【信託の受託者の義務(分別管理・帳簿作成・報告義務)】

1 信託の受託者の義務(分別管理・帳簿作成・報告義務)
2 受託者による財産の分別管理義務
3 信託財産の分別管理の方法(概要)
4 分別管理による倒産隔離(概要)
5 受託者の帳簿作成義務
6 受託者の報告義務

1 信託の受託者の義務(分別管理・帳簿作成・報告義務)

信託の根本的な機能(構造)は,他者の資産を預かる,管理・運用するというものです。
財産を預かるという受託者の任務の性質上,一定のルールが規定されています。
本記事では,信託法に規定されている主な受託者の義務について説明します。

2 受託者による財産の分別管理義務

受託者が信託財産を管理する上で,受託者自身の財産との分別を徹底することが要求されています。
信託財産と受託者の固有財産は,所有者はどちらも受託者で同一です。しかし,実質的な利益の帰属は異なります。
つまり,信託財産の利益は受益者に帰属するので,性質が大きく異なるのです。そこで,混在することを防止する必要があるのです。

<受託者による財産の分別管理義務>

受託者は『ア〜ウ』の財産を分別して管理する義務がある
ア 信託財産に属する財産イ 固有財産 受託者自身の財産のことである
ウ 他の信託の信託財産に属する財産 ※信託法34条1項

3 信託財産の分別管理の方法(概要)

信託財産の分別管理の具体的な方法は,財産の種類によって異なります。明確かつより確実に判別・識別できる方法をとることが必要です。
財産の種類ごとの適切な管理方法については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|信託財産の種類ごとの分別管理の方法(特定性の内容)

4 分別管理による倒産隔離(概要)

以上の説明のように,信託の委託者は分別管理をする義務があります。
逆に,分別管理をすることによって,倒産隔離の効果が生じます。
要するに,信託による財産の移転は倒産隔離の機能を持っている,ということもできるのです。
これについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|信託財産の倒産隔離効(独立性)の要件(特定性・対抗力)

5 受託者の帳簿作成義務

受託者が負う義務として帳簿作成義務もあります。
年に1回,財産の状況を記録にまとめるというものです。

<受託者の帳簿作成義務>

あ 帳簿作成の頻度

毎年1回

い 主な作成書面

ア 貸借対照表イ 損益計算書ウ 信託概況報告(書)エ 付属明細書 ※信託法37条1項,2項,信託計算規則4,5条

6 受託者の報告義務

受託者が負う義務として報告義務もあります。
財産の状況を受益者に報告するというものです。
信託契約によって,報告義務を排除することも可能です。

<受託者の報告義務>

あ 報告義務の時期

帳簿を作成した時

い 報告の相手方

受託者が受益者に報告する

う 信託行為による別段の定め

信託行為(信託契約)で報告を必要としない旨を定めることもできる
※信託法37条3項

本記事では,信託の受託者の義務の内容を説明しました。
実際には,個別的な条項の内容によって受託者の義務は違います。
実際に受託者の義務の問題に直面されている方や信託契約の利用を検討されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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