共同親権か単独親権かの判断基準(民法819条7項)|必要的単独親権と総合考慮の二段構造

1 共同親権か単独親権かの判断基準(民法819条7項)|必要的単独親権と総合考慮の二段構造

令和6年の民法改正(令和6年法律第33号・令和8年4月1日施行)により、離婚したあとの親権者を父母の双方と定めることも、その一方だけと定めることもできるようになりました。父母の協議が調わないときや裁判離婚のときは、裁判所がどちらにするかを決めます。そのときに裁判所が従うべき基準を定めたのが、民法819条7項です。

ところが、条文を読んでも、どちらになるのかは分かりません。書いてあるのは「一切の事情を考慮しなければならない」ことと、「子の利益を害すると認められるとき」は一方に定めなければならないことの 2 つだけで、どちらも評価の言葉だからです。判断基準は、条文ではなく立法の段階で示されています。施行から日が浅く、裁判所の判断が積み上がっていないいま、実際に参照されるのはその解釈です。この記事は、それを出典で示しながら、共同と単独がどう振り分けられるのかを説明します。

親権者を誰が、いつ、どの手続で定めるのかは、別の記事で説明しています。

離婚後の親権者は誰がどう定めるのか(民法819条・765条)|協議・審判・裁判離婚・変更

単独親権と定める場合に父母のどちらを親権者とするかの判断基準は、別の記事で説明しています。

親権者指定での『子の利益』では4つの原則が基準となる

2 必要的単独親権事由があれば必ず単独親権、なければ総合考慮で共同にも単独にもなる

裁判所が親権者を定めるときに何がどう働くかを、民法819条7項での位置づけごとに整理すると次のとおりです。この表は当事務所の整理で、各行の根拠はこの記事の本文にあります。

民法819条7項での位置づけと親権者の定め

事情 親権者の定め
父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められる(1号) 父母の一方を親権者と定めなければならない(必要的単独親権)
父母が共同して親権を行うことが困難であると認められる(2号) 父母の一方を親権者と定めなければならない(必要的単独親権)
各号に当たらないが、父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められる(柱書後段の包括的な事由) 父母の一方を親権者と定めなければならない。1号・2号に準ずる程度の事由が必要と解されている
柱書後段のいずれにも当たらない 柱書前段の総合考慮へ進む。父母と子との関係・父と母との関係・その他一切の事情を子の利益のため考慮し、共同親権にも単独親権にもなり得る
父母の合意がない、高葛藤である、という事情だけがある それだけでは単独親権に決まらない。協議が調わない理由や対立の原因・背景まで含めて考慮される
総合考慮をしても、共同と単独のいずれが子の利益にかなうか決めかねる どちらかを選ぶべきものとするルールは置かれていない。子の利益の観点から最善の判断をすることになる

3 条文が定めているのは、考慮要素と必要的単独親権の2つだけ

まず、条文そのものを見ておきます。民法819条7項です。柱書は前段と後段に分かれ、前段は「子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならない」と定め、後段は「父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるとき」は「父母の一方を親権者と定めなければならない」と定めています。各号は後段に当たる場合の例示です。なお、7項が働くのは「第二項又は前二項の裁判」、つまり裁判離婚の裁判、協議に代わる審判、そして親権者の変更の裁判です。

見ていただくと分かりますが、この文言から「自分のケースは共同になるのか単独になるのか」は読み取れません。前段は考慮すべき事情を挙げるだけで、どれをどう重く見るかを書いていない。後段の「子の利益を害すると認められるとき」も、各号の「おそれ」「困難」も、いずれも評価の言葉です。条文の文言だけでは、結論は決まりません。

親権者を定めるときの考慮要素と必要的単独親権

裁判所は、第二項又は前二項の裁判において、父母の双方を親権者と定めるかその一方を親権者と定めるかを判断するに当たっては、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならない。この場合において、次の各号のいずれかに該当するときその他の父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときは、父母の一方を親権者と定めなければならない。

※民法819条7項

父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき。

※民法819条7項一号

父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動(次項において「暴力等」という。)を受けるおそれの有無、第一項、第三項又は第四項の協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき。

※民法819条7項二号

4 判断基準は立法段階の解釈にある——国会はそれを立法者の意思として扱うよう求めた

では判断基準はどこにあるのか。条文ではなく、立法の段階にあります。改正法の立案担当者による解説、法務省が施行の準備として公表した解説資料、そして国会の審議での答弁が、どの事情をどう扱うかを具体的に述べています。改正法が施行されたのは令和8年4月1日で、裁判所の判断はまだ積み上がっていません。当面、実際に参照されるのはこれらの解釈です。

この扱いは、当方が便宜上そうしているのではありません。国会は、改正法を可決する際の附帯決議で、審議で交わされた質疑を「立法者の意思に係るもの」と位置づけ、父母の協議や裁判所の判断に当たって十分に理解されるよう周知に努めることを政府と最高裁判所に求めました。以下では、この立法段階の解釈を出典で示しながら、判断の枠組みを追っていきます。

