1 遺産分割のやり直しについての課税(全体)
2 2重課税となる遺産分割のやり直しの典型例
3 遺産分割の有効性による課税の違いと判断方法
4 遺産分割内容の不備による過重な課税の予防

1 遺産分割のやり直しについての課税(全体)

いったん遺産分割が終わった後に,再び遺産分割をやり直すというケースもあります。
この場合,相続人は納得していても,想定外の大きな課税が生じるリスクがあります。
本記事では,遺産分割のやり直しについての課税について説明します。
まずは,大きな枠組みとして,最初の遺産分割が最初から無効となる状態かどうかで2つに分かれます。
最初から無効となる状態であれば,2回目の遺産分割にだけ課税されます。
1回目の遺産分割には課税されないので,仮に既に相続税の申告済であれば,更正の請求や修正申告をすることになります。
最初の遺産分割が最初から無効というわけではない場合,2つの遺産分割の両方が課税の対象となります。

<遺産分割のやり直しについての課税(全体)>

あ 前提事情

遺産分割が完了した後に,再度遺産分割をした

い 2重課税となる(原則)

新たな権利の移転として課税する
更正の請求はできない
→贈与・譲渡・交換としての課税関係が生じる
詳しくはこちら|遺産分割が当初から無効とはならないケース(2重課税あり)

う 2重課税とならない(例外)

最初の遺産分割が当初から無効であった場合
例=錯誤・詐欺・強迫・相続人の過不足
→純粋な初回の遺産分割と同様となる
→相続税の対象となる
申告済であれば更正の請求や修正申告を行う
詳しくはこちら|遺産分割が当初より無効となりうるケース(2重課税なし)
当事者間で相続税の負担分の調整を行うこともできる
詳しくはこちら|遺産分割未了時点で暫定的な相続税申告をする方法と事後的処理
※東京弁護士会弁護士研修センター運営委員会『弁護士専門研修講座 相続関係事件の実務』ぎょうせい2015年p130

2 2重課税となる遺産分割のやり直しの典型例

2重の課税が生じるような遺産分割のやり直しが行われる典型的な経緯を紹介します。
当初の遺産分割の時には想定していなかったことが生じたケースということです。
いずれも,遺産分割をやり直すという発想はとても自然なものです。
しかし,税務上はとても大きな負担となってしまうのです。

<2重課税となる遺産分割のやり直しの典型例>

あ 事後的な価値の変動

遺産分割が完了した
その後,相続財産の価値に変動が生じて不公平となった
例=土地の価値の急激な下落

い 代償金の不払い

代償分割の遺産分割が完了した
代償金の支払が行われない

う 遺産の過不足

遺産分割の対象に遺産以外の財産が含まれていた
遺産分割の対象となっていなかった遺産が発覚した

え 調整のための遺産分割やり直し

『あ〜う』のような事情が生じた
利害を調整するために遺産分割内容を変更する
→新たな権利の移転として課税する
詳しくはこちら|遺産分割が当初から無効とはならないケース(2重課税あり)

3 遺産分割の有効性による課税の違いと判断方法

以上の説明のように,最初の遺産分割の有効性によって,やり直した遺産分割の課税の扱いが違ってきます。
そこで,最初の遺産分割が当初から無効だったのかどうかが非常に重要となります。
これについては,私法上の判断に準拠するというルールがあります。

<遺産分割の有効性による課税の違いと判断方法>

あ 初回の遺産分割の有効性と課税の関係
初回の遺産分割の有効性 課税
当初から無効 2重の課税は生じない
有効(瑕疵なし) 2重の課税が生じる
い 無効の判断の方法

税務上,遺産分割の無効かどうかを判断する方法について
→私法(民法)上の認定(判断)に準拠する
詳しくはこちら|私法の法律関係を前提として課税する(私法関係準拠主義)

4 遺産分割内容の不備による過重な課税の予防

遺産分割のやり直しは,状況によっては非常に大きな2重の課税を生じます(前記)。
そこで,最初の遺産分割の内容に不備がないようにしておくことが想定外の課税を防ぐ方法となります。

<遺産分割内容の不備による過重な課税の予防>

あ 避けるべきリスク

遺産分割の内容に不備があった場合
→遺産分割のやり直しが必要となる
→2重の課税が生じることにつながる

い 遺産分割協議・調停における予防策

遺産分割の協議・調停の段階において
慎重に合意(提案)内容を検討・判断すべきである

う 遺産分割審判における予防策

遺産分割の審判の段階において
課税関係に配慮して主張を組み立てるべきである