【信託終了時に残余財産が帰属する者(残余財産受益者・帰属権利者など)】

1 信託終了時に残余財産が帰属する者
2 信託終了時の残余財産が帰属する者
3 複数人の残余財産受益者・帰属権利者の指定
4 指定がない場合の残余財産の帰属
5 信託終了時の残余財産の帰属先の優先順序(まとめ)
6 残余財産の帰属による相続税・贈与税(概要)

1 信託終了時に残余財産が帰属する者

信託が終了した時に,信託財産は,受託者から誰かに承継されることになります。
信託の特徴として,当事者が自由自在にコントロールできるというものがあります。
そこで,信託財産を誰が承継するのか(残余財産の帰属先)も,当事者が設定しておくことができます。
本記事では,残余財産の帰属先のうち,当事者が設定しておく方法について説明します。

2 信託終了時の残余財産が帰属する者

原則的には,信託が終了した時に残余財産が帰属する者を,信託契約(信託行為)で規定しておきます。
細かく分けると,残余財産受益者帰属権利者の2種類があります。

<信託終了時の残余財産が帰属する者>

あ 残余財産受益者

信託行為において残余財産の給付を内容とする受益債権に係る受益者である
受益者であるので,信託終了前も受益者としての権利を有する
※信託法182条1項1号

い 帰属権利者

信託行為において残余財産の帰属すべき者となるべき者として指定された者である
※信託法182条1項2号

う 帰属権利者と残余財産受益者との違い

帰属権利者は,受益者としての権利がない
→信託の清算に至って受益者とみなされる
※信託法183条6項
※道垣内弘人著『信託法(現代民法別巻)』有斐閣2017年p418

3 複数人の残余財産受益者・帰属権利者の指定

残余財産受益者帰属権利者を,複数人決めておくことも可能です。

<複数人の残余財産受益者・帰属権利者の指定>

信託行為において
残余財産受益者(or帰属権利者)について複数の者を指定することも可能である
※道垣内弘人著『信託法(現代民法別巻)』有斐閣2017年p418

なお,一般的に受益者が複数人存在する状況では,意思決定などの場面で問題が生じることがあります。これについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|複数の受益者|権利行使のハードル・受益権取得請求権

4 指定がない場合の残余財産の帰属

信託契約に残余財産が誰に帰属するのかが規定されていない場合には,委託者(またはその相続人)に帰属します。
さらに,委託者やその相続人が存在しない場合には清算受託者(受託者であった者)に帰属します。

<指定がない場合の残余財産の帰属>

あ 信託行為による指定なし

信託行為において帰属権利者・残余財産受益者を定めていない場合
→残余財産帰属先として,委託者またはその相続人が指定したものとみなす
※信託法182条2項

い 委託者の不存在

帰属権利者・残余財産受益者が定められいない
かつ,信託終了時に委託者・その相続人が存在しなし場合
→残余財産は清算受託者に帰属する
受託者であった者のことである
※信託法182条3項,177条

5 信託終了時の残余財産の帰属先の優先順序(まとめ)

信託が終了した時点で残余財産が帰属する者は,以上の説明のようにいくつかのバリエーションがあります。
最後に,優先順序で並べてまとめます。

<信託終了時の残余財産の帰属先の優先順序(まとめ)>

あ 第1順位

信託行為で指定した者(帰属権利者・残余財産受益者)

い 第2順位

委託者・その相続人

う 第3順位

清算受託者

6 残余財産の帰属による相続税・贈与税(概要)

残余財産が帰属する者は,通常無償で財産を取得することになります。
そこで,贈与税か相続税が課税されることになります。
詳しくはこちら|信託の受益権や残余財産の取得による相続税や贈与税の課税

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