国会審議の内容を立法者の意思として周知する(附帯決議)

法務省及び最高裁判所は本改正に係る国会審議において、特に、①合意がない場合に父母双方を親権者とすることへの懸念、②親権者変更、③子の居所指定、④過去のDV・虐待の取扱いについての対応、⑤DV・虐待のおそれに関する質疑があったことを含めて、立法者の意思に係るものとして、父母の協議や裁判所における判断に当たって十分理解されるよう、その内容の周知に最大限努力を尽くすものとすること。

※牧山ひろえ/『第213回国会参議院法務委員会会議録第12号』参議院2024-05-16p30

5 民法819条7項は、前段の総合考慮と後段の必要的単独親権の二段で組み立てられている

柱書の前段と後段は、どちらが先に働くのでしょうか。立案担当者の解説は、前段を「考慮しなければならない」要素の規定、後段を「父母の一方を親権者と定めなければならない」場合の規定として、二段で読みます。解説はこの後段を「必要的単独親権」と呼んでいます。

柱書前段——子の利益のための総合考慮

新民法第 819条第7項前段は、裁判所が離婚後の親権者を判断するに当たっては、子の利益のため、父母と子との関係や父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならないこととしている。

※北村治樹編著『一問一答 令和6年民法等改正―家族法制の見直し(親権・養育費・親子交流等)』商事法務2025年p38

柱書後段——必要的単独親権

新民法第 819条第7項後段は、「父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるとき」は、裁判所は必ず父母の一方を親権者と定めなければならないこととしている。

※北村治樹編著『一問一答 令和6年民法等改正―家族法制の見直し(親権・養育費・親子交流等)』商事法務2025年p39

(1)共同親権と単独親権に原則・例外の関係はない

もっとも、改正民法が共同親権を原則としたわけではありません。離婚後の親権者をどう定めるかを、まず父母の協議に委ねる形をとっています。共同親権を原則として例外的に単独親権を認める諸外国の立法とは異なる、選択制を採ったものと評価されています。裁判所が定める場面でも、共同親権と単独親権のどちらが原則でどちらが例外という関係はないとされています。

まず父母の協議に委ねる制度

改正後民法は、離婚後の共同親権を原則とするのではなく、離婚時に共同親権とするか単独親権とするかを,まずは父母の協議に委ねることとする制度を取り入れた。

※青竹美佳稿『親権等に関する新たな規律』/『家庭の法と裁判51号』2024年8月p9

離婚後の選択的共同親権制という評価

これは、共同親権を原則とし、例外にのみ単独親権を認める諸外国の立法とも異なる独自の制度であり、「離婚後の選択的共同親権制」であると評価することができる。

※青竹美佳稿『親権等に関する新たな規律』/『家庭の法と裁判51号』2024年8月p9

原則・例外の関係はない

離婚後共同親権とするか、単独親権とするかについて、原則・例外の関係があるものではないとされている。

※東京改正家族法研究会編著『詳解 令和6年改正家族法』日本加除出版2026年p13

(2)必要的単独親権事由がなければ、総合考慮で共同か単独かを決める

二段の関係はこうなります。まず後段の必要的単独親権事由があるかどうかを見て、あれば父母の一方を親権者と定めなければなりません。なければ前段に進み、父母と子との関係、父と母との関係、その他一切の事情を子の利益の観点から総合的に考慮して、共同親権と単独親権のいずれかを定めます。

判断枠組みの全体

以上のとおり、裁判所は、父母の双方を親権者と定めるかその一方を親権者と定めるかを判断するに当たって、必要的単独親権事由があると認められる場合は、父母の一方を親権者と定めなければならず(必要的単独親権),それ以外の場合は、①「父母と子との関係」、②「父と母との関係」③「その他一切の事情」を子の利益の観点から総合的に考慮して,共同親権と単独親権のいずれを定めるかを裁量的に判断することとなる。

※東京改正家族法研究会編著『詳解 令和6年改正家族法』日本加除出版2026年p9〜10

(3)後段に当たらなければ共同親権になる、という構造ではない

ここを取り違えると、実質は共同親権が原則ということになってしまいます。後段は、必要的単独親権事由が認められない場合に必ず双方を親権者と定めることまで含意した規定ではありません。事由が認められなくても、前段の総合考慮の結果として単独親権と定めることがあります。立案担当者の解説も法務省の解説資料も、この点を明示しています。

事由が認められなくても前段の判断が残る

なお、同項後段は、これらの事由が認められない場合にはすべからく父母の双方を親権者と定めるものとすることまで含意した規定ではなく、裁判所は、これらの事由が認められない場合であってもなお、父母と子との関係や父と母との関係その他一切の事情を考慮して、子の利益の観点から判断をすべきこととなる(同項前段)。

※北村治樹編著『一問一答 令和6年民法等改正―家族法制の見直し(親権・養育費・親子交流等)』商事法務2025年p39

後段の事情がなくても単独親権と定めることができる

また、このような事情がない場合でも、裁判所は、子の利益のため、単独親権の定めをすることができる。

※父母の離婚後の子の養育に関する民法等改正法の施行準備のための関係府省庁等連絡会議『Q&A形式の解説資料(民法編)』法務省(ウェブサイト公開)令和8年4月22日改訂p10

