明示しています。
本記事では,仮想通貨交換業者登録における事前相談ドラフト審査について,金融庁が公表しているものを元に説明します。

2 事前相談のプロセス

登録申請をする時には,最初に,金融庁仮想通貨モニタリングチームへの連絡して,その後,事前相談を行います。
この事前相談では,金融庁は想定する事業について大雑把に把握します。

<事前相談のプロセス>

あ 相談対応

金融庁が,対面や電話などにより相談を受ける

い 申請概要を元にしたヒアリング

申請者から申請概要などをまとめた文書の提出を受ける
ヒアリングによって『う』のような点について内容を確認する

う ヒアリングする事項の例

ア 申請予定者の概要イ 申請を行おうとする経緯・目的ウ 業務の内容・方法エ 業務体制 業を適確・的確に遂行するに足りる人的構成,社内規則の整備状況など
※金融庁『新規登録申請の審査等に係る一般的な流れ』(後記※1

3 事前相談における説明事項

事前相談で申請者が説明する主な内容は取り扱う仮想通貨サービスの大雑把な内容です。

<事前相談における説明事項>

あ 業者(申請者)の概要
い 取り扱う仮想通貨の概要

資金決済法上の仮想通貨への該当性を含む

う サービスの概要

資金決済法上の仮想通貨交換業への該当性を含む
※金融庁『仮想通貨に関連する事業を行うみなさまへ』(後記※1

4 ドラフトの事前面談での主な確認事項

事前相談の後は,正式な申請書を作る前に,申請書のドラフトを作るプロセスとなります。
申請書のドラフトの提出の前に,さらに,金融庁のスタッフと面談してドラフトとしての完成度を上げることが要請されます。
これを(ドラフト書面を作成するための)事前面談と呼びます。前記の事前相談と区別して事前面談と呼びますが,正式な名称というわけではありません。
ドラフト書面の事前面談は,チェックシートに沿って必要な書類や資料を揃えた後に実施することになります。

<ドラフトの事前面談での主な確認事項>

あ 申請書ドラフトの提出

申請者が登録申請書のドラフトを提出する

い 確認の対象項目

ア 記載事項 申請書の記載内容に過不足がないか
イ 登録拒否要件 会社の社内体制等が登録拒否要件(資金決済法63条の5)に該当しないか
ウ 適正・確実な業務遂行体制の整備 仮想通貨交換業を適正かつ確実に遂行する体制の整備(GL16仮想通貨交換業者関係)を満たしているか
※金融庁『仮想通貨に関連する事業を行うみなさまへ』(後記※1

5 ドラフト書面の事前審査での主な確認事項

事前審査では,申請書のドラフトの完成度を上げることになります。当然,申請書の内容はとても多いですが,主に確認する事項は,利用者保護措置・資産の分別管理・システムリスク管理です。コインチェックNEM流出事件の再発を未然に防ぐという意図が分かります。

<ドラフト書面の事前審査での主な確認事項>

あ 利用者保護措置

取り扱う仮想通貨の特性について利用者に『ア・イ』のような説明をするための態勢が整備されているか
ア 『法定通貨ではないこと』イ 『価格変動に伴う損失リスクがあること』 ※事務ガイドラインII-2−2−1
詳しくはこちら|資金決済法63条の10(利用者保護措置)と内閣府令・ガイドラインの条文規定

い 金銭・仮想通貨の分別管理

ア 社内規則・ユーザーとの契約内容 社内規則に,金銭・仮想通貨それぞれについて,分別管理の執行方法が具体的に定められ,利用者との契約に反映しているか
イ 運用 自己の固有財産である金銭・仮想通貨と,利用者が預託した金銭・仮想通貨が,『ア』の執行方法に基づいて明確に区分され,個々の利用者の持分について,直ちに判別できることとしているか
その遵守状況について適切に検証することとしているか
※事務ガイドラインII-2−2−2
詳しくはこちら|資金決済法63条の11(利用者財産の管理)と内閣府令の条文規定

う システムリスク管理

ア リスク管理態勢の整備の履行 取締役会は,コンピュータシステムのネットワーク化の進展等により,リスクが顕在化した場合,その影響が連鎖し,広域化・深刻化する傾向にあるなど,経営に重大な影響を与える可能性があるということを十分踏まえ、リスク管理態勢を整備しているか
イ リスク管理体制の根拠 システムリスク管理態勢の整備に当たっては,その内容について客観的な水準が判定できるものを根拠としているか
ウ 継続的な管理態勢の見直し システムリスク管理態勢については,システム障害等の把握・分析、リスク管理の実施結果や技術進展等に応じて,不断に見直しを実施しているか
※事務ガイドラインII-2−3−1
詳しくはこちら|仮想通貨交換業者の体制の整備の登録審査と業務監督の着眼点
※金融庁『仮想通貨に関連する事業を行うみなさまへ』(後記※1

6 正式な登録申請書の受理のプロセス

前記のようなプロセスで,申請書としてある程度の完成度に達した段階で,ようやく正式な申請書の提出のプロセスとなります。

<正式な登録申請書の受理のプロセス>

あ 申請書提出

金融庁が登録申請書の提出を受ける

い 主な確認事項

『ア〜ウ』のような点について確認する
ア 記載内容イ 添付書類ウ 登録拒否要件に該当しないか ※金融庁『新規登録申請の審査等に係る一般的な流れ』(後記※1

7 金融庁の資料のソース

以上の審査のプロセスの説明は,金融庁で公表しているものを元にしています。ソースとした資料をまとめておきます。

<金融庁の資料のソース(※1)

あ 資料が掲載されているサイト

金融庁|仮想通貨に関連する事業を行うみなさまへ

い 掲載されている場所

『登録までの一般的な流れ等』の項目の中

う 資料のURL

金融庁|新規登録申請の審査等に係る一般的な流れ
金融庁|仮想通貨交換業者の新規登録の審査内容等

本記事では,仮想通貨交換業者登録の申請プロセスについて,金融庁が公表しているものを説明しました。
実際には,想定するサービスの内容や仕組みによって審査の進み方は大きく違ってきます。
実際に仮想通貨交換業者登録の取得を検討されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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