1 婚姻費用の内容
2 婚姻費用の意味と基本的解釈
3 婚姻費用の内容(含まれる費目)
4 法律上の子以外の生活費の扱い
5 出産費用の扱い
6 標準的算定方式と個々の婚姻費用の内容との関係(概要)

1 婚姻費用の内容

夫婦が別居に至ると,生活費を送金(分担)することが始まります。これを婚姻費用(分担金)といいます。
詳しくはこちら|別居中は夫(妻)に対して生活費の送金を請求できる(婚姻費用分担金)
実務ではどのような出費について相手に請求できるのか,つまり,婚姻費用の中身(内容)が問題となることがあります。
本記事では,婚姻費用に含まれる出費の内容を説明します。

2 婚姻費用の意味と基本的解釈

婚姻費用の正式な意味,つまり,民法の条文上の表記は,婚姻から生じる費用です。法的効果から逆に考えると,夫婦で負担を分担すべきような費用ということになります。
大雑把(抽象的)にいえば,婚姻生活を営むために必要な費用を広く含みます。

<婚姻費用の意味と基本的解釈>

あ 条文上の言葉

正式には(民法の条文上は)『婚姻から生じる費用』である
※民法760条

い 基本的な解釈

婚姻共同生活を営む上で必要な一切の費用である(が含まれる)
※松本哲泓著『婚姻費用・養育費の算定−裁判官の視点にみる算定の実務−』新日本法規出版2018年p3

3 婚姻費用の内容(含まれる費目)

婚姻費用に含まれる費用,つまり,夫婦で分担することになる出費の内容はとても多くのものがあります。夫婦の衣食住という生活に必要な出費を始めとして,子供の生活費や教育費,医療に要する費用や出産に要する費用,また,冠婚葬祭の費用や交際費などが挙げられます。

<婚姻費用の内容(含まれる費目)>

ア 夫婦の衣食住の費用
※東京家裁昭和37年8月27日
イ 子の監護に要する費用
未成熟子の養育費(生活費)
※大阪高裁昭和33年6月19日
子以外については否定される傾向がある(後記※1)
ウ 教育費
具体的に含まれる範囲は事情により異なる(後記※2)
エ 出産費(後記※n)
オ 医療費(治療費)
※大阪高裁昭和37年10月3日
※大阪高裁昭和42年7月10日
カ 葬祭費
キ 交際費
※松本哲泓著『婚姻費用・養育費の算定−裁判官の視点にみる算定の実務−』新日本法規出版2018年p3

4 法律上の子以外の生活費の扱い

夫婦の間の子供については,その生活費が婚姻費用(夫婦で分担する対象)になることは問題ありません。しかし,そうでない場合には問題となります。
裁判例としては,先妻の子実母の生活費も婚姻費用に含めたケースがあります。しかし,これらは扶養という意味では婚姻費用と同じですが,婚姻費用そのものではないという指摘もあります。

<法律上の子以外の生活費の扱い(※1)>

あ 先妻の子

先妻の子の生活費(養育費)について
→(夫が負担する)婚姻費用に含めた
※東京家裁昭和35年1月18日
※東京家裁昭和49年11月15日

い 同居する親

妻と同居している夫の実母の生活費について
→(夫が負担する)婚姻費用に含めた
※大津家裁昭和46年8月4日

う 反対説

本来は婚姻費用とは別の(一般的な)扶養義務(扶養料)である
※松本哲泓著『婚姻費用・養育費の算定−裁判官の視点にみる算定の実務−』新日本法規出版

5 出産費用の扱い

妊娠から出産に至るまでに,母には大きな体力的・精神的な負担がかかります。さらに,(特に難産であれば)経済的にも大きな負担がかかります。
経済的な出産のための費用はもちろん婚姻費用に含まれます。ただし,父の子ではない場合には,当然ですが,夫婦で分担するものではないので,婚姻費用には含まれないことになります。

<出産費用の扱い(※2)>

あ 原則

出産費用について
一般的には妻の出産である限り,婚姻費用に含まれる
※東京家裁昭和37年8月27日
※横浜家裁平成24年5月28日

い 例外

父子関係がないことが明白な場合には否定される
※松本哲泓著『婚姻費用・養育費の算定−裁判官の視点にみる算定の実務−』新日本法規出版2018年p4

6 標準的算定方式と個々の婚姻費用の内容との関係(概要)

以上は,婚姻費用に含まれる出費の内容の説明でした。
実際には,このような婚姻費用を夫婦でどのように分担するのか,つまり,婚姻費用分担金の金額(請求額)がいくらか,ということが問題になります。これについて原理どおりに計算すると手間がかかるので,実務では簡易算定表が使われることが多いです。これは標準的算定方式の計算結果を早見表としてまとめたものです。
詳しくはこちら|養育費・婚姻費用分担金の金額算定の基本(簡易算定表と具体例)
では,以上で説明した婚姻費用に含まれる(個々の)出費は婚姻費用の金額とは関係ないかというとそうではありません。標準的算定方式でカウントされる(考慮される)のは標準的・平均的な出費だけです。標準的な出費を超える出費については,個別的な出費を集計して上乗せして請求する(負担する)ことになります。
詳しくはこちら|養育費・婚姻費用の算定における教育費の扱い(私立学校・予備校・習い事など)
詳しくはこちら|養育費・婚姻費用の算定における住宅ローンの返済の扱い(基本)
詳しくはこちら|養育費・婚姻費用の算定における医療費の扱い(病気や怪我の治療・歯科矯正)

本記事では,婚姻費用の内容について説明しました。
実際には,個別的な事情や主張・立証のやり方次第で結論は違ってきます。
実際に婚姻費用(分担すべき出費)に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。