1 遺産分割が当初より無効となるケース
2 意思表示の瑕疵による遺産分割の無効
3 想定外の課税による私法上の錯誤無効
4 相続人の欠落による遺産分割の無効
5 死後認知により相続人となった者の扱い
6 遺産分割の合意が否定されるケース

1 遺産分割が当初より無効となるケース

遺産分割が当初より無効となる状況があります。
このようなケースでは,その後改めて遺産分割を行っても,課税としては1回の相続として扱われます。
つまり,2重の課税は生じないのです。
詳しくはこちら|遺産分割のやり直しで2重の課税となることがある
本記事では,遺産分割が当初より無効であるようなケースについて説明します。

2 意思表示の瑕疵による遺産分割の無効

遺産分割についても民法の総則にある意思表示の瑕疵に関する規定が適用されます。
錯誤によって無効となります。
また,詐欺や強迫があった場合は,取消によって無効となります。

<意思表示の瑕疵による遺産分割の無効>

あ 錯誤

錯誤によって遺産分割が無効となる
※民法95条

い 詐欺,強迫

詐欺や強迫によって遺産分割(合意)がなされた場合
取消によって遺産分割が無効となる
※民法96条

3 想定外の課税による私法上の錯誤無効

遺産分割は錯誤によって無効となることがあります(前記)。
錯誤の典型例の1つとして,想定外の重い課税がなされることが発覚したというケースがよくあります。
最高裁の判例で,このような事情も錯誤として認められます。

<想定外の課税による私法上の錯誤無効>

あ 前提事情

税の負担の発生についての思い違いがあった
更正・決定により想定外に重い税負担が生じた(発覚した)

い 錯誤無効

錯誤を理由として無効となることがある
※最高裁平成元年9月14日

4 相続人の欠落による遺産分割の無効

遺産分割は相続人全員が参加(合意)しないと有効に成立しません。
詳しくはこちら|『相続人全員』ではない参加者による遺産分割の有効性(基本)
相続人の一部が欠けていたケースでは,遺産分割としては無効となります。

<相続人の欠落による遺産分割の無効>

あ 相続人の欠落による遺産分割の効力

相続人の一部が参加していなかった場合
→遺産分割は無効である

い 相続人の欠落の例

ア 胎児の欠落
胎児が参加していなかった場合
死後認知により相続人となった者は特別な扱いがある(後記※1)
イ 行方不明の相続人
行方不明の相続人が参加していなかった
詳しくはこちら|参加者が欠落した遺産分割の具体的状況と有効性

5 死後認知により相続人となった者の扱い

遺産分割に相続人が1人でも欠けていれば無効となります(前記)。
この点,死後認知に関しては例外的に無効となりません。

<死後認知により相続人となった者の扱い(※1)>

あ 前提事情

死後認知によりAが相続人となった
この時点で既に遺産分割が完了していた

い 遺産分割の効力

遺産分割は相続人Aが参加していなかった
→遺産分割は有効である
価額(金銭)賠償が残るだけである
※民法910条
詳しくはこちら|死後の認知|全体|認知を回避or遅らせる背景事情|相続→金銭賠償

6 遺産分割の合意が否定されるケース

遺産分割の合意がなかった場合は,当然,その後の遺産分割は1回目の相続として扱われます。
民事的な理論では,合意が成立していないこと無効は別のものといえます。
ただし,結論としては,税務上の扱いも含めてこの2つは同じです。
遺産分割の合意が成立したかどうかは,いろいろな証拠を元に判断されます。
参考になる裁判例を別の記事で紹介しています。
詳しくはこちら|相続税分納のための法定相続登記は遺産分割の合意ではない(裁判例)