信託で財産の承継を決めておいた場合,どのように変更できるのですか。
遺言のように自由にできないのですか。

1 信託内容の変更には,委託者,受託者,受益者全員の同意が必要
2 信託で変更方法を設定しておくことができる
3 変更についての設定の具体例

1 信託内容の変更には,委託者,受託者,受益者全員の同意が必要

(1)信託内容変更の要件

信託内容の変更については,信託法上いくつかのバリエーションがあります。
原則的には委託者,受託者,受益者の全員の合意が必要となっています(信託法149条)。

(2)遺言,死因贈与の変更,との比較

この点,遺言は1人の意向相続(死亡)まで効力を生じないという性格があります。
そこで,撤回は自由にできます。
<→別項目;遺言は容易に撤回できる

また,死因贈与についても,基本的には遺言と同様です。
負担付の場合だけ例外的な扱いとなります。
<→別項目;死因贈与は自由に撤回できる

信託は複数人の契約(原則),信託契約締結時から効力を生じるという点で遺言と違います。
そこで,遺言よりも変更に大きな制限がかかっているのです。

2 信託で変更方法を設定しておくことができる

信託行為の中で,変更方法を規定しておくことができます(信託法149条4項)。
変更について柔軟性を持たせるなど,自由な設定をしておくことが可能です。

ただし,実際には,規定が明確でなかったために,当事者の見解が相違し,紛争に発展することもあります。
誰が変更できるのか変更は無効ではないのかということに解釈の余地が生じないよう,明確に設定しておくと良いです。

<信託の変更の規定の重要事項>

ア 変更の方法
イ 変更を決められる者(変更権者)

3 変更についての設定の具体例

信託の設計として,変更を意図的に緩和させるケースもありますし,逆に制限的にするケースもあり得ます。
相続を前提に,言わば遺言の代用として信託を活用する場合を前提に考えます。
<→別項目;遺言代用信託の活用;遺言信託とは違う

<各立場によるニーズの例>

ア 承継元(父)側の立場
 →事情の変化によって,承継先を変更したい
イ 承継先(子)側の立場
 財産(特に株式)を承継することを前提に行動する
 →後から自由に撤回されると困る

多くのバリエーションを想定した設定をして,信託契約の完成度を高めておくべきです。
例えば,家業の事業承継について,関係者全員の協議の結果を信託契約にしたような場合,変更は制限的にしておくと良いでしょう。

<変更を制限する例>

信託の変更については(推定)相続人の全員の同意を要する

条文

[信託法]
(関係当事者の合意等)
第百四十九条  信託の変更は、委託者、受託者及び受益者の合意によってすることができる。この場合においては、変更後の信託行為の内容を明らかにしてしなければならない。
2  前項の規定にかかわらず、信託の変更は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定めるものによりすることができる。この場合において、受託者は、第一号に掲げるときは委託者に対し、第二号に掲げるときは委託者及び受益者に対し、遅滞なく、変更後の信託行為の内容を通知しなければならない。
一  信託の目的に反しないことが明らかであるとき 受託者及び受益者の合意
二  信託の目的に反しないこと及び受益者の利益に適合することが明らかであるとき 受託者の書面又は電磁的記録によってする意思表示
3  前二項の規定にかかわらず、信託の変更は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める者による受託者に対する意思表示によってすることができる。この場合において、第二号に掲げるときは、受託者は、委託者に対し、遅滞なく、変更後の信託行為の内容を通知しなければならない。
一  受託者の利益を害しないことが明らかであるとき 委託者及び受益者
二  信託の目的に反しないこと及び受託者の利益を害しないことが明らかであるとき 受益者
4  前三項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
5  委託者が現に存しない場合においては、第一項及び第三項第一号の規定は適用せず、第二項中「第一号に掲げるときは委託者に対し、第二号に掲げるときは委託者及び受益者に対し」とあるのは、「第二号に掲げるときは、受益者に対し」とする。