「単独にしなければならない事情がなければ共同」ではない

単独親権にしなければならない事情がなければ共同親権となるという構造ではない。

※弁護士 池田清貴著『離婚と子どもをめぐる 令和6年家族法改正のキーポイント』ぎょうせい2025年 2月p51

(4)どちらとも決めかねるときの振り分けルールは置かれていない

では、総合考慮をしてもなお共同と単独のどちらが子の利益にかなうか決めかねるときは、どうなるのでしょうか。国会では、そのような場合に共同親権を選ぶべき、あるいは単独親権を選ぶべきといったルールはないことが確認されています。立証責任による振り分けもありません(後述の「立証責任を当事者に負わせる規定ではなく、家庭裁判所は職権で事実を調査する」)。残るのは、子の利益の観点から最善の判断をすることだけです。

判断が付かない場合のルールはない(政府参考人答弁)

どのような定めをすべきか判断が付かないという場合に、共同親権を選択すべき、あるいは単独親権を選択すべきといったルールはありませんで、あくまでも子の利益の観点から最善の判断をすることが求められることとなると考えております。

※竹内努/『第213回国会参議院法務委員会会議録第10号』参議院2024-05-09p19〜20

6 必ず単独親権としなければならないのは、子への害悪のおそれ・共同行使の困難とこれに準ずる事由

後段の必要的単独親権事由を、条文の順に見ていきます。解説は、柱書後段を(A)「次の各号のいずれかに該当するとき」と(B)「その他の父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるとき」の2つに分けたうえで、(B)を包括的な事由、各号をその例示と位置づけています。1号は親子の関係に着目した事由、2号は父母の関係に着目した事由で、いずれも例示ですから、各号に当たらなくても後段に当たることがあります。

包括的な事由と、その例示としての各号

必要的単独親権事由のうち、(B)「その他の父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるとき」が包括的な事由とされており、(A)「次の各号のいずれかに該当するとき」の具体的内容である「父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき」(1号)及び「父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき」(2号)が、その例示と位置付けられている。

※東京改正家族法研究会編著『詳解 令和6年改正家族法』日本加除出版2026年p9

(1)1号——父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれ

1号は、父母の一方が子の心身に害悪を及ぼすおそれがある場合には、その親を親権者と定めることによって子の利益が害されることを防ぐため、その親以外の親だけを親権者と定めるべきだという考え方に基づくものです。典型は子に対する虐待のおそれですが、それに限られず、親権喪失事由や親権停止事由がある場合、これらに準ずるような事由がある場合も含まれ得ると解されています。

親子の関係に着目した事由

民法819条7項1号の「父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき」は、親子の関係に着目した必要的単独親権事由であり、父母の一方が子の心身に害悪を及ぼすおそれがある場合は,当該親を親権者と定めることにより子の利益が害されることを防止するため、当該親以外の親のみを親権者と定めるべきであるから、必要的単独親権事由とされたものと考えられる。

※東京改正家族法研究会編著『詳解 令和6年改正家族法』日本加除出版2026年p10

虐待のおそれ・親権喪失事由・親権停止事由

典型的には、子に対する虐待のおそれがある場合が考えられるが、それ以外にも、親権喪失事由(父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するとき・民法834条)又は親権停止事由(父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するとき・民法834条の2)がある場合や、これらに準ずるような事由がある場合も含まれ得ると考えられる。

※東京改正家族法研究会編著『詳解 令和6年改正家族法』日本加除出版2026年p10

(2)2号——父母が共同して親権を行うことが困難

2号は、父母の一方が他方から暴力等を受けるおそれの有無、親権者の定めについての協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるときを定めています。親権の共同行使は父母間の協議を前提とするので、その協議が実質的に困難になる場合を拾う趣旨です。およそ共同して子の養育に関する意思決定を行うことが困難であるような場合がこれに当たり、暴力等がなくても、協議が調わない理由の内容によっては該当し得ると解されています。

父母の関係に着目した事由

民法819条7項2号の「父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれの有無、第一項、第三項又は第四項の協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき」は、父母の関係に着目した必要的単独親権事由であり、父母の一方が他方から暴力を受けるおそれがあるなどの場合は、親権の共同行使の前提となる父母間の協議を行うことが実質的に困難になることから、必要的単独親権事由とされたものと考えられる。

※東京改正家族法研究会編著『詳解 令和6年改正家族法』日本加除出版2026年p10

およそ共同して意思決定を行うことが困難な場合

どのような場合に「父母が共同して親権を行うことが困難である」と認められるかは、個別具体的な事情に応じて判断すべきものであるが、一般論としては、父母の協議が調わない理由等を考慮し、およそ共同して子の養育に関する意思決定を行うことが困難であるような場合には、これに当たると考えられる

