1 婚約者を奪った異性の慰謝料賠償責任
2 婚約破棄を推奨した親の責任の判断基準
3 公序良俗に反する動機や方法の実例
4 婚約を強引に破棄させた親は慰謝料の賠償責任を負う
5 内縁の破綻に関与した者の責任の判断基準
6 内縁破綻を主導した姑の責任を認めた裁判例
7 婚約者に将来の破綻原因を与えた者の責任の判断基準
8 婚約者を寝取ったことが婚姻後に発覚した事案
9 婚約・内縁の当事者の責任と第三者の責任の関係

1 婚約者を奪った異性の慰謝料賠償責任

既婚者と性的関係をもつと不倫(不貞行為)として慰謝料の賠償責任が生じます。
詳しくはこちら|不倫相手の慰謝料の相場は200〜300万円(減額される事情もある)
このような性的関係が,既婚者の前段階の婚約者との間で行われたケースがあります。

<婚約者を奪った異性の慰謝料賠償責任>

あ 事案(婚約の成立と破棄)

男性Aと女性Bが婚約した
その後,Bは男性Cと交際(性的関係)を継続していた
このことにより,A・Bの婚約は破棄(解消)された
CはA・Bが婚約していることを知っていた

い 慰謝料の賠償責任

Aは慰謝料100万円の賠償責任を負う
Cは慰謝料30万円の賠償責任を負う
慰謝料の総額100万円のうち30万円はA・Cが連帯責任を負う
※東京地裁平成17年3月17日
詳しくはこちら|異性との交際による婚約破棄→慰謝料100万円と財産的損害賠償を認めた裁判例

結論としては,不倫と同じように,婚約者との性交渉の相手Cに,慰謝料の賠償責任が認められています。
つまり,Cは,間接的に,AとBの婚約の破棄に関与したといえるのです。
俗な言葉では婚約者を寝取った責任ということになります。
なお,CがAとBの婚約を知らなかった場合は(不倫と同様に)責任は生じません。
詳しくはこちら|不倫の慰謝料の理論(破綻後・既婚と知らないと責任なし・責任を制限する見解)

2 婚約破棄を推奨した親の責任の判断基準

婚約が成立した後に,婚約者の親が(結婚することに)反対するケースも多いです。
つまり,親が婚約破棄を推奨したという状況です。親に慰謝料の賠償責任が生じることもありえます。
これについては,裁判例が判断基準を示しています。
単に反対したこと自体では慰謝料の責任は生じません。

<婚約破棄を推奨した親の責任の判断基準>

あ 婚約解消の説得の違法性(原則)

婚約者Aが結婚を望んでいるケースにおいて
Aの親がAに対して,円満な親族の協力関係の形成が見込めないことを理由に婚約解消をするよう強く説得すること
→それだけでは違法性をもたない

い 例外的に違法となる基準

動機や方法など(後記※1)が公序良俗に反する場合
→違法性をもつ
※東京地裁平成5年3月31日

う 関与の程度の高さ(※2)

婚約成立の段階で内縁に至っていない場合
=夫婦としての生活実体が伴っていない
→違法性をもつのは,相当強いはたらきかけや干渉に限られる

え 正当な理由との関係

婚約破棄に正当な理由がある場合は違法性(慰謝料の賠償責任)はない
詳しくはこちら|婚約を破棄しても慰謝料が発生しない正当な理由の具体例や判断基準
正当な理由があれば,婚約破棄に関与した第三者の違法性(賠償責任)もない
※梶村太市ほか編『夫婦の法律相談 新・法律相談シリーズ』有斐閣2004年p27,28

前記の裁判例では,この基準を使って,結婚に反対した親には責任がないと判断しました。
もともと婚約者(子)自身が結婚は無理であると思っていて,親の反対はそれほど強いものではなかったのです。
詳しい事案の内容は別の記事で紹介しています。
詳しくはこちら|婚約相手の家族への不信と親の反対による婚約破棄→慰謝料なし

3 公序良俗に反する動機や方法の実例

婚約者の親などが,結婚に反対して婚約破棄を勧めることの動機や方法が公序良俗に反する場合は賠償責任が生じます(前記)。
実例としては,民族差別・部落差別や根拠のない噂を理由にして結婚を断念させたものについて違法性(賠償責任)が認められています。

