1 相手の家への不信と親の反対による婚約破棄の裁判例
2 婚約成立と『家』への不信・不安
3 婚約破棄の経緯
4 婚約破棄の正当の理由(違法性)の判断
5 婚約破棄に関与した親の責任の判断基準

1 相手の家への不信と親の反対による婚約破棄の裁判例

婚約が成立した後,不当に破棄されたケースでは,法的な賠償責任が生じます。
詳しくはこちら|婚約破棄の慰謝料は30〜300万円が相場だが事情によって大きく異なる
詳しくはこちら|婚約を破棄した者は出費や退職による収入減少の賠償をする(財産的損害)
本記事では,婚約破棄の理由が婚約相手の『家』への不信親の反対であったというケースの裁判例を紹介します。
婚約相手そのものではなく,『家』(家風)を理由にした婚約破棄ですが,正当化されています。

2 婚約成立と『家』への不信・不安

婚約が成立した後の結婚式の詳細な打ち合わせで問題が生じます。
婚約男性の両親に(婚約女性からみて)異常性があったのです。
すでに婚約してるとはいえ,婚約女性はとても不安になりました。

<婚約成立と『家』への不信・不安>

あ 婚約の成立

男性Aと女性Bは婚約した
A・Bは結納も終え,結婚式の日取りと場所まで決めた

い 不安の発生

A・Bとその両親が集まって結婚式の打ち合わせを行った
Bは『う』のような不安を感じた

う 不安の内容

Aの家は,独特な家風の存在を感じさせる家であり,行儀作法に細かく,見栄を張る傾向がある
Bは,今後,Aとの間で配偶者として円満な協力関係を,また,Aの母との間で姑として円満な協力関係を維持していけないのではないかと強く感じるようになった
Aとの結婚生活に入ることに対して自信を失った

3 婚約破棄の経緯

女性は強い不安をもったので,婚約の解消を申し出ました。
その後,やはり婚約解消(破棄)を撤回しました。
しかし,女性の両親は結婚に反対していました。
そこで,改めて女性は婚約を解消(破棄)しました。

<婚約破棄の経緯>

あ 婚約解消とその撤回

Bは婚約を解消したいと表明した
その後,Bは,婚約解消を取り止める気持ちになった

い 婚約女性の両親の反対

Bの父Cと母は一貫して結婚に反対していた
父CはBに対して『帰ってくるな』『両親は結婚式に出席しないかもしれない』と言った

う 再度の婚約解消

その後,Bは改めて婚約を解消する意思をAに告げた
この際,Bは『両親の反対を押し切ってまで結婚する意思はない』と言った
※東京地裁平成5年3月31日

4 婚約破棄の正当の理由(違法性)の判断

単に,親が結婚に反対しているだけでは婚約破棄は正当化されません。
詳しくはこちら|母の反対による婚約破棄→慰謝料400万円+財産的損害賠償を認めた裁判例
しかし,このケースでは,女性が婚約を維持できないと考えた根本的な原因は,婚約男性の『家』の問題(男性の親の言動)でした。
日本の風習として,結婚した後は,家族としてのつきあいが続きます。
そこで,家風を理由とする婚約破棄には正当な理由があると判断されました。
一方,婚約女性の父が反対していたことについては,婚約女性が破棄した判断に強い影響はないと判断されました。
結果的に,婚約女性もその父親も慰謝料の賠償責任を負いませんでした。

<婚約破棄の正当の理由(違法性)の判断>

あ 婚約女性の責任の判断

婚約解消の重要な原因となったのはAの母(姑)の言動である
Aが嫌いになったことが直接の原因ではない
→Bには違法性(責任)はない

い 婚約女性の父の責任の判断

CはBに対して脅迫などの不当な手段をもって婚約を解消させたわけではない
もともとBは結婚するかしないかについて気持ちが揺れ動いていた
Bが『何の迷いもなく婚姻を望んでいた・Cに断念させられた』ということはない
→Cには違法性(責任)はない
※東京地裁平成5年3月31日

5 婚約破棄に関与した親の責任の判断基準

このケースのように,婚約者の親が結婚に反対したことが婚約破棄につながるということはよくあります。
この場合に,親も婚約破棄の責任を負うことがあります。
親の責任の判断基準については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|婚約破棄・内縁破綻に関与した者への慰謝料請求(寝取った者・反対した親)

本記事は,異性との交際を要因とする婚約破棄の事例の裁判例を紹介しました。
参考になる理論がいくつか含まれています。
似ている事案があっても,細かい事情の違いによって,逆の結論となることもあります。
実際に婚約破棄の責任の有無(正当な理由)の問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。