※北村治樹編著『一問一答 令和6年民法等改正―家族法制の見直し(親権・養育費・親子交流等)』商事法務2025年p46

協議が調わない理由から該当し得る場合

父母の一方又は双方が、虚言や重大な約束違反を繰り返す、他方の親の人格を否定する言動を執拗に繰り返す,正当な権利行使の範囲を明らかに超えて濫用的な裁判手続の申立てを繰り返すなど,将来的にも最低限の協力関係の構築すら望めず、親権の共同行使の前提となる父母間の協議を適切に行うことがおよそ期待できない場合も、本事由に該当し得ると解される。

※東京改正家族法研究会編著『詳解 令和6年改正家族法』日本加除出版2026年p11

(3)害悪も暴力等も、身体的なものに限られない

1号の「害悪」も2号の「暴力等」も、条文は「心身」に向けられたものと書いています。身体的な虐待やDV(配偶者からの暴力)に限られず、精神的、経済的、性的なものを含みます。父母が互いに話し合うことができない状態にあるために親権の共同行使が困難になっている場合も、2号に当たることがあるとされています。

精神的・経済的・性的な虐待やDVを含む

また、同項各号にいう害悪や暴力等は、「心身」に向けられたものであることを対象としており、身体的なものに限られるものではなく、精神的、経済的、性的な虐待やDVなどを含むものである。

※北村治樹編著『一問一答 令和6年民法等改正―家族法制の見直し(親権・養育費・親子交流等)』商事法務2025年p41

話し合うことができない状態も要件に当たり得る

したがって、身体的DVだけでなく、精神的DV、経済的DV、性的DV等によって、父母が互いに話し合うことができない状態にある場合等、親権の共同行使が困難な場合も、この要件に当てはまることがあると考えられる。

※父母の離婚後の子の養育に関する民法等改正法の施行準備のための関係府省庁等連絡会議『Q&A形式の解説資料(民法編)』法務省(ウェブサイト公開)令和8年4月22日改訂p10

(4)各号は例示で、これに準ずる程度の事由も後段に当たる

1号・2号は、柱書後段の「父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるとき」の例示です。裁判所が単独親権と定めなければならない場合を各号に限る趣旨ではありません。もっとも、必要的単独親権事由が認められれば、ほかにどのような事情があっても単独親権になります。そのため、各号に当たらないまま包括的な事由に当たるというためには、1号・2号に準ずる程度の事由が必要だと解されています。具体的にどのような場合がこれに当たるかは、今後の事例の集積を待つことになります。

各号は限定列挙ではない

また、新民法第 819条第7項各号は、裁判所が単独親権の定めをしなければならない場合を限定する趣旨ではなく、裁判所は、その他の事情により父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときは、父母の一方を親権者と定めなければならない(同項後段)。

※北村治樹編著『一問一答 令和6年民法等改正―家族法制の見直し(親権・養育費・親子交流等)』商事法務2025年p39

各号に当たらない場合の包括的な事由

民法819条7項1号又は2号に該当しない場合においても、共同親権と定めることにより「子の利益を害すると認められるとき」には、父母の一方を親権者と定めなければならない(民法819条7項柱書後段)。

※東京改正家族法研究会編著『詳解 令和6年改正家族法』日本加除出版2026年p11

1号・2号に準ずる程度の事由が必要

必要的単独親権事由は、それが認められた場合は、他にどのような事情があっても単独親権を定めることになるから,一定の重大な事情、すなわち,民法819条7項1号又は2号に準ずる程度の事由が認められる必要があると考えられる。

※東京改正家族法研究会編著『詳解 令和6年改正家族法』日本加除出版2026年p11

(5)「おそれ」の有無は、基礎付ける事実と否定する事実の双方を総合して判断される

1号・2号の「おそれ」とは、具体的な状況に照らして、そのような害悪や暴力等を及ぼす可能性があることをいいます。その有無は、それを基礎付ける方向の事実と、それを否定する方向の事実の双方を総合して判断されます。過去に虐待やDVがあったことは「おそれ」を基礎付ける重要な事実になりますが、医師の診断書のような客観的な証拠がなければ認められないというものでもありません。逆に、虐待やDVが主張されても、総合的な判断の結果として「おそれ」があるとは認められず、双方を親権者と定めることもあり得ます。

総合的に考慮して判断される(政府参考人答弁)

このおそれにつきましては、裁判所において個別の事案ごとに、それを基礎づける方向の事実とそれを否定する方向の事実とが総合的に考慮されて判断されることとなると考えております。なお、当事者の一方がその立証責任を負担するというものではありません。

※竹内努/『第213回国会衆議院法務委員会会議録第6号』衆議院2024-04-02p3

過去の虐待・DVは「おそれ」を基礎付ける重要な事実

父母の一方が過去に虐待やDVをしたという事実は、今後の虐待等の「おそれ」を基礎付ける方向の重要な事実であり、新民法第 819条第7項各号の「おそれ」が肯定される方向に傾く大きな考慮要素となると考えられる。

