1 共有物分割と遺産分割の代償金の課税上の違い
2 遺産分割の代償金と取得費の関係
3 共有物分割の代償金と取得費の関係
4 2つの分割と譲渡所得の代償金の扱い(まとめ)
5 代償金を譲渡所得の取得費とする方法

1 共有物分割と遺産分割の代償金の課税上の違い

共有物分割と遺産分割の両方に代償分割という分割類型があります。
詳しくはこちら|共有物分割の主な分割類型には現物分割・換価分割・価格賠償がある
詳しくはこちら|相続手続全体の流れ|遺言の有無・内容→遺産分割の要否・分割類型・遡及効
2つの分割の制度は本質的に同じなのです。
しかし,分割が終わった後に対象財産を譲渡する際の譲渡所得の算定で違いが現れます。
本記事では,共有物分割と遺産分割の代償金が譲渡所得の取得費に該当するかどうかを説明します。

2 遺産分割の代償金と取得費の関係

遺産分割における代償金は,譲渡所得を算定する時の取得費には含まれません。
取得費は,被相続人がその財産を取得した時の金額を承継するのです。
古すぎて分からない場合は売却代金の5%という非常に低い金額とされてしまいます。

<遺産分割の代償金と取得費の関係>

あ 遺産分割の代償金の対価関係

遺産分割の代償金について
遺産のうち特定の財産の対価ではない
相続人それぞれが承継した財産全体の不均衡に対応する

い 代償金と取得費の関係

遺産分割における代償金について
→特定の財産の取得費に該当しない

う 取得費の承継(概要)

被相続人の取得時期と取得費を承継する
不明な場合は譲渡金額の5%となる
詳しくはこちら|相続財産を譲渡した場合の取得費の承継と特例

3 共有物分割の代償金と取得費の関係

一方,共有物分割の代償金はその後の譲渡における取得費として扱われます。

<共有物分割の代償金と取得費の関係>

あ 共有物分割の代償金の対価関係

共有物分割の代償金について
特定の財産(共有物)の対価である

い 代償金と取得費の関係

共有物における代償金について
→対象財産の取得費には該当する

4 2つの分割と譲渡所得の代償金の扱い(まとめ)

前記のように,2つの分割の手続で,譲渡所得の算定における代償金の扱いが違うのです。
この違いの原因は,遺産分割と共有物分割の構造・性質にあります。

<2つの分割と譲渡所得の代償金の扱い(まとめ)>

財産入手方式 財産と代償金の関連性 代償金の扱い
遺産分割 弱い 取得費ではない
共有物分割 強い 取得費になる

5 代償金を譲渡所得の取得費とする方法

前記のような代償金の性格の違いを利用して,相続の際に負担する金銭を譲渡所得の取得費としてカウントする方法があります。
遺産分割と共有物分割の2段階に分けて財産を承継するというものです。

<代償金を譲渡所得の取得費とする方法>

あ 共有分割による遺産分割

遺産中の一部の財産については相続人の共有にする
共有持分割合で各相続人が承継する財産の価値を調整する
金銭による差額の調整(代償金)はしない

い 共有物分割による代償金支払

遺産分割とは別の合意として共有持分を売買する
共有物分割の1つという扱いになる
法的には代償金による価格賠償という分割類型となる
詳しくはこちら|共有物分割の主な分割類型には現物分割・換価分割・価格賠償がある

結果的に,特定の相続人の単独所有になるということは同じです。
ただし,相続人間で授受される代償金が,遺産分割ではなく共有物分割によるものということになります。
財産(共有持分)の取得と金銭の支払いが明確に対応しています。
その結果,当該財産を将来第三者に売却する際の譲渡所得算定上,取得費として代償金をカウントできるのです。