1 子供の大学進学における養育費・婚姻費用・扶養料を判断した裁判例の集約
2 2浪+私立大学入学→大学卒業まで
3 認知した父の扶養義務→短大卒業まで
4 親の資力十分+進学了承→医科大学の卒業まで
5 親が医師→大学卒業まで
6 大学卒業まで
7 父が医師+進学に賛成傾向→医学部卒業まで
8 親権に基づく監護(としての請求)を否定
9 父が医師→4年生大学卒業時まで
10 成人までとした原審の取消・差戻
11 両親が進学希望→大学卒業まで
12 親が教育熱心→大学卒業まで
13 歯科大学に進学したが文系私立の範囲内のみ

1 子供の大学進学における養育費・婚姻費用・扶養料を判断した裁判例の集約

最近では,子供の大学の学費について,法的に親が負担する(支払う)義務であると判断される傾向が強いです。具体的には,養育費・婚姻費用・(子による)扶養料を支払う義務を大学卒業まで認めるということです。
詳しくはこちら|子供の大学進学の養育費・婚姻費用・扶養料への影響(金額加算・終期の延長)
本記事では,実際に裁判所が大学卒業までの扶養義務を判断した多くの裁判例を紹介します。
裁判例の数が多いので,裁判の時期の順で紹介します。

2 2浪+私立大学入学→大学卒業まで

子供が大学入学までに2浪したというケースです。大学卒業が2年遅くなりますが,大学卒業までの扶養料支払義務が認められました。

<2浪+私立大学入学→大学卒業まで>

あ 事案

子は2年浪人した後,私立大学に入学した
父は離婚後,別の女性と婚姻していた

い 裁判所の判断

父に大学卒業までの扶養料支払義務を認めた
※東京高裁昭和35年9月15日(子からの扶養料請求)

3 認知した父の扶養義務→短大卒業まで

婚外子は,認知によって法律上の父と子の関係が発生します。そのままでは父には親権はありませんが,扶養義務とは無関係です。つまりである以上は扶養義務があります。
子供が短大を卒業するまでの扶養義務が認められました。

<認知した父の扶養義務→短大卒業まで>

あ 事案

認知により父子関係が生じた
父は親権者ではなかった

い 裁判所の判断

父に短大卒業までの扶養料支払義務を認めた
※仙台高裁昭和37年6月15日(子からの扶養料請求)

4 親の資力十分+進学了承→医科大学の卒業まで

医学部への進学は,他の一般的な学部よりも多くの学費を要します。
このケースでは,親に十分な経済力があったため,医学部の卒業までの婚姻費用支払義務が認められました。

<親の資力十分+進学了承→医科大学の卒業まで>

子は医科大学に進学した
親の資力は十分であり,親は進学を了承している
大学卒業までの婚姻費用支払義務認めた
※大阪家裁昭和41年12月13日(婚姻費用)

5 親が医師→大学卒業まで

親が医師であったため,親には,その子供に大学教育を受けさせる義務があると判断されました。基本的に大学卒業までの扶養料支払義務が認められました。
なお,下の子(長女)はまだ浪人中,つまり,進学する大学が確定していませんでした。そこで暫定的に成年到達まで(の扶養料支払義務)にとどまりました。もちろん,その後,進学する大学が確定した時点で卒業までの扶養料支払義務が認められることが想定されています。

<親が医師→大学卒業まで>

あ 父の職業

父が医師であった

い 扶養義務の範囲

社会的地位や資力からみて,子に大学教育を受けさせることは親としての義務である
そのことは子が成人に達したことによって影響を受けるものではない

う 具体的な終期

長男は大学在学中であった
→大学卒業までの扶養料支払義務を認めた
長女は浪人中であった
→成年到達までの扶養料支払義務を認めた
※福岡高裁昭和47年2月10日(子からの扶養料請求)

6 大学卒業まで

近年では,家庭環境によっては大学進学が当然といえることが多いです。そこで一般的な傾向として,子供の大学卒業までの扶養料支払義務が認められる傾向が強いです。
そのような裁判例の1つです。

<大学卒業まで>

大学卒業までの扶養料支払義務を認めた
※東京家裁昭和50年7月15日(子からの扶養料請求)

7 父が医師+進学に賛成傾向→医学部卒業まで

父が医師であり,経済力がある上に,子供が医学部に進学することに賛成する方向性でした。
そのような事情から,医学部を卒業するまでの婚姻費用分担義務が認められました。

<父が医師+進学に賛成傾向→医学部卒業まで>

あ 事案

父は医師であった
子は医学部への入試に失敗した
父は子を激励する意味で責めた
その後,子は医学部に通学した
父は内心では医学部進学に賛成,同意していた

い 医学教育の位置づけ

子には学習能力と意欲がある
父の職業,身分,資力,収入,社会的地位によれば,父にとって,子に医学教育を授けることはその社会的身分に相応したものである

う 扶養義務の範囲(結論)

子が大学医学部を卒業して一人立ちするまでその学資金を分担費用に含める
※広島高裁昭和50年7月17日(婚姻費用)

8 親権に基づく監護(としての請求)を否定

ちょっと変わったケースです。手続としては監護処分の審判(調停)として申し立てられました。実質的な内容は子供が成年となった後の生活費(扶養)です。
裁判所は子供が成年に達した時点で親権が終了することを理由に,請求を認めませんでした。
成年に達した子供を扶養する義務を否定したものではないと思われます。
要するに,仮に子供自身が扶養料を請求するという内容の申立であれば認められたということもありえます。