※北村治樹編著『一問一答 令和6年民法等改正―家族法制の見直し(親権・養育費・親子交流等)』商事法務2025年p42

診断書のような客観的証拠がなくても判断される

新民法第819条第7項各号の「おそれ」の判断においては、個別の事案ごとに、それを基礎づける方向の事実とそれを否定する方向の事実とが総合的に考慮されることとなり、医師の診断書のような、過去にDVや虐待があったことを裏付ける客観的な証拠の有無に限らず、諸般の状況が考慮されることになる。

※父母の離婚後の子の養育に関する民法等改正法の施行準備のための関係府省庁等連絡会議『Q&A形式の解説資料(民法編)』法務省(ウェブサイト公開)令和8年4月22日改訂p11

(6)立証責任を当事者に負わせる規定ではなく、家庭裁判所は職権で事実を調査する

819条7項は、各考慮要素について当事者の一方に立証責任を負わせる規定ではありません。たとえばDVのおそれがあるという主張を裏付ける事実が証明されなかったからといって、その反対の主張(DVのおそれがないこと)が採用されるというルールも置かれていません。家事審判の手続では、まずは当事者が裁判資料を提出するのが通例ですが、資料の収集は当事者だけに任されているわけではなく、家庭裁判所が職権で事実の調査をします。双方とも自己の主張を直接裏付ける事実を証明するに至らない場合でも、裁判所は諸事情を総合的に考慮して、子の利益の観点から最善の判断をすることが期待されることになります。

事実の調査及び証拠調べ等

家庭裁判所は、職権で事実の調査をし、かつ、申立てにより又は職権で、必要と認める証拠調べをしなければならない。

※家事事件手続法56条1項

各考慮要素について立証責任を負わせる趣旨ではない

この点は、新民法第819条第7項に規定されている各考慮要素についても同様であり、同項は、当事者の一方に各考慮要素についての立証責任を負わせる趣旨のものではない。

※北村治樹編著『一問一答 令和6年民法等改正―家族法制の見直し(親権・養育費・親子交流等)』商事法務2025年p40

7 必要的単独親権事由がないときは、前段の総合考慮で決まる

必要的単独親権事由が認められない場合は、前段の総合考慮に進みます。考慮するのは、父母と子との関係、父と母との関係、その他一切の事情で、いずれも子の利益のために考慮されます。この総合考慮は、父母双方が離婚後も適切な形で子の養育に関わりその責任を果たすことが子の利益の観点から重要だという理念を前提としたうえで、個別具体的な事情に即して子の利益を最優先に判断すべきだという考え方に基づくものです。

(1)父母と子との関係——従前の養育の責任と、子の心情・意向

父母と子との関係は、父母側の事情と子側の事情に分けて検討することが考えられています。父母側では、従前の親権行使の態様や子の利益に配慮する姿勢の有無から、その親が子の利益のために親権を行使することができるかを見ます。子を父母間の紛争に巻き込まないための配慮に欠けていないか、養育費を支払うなど親としての責務を果たしてきたかも対象になります。子側では、父母に対する子の心情や、今後の親権行使についての子の意向が対象になります。子の意見を考慮要素として条文に明記することは見送られましたが、これは考慮しないという趣旨ではなく、「父母と子との関係」や「その他一切の事情」として考慮されます。

養育費の支払のような責任を果たしてきたか

「父母と子との関係」として考慮すべき事情は個別具体的な事情によって様々であると考えられるが、一般論としては、例えば、父母の一方が養育費の支払のような子の養育に関する責任をこれまで十分に果たしてきたかも、重要な要素の1つであると考えられる

※北村治樹編著『一問一答 令和6年民法等改正―家族法制の見直し(親権・養育費・親子交流等)』商事法務2025年p38

従前の親権行使の態様と子への配慮

父母側の事情については、従前の親権行使の態様や子の利益に配慮する姿勢の有無等を考慮し,親が子の利益のために親権を行使することができるかを検討することになると考えられる。

※東京改正家族法研究会編著『詳解 令和6年改正家族法』日本加除出版2026年p12

子の心情と今後の親権行使についての意向

子側の事情については、父母に対する子の心情や今後の親権行使についての子の意向等が考慮の対象になり得る。

※東京改正家族法研究会編著『詳解 令和6年改正家族法』日本加除出版2026年p12

(2)父と母との関係——求められるのは最低限の意思疎通で足りる

父と母との関係では、父母が、父母の関係と親子関係とを切り分けて、子の利益のために協力できる関係にあるか、あるいはそのような関係の構築が期待できるかを見ます。ここでいう協力関係は、頻繁な連絡や友好関係まで求めるものではありません。夫婦関係が破綻した父母に緊密な関係を望むのは多くの事案で困難だという前提に立ち、親権の共同行使のために最低限必要な意思疎通ができれば足りるとされています。第三者を介して意思疎通をする程度の関係であっても、安定的なやり取りができているのであれば、協力関係を否定すべきではない場合があるとされています。

協力できる関係にあるか、その構築が期待できるか

父と母との関係については、親権の共同行使に当たっては父母間に共同行使のための協議や一定の協力関係が求められることから、父母が、父母の関係と親子関係とを切り分け、子の利益のために協力できる関係にあるか、あるいはそのような関係の構築が期待できるかを検討することになると考えられる。

