【『相続人全員』ではない参加者による遺産分割の有効性(基本)】

1 遺産分割協議×成立要件|全員の同意が必要
2 参加者が欠落した遺産分割の有効性
3 参加者欠落の具体的状況と遺産分割の有効性(概要)
4 遺産分割の当事者と登記(共有物分割との比較)
5 遺産分割協議×相続人以外の参加|有効性
6 n次相続×遺産分割協議|解釈論

1 遺産分割協議×成立要件|全員の同意が必要

遺産分割協議の成立のための基本的な要件をまとめます。

<遺産分割協議×成立要件|全員の同意が必要>

あ 意思決定方法

共同相続人全員が合意すれば成立する
『過半数』『多数決』ではない

い 解釈論

条文上の明確な規定はない
性質上当然のことである

う 『共同相続人』|用語の意味

復数の『相続人』という意味である

このように『全員の意見が一致すること』が要求されます。
1人だけでも『反対』があると全部が不成立となります。
なお,一部の財産についてだけ合意する,ということもあります。
この場合,合意した財産だけ『遺産分割が完了』となります。
詳しくはこちら|遺産分割×遺産の一部|遺産の欠落|第n次分割・余りを残さない工夫

2 参加者が欠落した遺産分割の有効性

遺産分割協議に『参加者が不足していた』ということもあります。この場合は,遺産分割は原則的に無効となります。

<参加者が欠落した遺産分割の有効性>

あ 全員参加(参考)

『共同相続人』全員が参加し合意した場合
→遺産分割協議は有効に成立する

い 欠落者あり

『共同相続人』の一部が協議に参加しなかった場合
→原則として遺産分割協議は無効となる
事情によっては例外的に有効となることもある

3 参加者欠落の具体的状況と遺産分割の有効性(概要)

遺産分割に参加者が欠落するケースはよくあります。原則的に遺産分割は無効となりますが,救済的に有効とする民法上の規定や解釈もあります。
これについては別に詳しく説明しています。
詳しくはこちら|参加者が欠落した遺産分割の具体的状況と有効性

4 遺産分割の当事者と登記(共有物分割との比較)

参考として『共有物』分割では,参加するためには『登記』が必要です。この点『遺産』分割では登記は不要です。この比較をまとめておきます。

<遺産分割の当事者と登記(共有物分割との比較)>

あ 遺産分割の当事者と登記

ア 理論 相続は『対抗関係』ではない
遺産分割に参加する地位は『所有者』ではない
『相続人』という法的地位である
→遺産分割に参加するために共有持分の登記は必要ではない
イ 実務の傾向 実際に相続登記未了のまま遺産分割協議・調停を行う
→遺産分割完了後に合意どおりの登記を行うというケースが多い

い 共有物分割の当事者と登記(参考)

『共有持分の譲受人』と『他の共有者』は対抗関係にある
→共有物分割に参加するためには共有持分の登記が必要である
※大判大正5年12月27日
※最高裁昭和46年6月18日
詳しくはこちら|共有物分割(訴訟)の当事者(共同訴訟形態)と持分割合の特定

5 遺産分割協議×相続人以外の参加|有効性

遺産分割に『相続人以外の者』が参加するケースもあります。
実際には『後から相続人ではないことになった』ということが多いです。
このような場合の遺産分割の有効性の解釈論をまとめます。

<遺産分割協議×相続人以外の参加|有効性>

あ 前提事情

遺産分割協議に『相続人以外』の者が参加した
例;後から婚姻・養子縁組無効の判決が確定した(前記)

い 遺産分割協議・有効性

遺産分割協議自体は有効である

う 事後的解決方法

『相続人以外の者』が取得したとされていた財産
→取得・承継されない
→『未分割=遺産共有』状態となる
→再度,遺産分割が必要
=いわゆる『2次分割』である
詳しくはこちら|遺産分割×遺産の一部|遺産の欠落|第n次分割・余りを残さない工夫
※東京家裁昭和34年9月14日

6 n次相続×遺産分割協議|解釈論

遺産分割の参加者が『純粋な相続人』ではないケースもあります。
相続が連続して生じた場合にこの状態になります。
これについては別に説明しています。
詳しくはこちら|n次相続×遺産分割協議|関係の薄い者が参加→合意困難になる

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