<親権に基づく監護(としての請求)を否定>

あ 裁判所の判断

子が成年に達した時は母の親権が終了する
→認めなかった
※大阪高裁昭和57年5月14日(監護処分)

い 補足説明

別の請求(子による扶養料請求)であれば認められたとも考えられる

9 父が医師→4年生大学卒業時まで

父が医師であり,経済力があったことを理由に,子供の大学の学費を扶養料に含めた裁判例です。

<父が医師→4年生大学卒業時まで>

あ 親子の大学進学状況

父=医師
母=薬剤師
子(娘)2人=大学生(薬科大学)・高校生
当時は薬科大学は4年制であった(現在は6年制)

い 父に対する愛情・信頼の状況

子は父に対する愛情を欠き,父との交流を望まない状態となっていた

う 親子間の愛憎・信頼の考慮(否定方向)

未成熟子に対する扶養の程度を決定するにあたっては,親子間の愛憎や信頼の状況を,重要な要素として考慮すべきではない

え 扶養義務の範囲(結論)

家庭の経済的・教育的水準から,子らが4年制大学を卒業する年齢時まで,未成熟の段階にあるものとして,父は扶養料を負担し支払うべきである
※大阪高裁平成2年8月7日(子による扶養料請求)

10 成人までとした原審の取消・差戻

子供が成人に達した時点で,大学生でした。そこで,子供自身が父に対して扶養料を請求したケースです。
原審は,扶養料支払義務を成人までであると判断し,請求(成人以降の扶養義務)を却下しました。
これに対して抗告審では,原審の判断が不当であると判断し,差し戻しました。最終判断はしていませんが,実質的には大学卒業までの扶養義務を認めたといえるでしょう。

<成人までとした原審の取消・差戻>

あ 離婚成立

夫婦間に長女・次女が誕生した
父・母は離婚した
母が長女・次女の親権者となった

い 1回目の養育費の決定(合意)

父・母の間で養育費の合意が成立した(調停)
内容=長女・次女がそれぞれ満18歳までの養育費を支払う

う 2回目の養育費の決定(審判)

長女が私立の4年制大学に進学した
母は再度父に対して長女の学費・生活費について養育費の負担を申し立てた
審判がなされた
内容=進学費用と未払養育費の一括払い(137万6000円)及び長女が成年となる前月までの養育費(月額4万2000円)を支払う

え 扶養請求の審判の申立

父は,審判内容どおりに,長女が成人となった時に養育費の支払を打ち切った
長女が扶養請求の申し立てをした

お 原審と抗告審

原審判は子の扶養請求を却下した
抗告審は原審判を取り消して差し戻した

か 抗告審の判断(概要)

実質的に,成人以降の扶養義務を認めた
また,扶養義務の有無や内容の判断基準を示した
詳しくはこちら|子供の大学進学の養育費・婚姻費用・扶養料への影響(金額加算・終期の延長)
※東京高裁平成12年12月5日(子による扶養料請求)

11 両親が進学希望→大学卒業まで

両親ともに子供が大学に進学することを希望していたケースです。このような背景があったので,大学卒業までの扶養義務が認められました。

<両親が進学希望→大学卒業まで>

両親は,子供が大学に進学することを強く望んでいる
→大学卒業までの扶養義務を認めた
※東京地裁平成17年4月15日

12 親が教育熱心→大学卒業まで

親が教育熱心だったことを理由として,裁判所は,子供が大学を卒業するまでの学費を養育費の算定に含めました。

<親が教育熱心→大学卒業まで>

あ 親子の大学進学状況

次男は大学に進学した
両親と長男はいずれも4年制大学を卒業している
父は長男・次男の教育に熱心である
次男は中高一貫の市立の進学校を卒業している

い 扶養の終期

次男が成人に達した後も4年制大学を卒業するまでの間は,未成熟子として扱う
→両親に扶養義務がある
=監護に要する費用を両親が分担する
※大阪高裁平成21年9月3日(養育費)

13 歯科大学に進学したが文系私立の範囲内のみ

子供が歯科大学に進学したケースです。
ところで,父親の最終学歴は文系の大学卒でした。
そこで,裁判所は,歯科大学の学費の全体ではなく,4年制の文系の私立大学の学費の範囲で両親で負担することにしました。
要するに,親の学歴と同じ学歴が子供にはふさわしいというような考えが元になっています。

<歯科大学に進学したが文系私立の範囲内のみ>

あ 親子の大学進学状況

子が歯科大学に進学する時点では両親は同居していた
母の実家の援助をあてにしていた
その後,両親が別居するに至った
学費は年間483万円(月額40万円相当)であった
住居費として賃料約6万4000円を要した
父は文系の大学を卒業していた

い 扶養の内容

(父への扶養料請求について)
子の学費は父の地位,収入に比して不相応に高額である
学費と住居費の全額は扶養義務の範囲を超える
4年制の私立大学の文系を卒業するのに必要とされる程度の学費の負担義務がある
※大阪高裁平成21年10月21日(子からの扶養料請求)

本記事では,子供が大学に進学したケースにおいて,裁判所が扶養義務(養育費・婚姻費用・扶養請求)の内容を判断した裁判例を紹介しました。
実際には個別的事情や主張・立証のやり方次第で結論は違ってきます。
実際に子供の大学進学に伴う養育費・婚姻費用や扶養料(学費や生活費の支払請求)に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。