※東京改正家族法研究会編著『詳解 令和6年改正家族法』日本加除出版2026年p12

人格尊重義務・協力義務の遵守と平穏な意思疎通

また、「父と母との関係」として考慮すべき事情も個別具体的な事情によって様々であると考えられるが、一般論としては、例えば、父母相互の人格尊重義務や協力義務(新民法第817条の12第2項参照)を遵守してきたかに加えて、父母が平穏にコミュニケーションをとることができるか、父母間の感情と親子関係を切り分け、子の利益のため話し合うことができるか、子の身上監護や財産管理に関する意思決定及びそれに基づく法定代理権の行使を適時に行うことができない事情がないかなども、考慮されることとなると考えられる

※北村治樹編著『一問一答 令和6年民法等改正―家族法制の見直し(親権・養育費・親子交流等)』商事法務2025年p38

求められるのは最低限必要な意思疎通

ここでいう父母間の協力関係とは、夫婦関係が破たんした父母に緊密な関係を望むのは多くの事案で困難であることを踏まえると、頻繁な連絡や友好関係まで求められるものではなく、親権の共同行使のために最低限必要な意思疎通ができる関係があれば足りると考えられ,事案によっては、第三者を介して意思疎通をする程度の関係性であっても、安定的なやり取りが可能な状況なのであれば、協力関係を否定すべきではない場合もあり得ると考えられる。

※東京改正家族法研究会編著『詳解 令和6年改正家族法』日本加除出版2026年p12〜13

(3)高葛藤は形式ではなく、その理由・原因・背景まで見る

父母の関係が高葛藤であることや、感情的な対立関係にあることが、そのまま2号に当たるわけではありません。そうした状態を形式的に考慮するのではなく、その理由や原因、背景事情まで含めて考慮するのが相当だとされています。国会でも、高葛藤であることや合意が調わないことのみをもって一律に単独親権とされるものではないことが答弁されています。感情的な対立があっても、互いの人格を尊重し、子の養育のための最低限のやり取りができるケースはあり得ます。

形式的に考慮するのではない

その上で、父母の関係が高葛藤であることや感情的な対立関係にあるケースでは、そのような状態を形式的に考慮するのではなく、その理由や原因、背景事情等を含めて考慮することが相当であると考えられる。

※北村治樹編著『一問一答 令和6年民法等改正―家族法制の見直し(親権・養育費・親子交流等)』商事法務2025年p38

高葛藤のみで一律に単独親権とはされない(政府参考人答弁)

他方で、本改正案では、高葛藤であることや合意が調わないことのみをもって一律に単独親権とされるものではありません。

※竹内努/『第213回国会衆議院法務委員会会議録第6号』衆議院2024-04-02p3

最低限のやり取りが可能なケース

他方で、父母間に感情的な対立があったとしても、相互の人格を尊重し、子の養育のために最低限のやり取りが可能であるというケースもあり得る。

※父母の離婚後の子の養育に関する民法等改正法の施行準備のための関係府省庁等連絡会議『Q&A形式の解説資料(民法編)』法務省(ウェブサイト公開)令和8年4月22日改訂p14

(4)対立を作り出している側に、事実上の拒否権を与えない

父と母との関係の考慮で難しいのは、協力関係が築けていない原因が一方の側にある場合です。単独親権を求める親が、相手に暴力等のおそれも協力関係を阻害する言動もないのに、あえて協力関係の構築を阻害しているという事案が考えられます。この場合に、協力関係が築けていないという結果だけを見て共同親権を否定すると、対立を作り出した側が単独親権を手に入れることになります。解説は、そのことのみをもって協力関係の構築が期待できないとするのは慎重な検討を要するとし、脚注で、そうした対応が父母間の協力義務に違反すると評価され得る場合もあるとしています。

父母相互の人格尊重・協力義務

父母は、婚姻関係の有無にかかわらず、子に関する権利の行使又は義務の履行に関し、その子の利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければならない。

※民法817条の12第2項

あえて協力関係の構築を阻害している場合

父母が協力関係を構築できていない事案であっても、専ら単独親権を求める親が、単独親権となれば自らが親権者と定められるとの想定の下、他方の親に暴力等のおそれや協力関係を阻害する言動がないにもかかわらず、あえて協力関係の構築を阻害しているような場合(例えば、子と同居している親が、正当な理由なく別居親との連絡や協議を拒絶し、父母間の協力関係が構築できないとして単独親権を主張している場合),そのことのみをもって協力関係の構築が期待できないとするのは、子の利益の観点からみて慎重な検討を要すると考えられる

※東京改正家族法研究会編著『詳解 令和6年改正家族法』日本加除出版2026年p13

協力義務違反と評価され得る場合(脚注)

1) このような場合には、父母間の協力義務(民法817条の12第2項)に違反するものと評価され得る場合もあると考えられる。

※東京改正家族法研究会編著『詳解 令和6年改正家族法』日本加除出版2026年p13

(5)合意がないことだけで単独親権にはならないが、双方が強く争い続ければ2号に当たり得る

立案の過程では、裁判所が双方を親権者と定めることができるのは父母の合意があるときに限るべきだという意見もありました。これを採ると、一方が理由を問わず単独親権を主張するだけで共同親権が封じられ、その一方に事実上の拒否権を与えることになります。改正法はこの立場を採らず、協議が調わない理由等の事情を考慮して実質的・総合的に判断すべきものとしました。もっとも、審理の終結に至る段階まで双方が単独親権を強く主張し続ける事案では、その理由や経過から、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められることもあると考えられています。

合意がないことのみで一律に許さないのは子の利益に反する(法務大臣答弁)

しかし、父母の協議が調わない理由には様々なものが考えられます。したがって、合意がないことのみをもって直ちに父母双方を親権者とすることを一律に許さないのは、かえって子の利益に反する結果となりかねない。

※小泉龍司/『第213回国会衆議院法務委員会会議録第8号』衆議院2024-04-05p4

合意を要件にすると一方に「拒否権」を与えることになる

このような意見を採用すると、父母の一方が自らを単独の親権者と定めることを主張した際には、その理由の如何を問わず、裁判所が離婚後の父母双方を親権者と定めることができなくなる結果として、父母の一方に「拒否権」を付与することとなる。

※北村治樹編著『一問一答 令和6年民法等改正―家族法制の見直し(親権・養育費・親子交流等)』商事法務2025年p44

双方が単独親権を強く主張し続ける事案

もっとも、例えば、家事審判の審理終結や人事訴訟の口頭弁論終結に至る段階においても、父母がいずれも単独親権と定めることを強く主張する事案においては、なお父母間の感情的な対立が大きく、その理由や経過等を考慮すると、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められることもあるのではないかと考えられる。

※北村治樹編著『一問一答 令和6年民法等改正―家族法制の見直し(親権・養育費・親子交流等)』商事法務2025年p48

(6)親子の関係に重要な事情がない事案では、協力関係の有無が中心になる

父母と子との関係と、父と母との関係のどちらに重みが置かれるかは、事案によります。共同親権と単独親権のいずれを定めるかの判断は、親権を共同して行使すべきかどうかの判断ですから、父母の従前の親権行使の在り方や子の意向・心情といった親子の関係について重要な事情がない事案では、父母間に子の利益のために親権を共同行使し得る協力関係があるかどうかが、判断の中心になるとされています。

協力関係の有無を中心に考慮する

共同親権と単独親権のいずれを定めるかの判断は、親権を共同して行使すべきか否かを判断するものであることからすれば、父母の従前の親権行使の在り方や子の意向・心情といった親子の関係について重要な事情がない事案においては、父母間における「子の利益のために親権を共同行使し得る協力関係」の有無を中心に考慮することとなると考えられる。

※東京改正家族法研究会編著『詳解 令和6年改正家族法』日本加除出版2026年p13〜14

(7)判断の基準時は、審理終結時・口頭弁論終結時

2号の判断は、離婚後の親権行使が困難になるかどうかを予測的に評価する面を含みます。それでも基準時は将来ではなく、家事審判の審理終結時、人事訴訟の口頭弁論終結時です。当初は高葛藤であっても、調停手続の過程で感情的な対立が解消・緩和されれば、その関係性の変化も考慮されます。このことは2号に限らず、819条7項の判断全般に妥当すると考えられています。

予測的な評価を含むが、基準時は終結時

新民法第819条第7項第2号の「父母が共同して親権を行うことが困難である」と認められるかどうかの判断においては、離婚後における親権行使の困難性を予測的に評価するという判断を含み得るが、裁判所は、家事審判の審理終結時や人事訴訟の口頭弁論終結時を基準時として、その時点において認められる事情を基礎としてその判断をすることとなると考えられる

※北村治樹編著『一問一答 令和6年民法等改正―家族法制の見直し(親権・養育費・親子交流等)』商事法務2025年p47

8 父母の合意がなくても双方を親権者と定めることが子の利益にかなう場合

では、父母の合意がないのに双方を親権者と定めることが子の利益にかなうのは、どのような場合でしょうか。立案担当者の解説は5つのケースを挙げています。実務家の解説は、審判や判決で共同親権が命じられる典型例として、親権については父母間で合意があるものの、財産分与など他の論点で判決を得る必要がある場合を挙げ、合意またはその素地がある場合には共同親権が選択される可能性が十分にあるとしています。

立案担当者が挙げる5つのケース

父母の合意がなくても父母双方を親権者と定めることが子の利益のために望ましい例としては、①同居親と子との関係が必ずしも良好ではないために、別居親が親権者としてその養育に関与することによって子の精神的な安定が図られるケース、②同居親による子の養育に不安があり、関係機関による支援・関与に加え、別居親の関与があった方が子の利益にかなうケース、③父母間の感情と親子関係とを切り分けることができる父母のケース、④支援団体等を活用して子の養育について協力することを受け入れることができるケース、⑤当初は高葛藤であったり、合意が調わない状態にあったりしたが、調停手続の過程で感情的な対立が解消され、親権の共同行使をすることができる関係を築くことができるようになるケースなどが想定され得る

※北村治樹編著『一問一答 令和6年民法等改正―家族法制の見直し(親権・養育費・親子交流等)』商事法務2025年p45

典型例=親権については合意があり、他の論点で判決が必要な場合

その前提ではあるが、典型例としては、離婚訴訟において、共同親権とすることには父母間で合意があるが、財産分与など他の論点で争いがありどうしても判決を得る必要がある場合が考えられる。

※弁護士 池田清貴著『離婚と子どもをめぐる 令和6年家族法改正のキーポイント』ぎょうせい2025年 2月p53

合意やその素地がある場合

こうした意味で、父母の合意がある場合、あるいは合意の素地がある場合には、共同親権が選択される可能性が十分にあるといえるだろう。

※弁護士 池田清貴著『離婚と子どもをめぐる 令和6年家族法改正のキーポイント』ぎょうせい2025年 2月p53

9 運用の検証が宿題として残された

改正法には、DVや虐待のある事案で共同親権が定められることのないようにするための規定が置かれました。それでも学説は、法制審議会の部会が取りまとめた附帯決議にあるとおり、問題点が完全には解消されないまま課題が残っているとし、家庭裁判所に大きな期待が寄せられていることから裁判官や調査官の増員をはじめとした対応が急務だとしています。国会も、附帯決議で、施行後の運用状況を公表し、子の利益の確保の状況やDV・児童虐待の防止について不断に検証したうえで、必要に応じて法改正を含む見直しを検討することを求めました。

問題点は完全には解消されていない

改正法には問題点への対策を図る規定が盛り込まれているものの,部会が取りまとめた附帯決議にあるように、現時点では問題点は完全には解消されないまま課題が残されている。

※青竹美佳稿『親権等に関する新たな規律』/『家庭の法と裁判51号』2024年8月p15

裁判官・調査官の増員が急務

家庭裁判所に大きな期待が寄せられていることから,家庭裁判所の裁判官や調査官の増員をはじめとした対応が急務である。

※青竹美佳稿『親権等に関する新たな規律』/『家庭の法と裁判51号』2024年8月p15

施行後の運用状況を検証し、見直しを検討する(附帯決議)

施行後の本法の運用状況について公表するとともに、諸外国における子の養育に関する法制の動向等も踏まえ、本法による改正後の家族法制による子の利益の確保の状況、親権者の指定等における父母の真意の反映の程度、DVや児童虐待等を防止して親子の安全・安心を確保するものとなっているか等について不断に検証し、必要に応じて法改正を含むさらなる制度の見直しについて検討を行うこと。

※牧山ひろえ/『第213回国会参議院法務委員会会議録第12号』参議院2024-05-16p30

(1)必要的単独親権事由は狭くはないが、結果として共同親権に流れる可能性はある

もっとも、必要的単独親権事由がそれほど狭い入口ではないことは、この記事で見てきたとおりです。1号・2号は例示にすぎず、これらに準ずる程度の事由でも後段に当たり、精神的・経済的・性的な虐待やDVも含まれます。それでもなお、その事由がないと判断される事案では、結果として相当数が共同親権に流れていくのではないかという見方があります。

相当数が共同親権に流れる可能性

もっとも、単独親権にしなければならない事情はそれほど狭くはない。
それにもかかわらずそのような事情がないと判断されるのであれば、結果的に相当数が共同親権に流れていくという傾向も否定できない。
施行後の運用を注視したい。

※弁護士 池田清貴著『離婚と子どもをめぐる 令和6年家族法改正のキーポイント』ぎょうせい2025年 2月p52

10 おわりに

819条7項の判断は、二段構えの構造を踏まえることから始まります。後段の必要的単独親権事由に当たれば、ほかにどのような事情があっても単独親権です。当たらない場合は前段の総合考慮に進み、そこで共同親権にも単独親権にもなります。「後段に当たらないから共同親権」でも「合意がないから単独親権」でもありません。争点は、父母と子との関係、父と母との関係、そしてそこに現れた事情をどう評価するかに移ります。

単独親権と定める場合に父母のどちらを親権者とするかは、別の記事で説明しています。

親権者指定での『子の利益』では4つの原則が基準となる

親権者を誰が、いつ、どの手続で定めるのかは、別の記事で説明しています。

離婚後の親権者は誰がどう定めるのか(民法819条・765条)|協議・審判・裁判離婚・変更

本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

本記事の引用は、書籍・判例などの原文から範囲を選んで載せたものです。改行の位置は読みやすさのために当方で整えており、原文の改行と同じとは限りません。また、記号や外字の扱いにより、文字の一部が原文と異なって表示されることがあります。

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最判平成14年1月22日|ゴルフ会員権の預託金返還請求と弁護士法73条
上告理由としての理由不備・理由齟齬|民事訴訟法312条2項6号

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