<公序良俗に反する動機や方法の実例(※1)>

あ 公序良俗に反する結婚反対の動機

ア 差別的な理由
民族差別
※大阪地裁昭和58年3月8日
部落差別
※大阪地裁昭和58年3月28日
親の利己的なor家制度的な理由による反対
※梶村太市ほか編『夫婦の法律相談 新・法律相談シリーズ』有斐閣2004年p28,29

い 公序良俗に反する結婚反対の方法

虚偽の事実や噂を信じて,これを理由に婚姻に反対する
親の経済的優位性を利用して不当な圧力をかける
※梶村太市ほか編『夫婦の法律相談 新・法律相談シリーズ』有斐閣2004年p29

4 婚約を強引に破棄させた親は慰謝料の賠償責任を負う

婚約の後に,親が強く反対して婚約破棄を主導したというケースでは,前記の基準を前提にしても,親の責任が認められます。
実際に,婚約男性が極度の優柔不断で,親が強く反対して強引に婚約破棄を実現したケースの裁判例があります(徳島地裁昭和57年6月21日)。
結論としては,親と息子(婚約男性)が連帯して慰謝料400万円の賠償責任を負うことになりました。
さらに,購入した物品の費用や婚約相手が退職したことによる減収分(逸失利益)も含めて賠償責任が認められました。
事案と裁判所の判断の詳しい内容は別の記事で紹介しています。
詳しくはこちら|母の反対による婚約破棄→慰謝料400万円+財産的損害賠償を認めた裁判例

5 内縁の破綻に関与した者の責任の判断基準

以上の説明のように,婚約は法的に保護されます。男女の関係で保護されるものとして,ほかに内縁の関係があります。
内縁を破綻させることに第三者が関わった場合,この第三者にも賠償責任が生じます。

<内縁の破綻に関与した者の責任の判断基準>

内縁の当事者でない者であっても
内縁関係に不当な干渉をしてこれを破綻させた場合
→不法行為の損害賠償の責任を負う
※最高裁昭和38年2月1日

婚約の破棄に関わった者と似ている扱いです。
ただし,(単なる)婚約の状況と違って,内縁は夫婦としての生活実体ができあがっています。
そこで,第三者の関与が違法となるハードルは(婚約破棄への関与よりも)低いです(前記※2)。

6 内縁破綻を主導した姑の責任を認めた裁判例

実際の事案について,裁判所が前記の判断基準を使って内縁を破綻させた者の責任の判断をした内容を紹介します。

<内縁破綻を主導した姑の責任を認めた裁判例>

あ 内縁関係

男性Aと女性Bが内縁関係であった
A・Bは,Aの母(姑)Cと同居していた

い 姑の関与

CはBに対して,怠惰であるとか,家風に合わないなどと言った
Bを婚家に居づらくした
Bは実家に戻った
その後も,Cは『恥をかかせた』と言ってBが婚家に入ることを許さなかった

う 姑の責任の判断

Bを追い出したことについて,Bは主導的役割を行った
Bの言動は社会観念上許容される限度をこえている
=内縁関係に対する不当な干渉である
→不法行為として賠償責任が生じる

え 慰謝料の判断(結論)

慰謝料は15万円とする
(B・Cは連帯して賠償責任を負う)
※最高裁昭和38年2月1日

男性の母が内縁の破綻に関与した程度は大きいといえます。
そこで,母も含めて(当時の金額で)慰謝料15万円の賠償責任が認められました。

7 婚約者に将来の破綻原因を与えた者の責任の判断基準

改めて婚約に第三者が関与して破綻させたテーマに戻ります。
婚約自体は破棄されず,一応婚姻まではたどり着いた場合でも,第三者が悪影響を与えた行為に責任が生じることがあります。
婚約中に起きた事情でも,将来の婚姻関係が破綻することにつながることがあるからです。

<婚約者に将来の破綻原因を与えた者の責任の判断基準>

あ 判断基準

婚約中の当事者の一方or両方に対して
第三者が将来の婚姻が破綻するような原因を与えた場合
→違法性がある
=損害賠償責任を負う

い 具体例

第三者が婚約者の一方と性的関係をもった
→発覚が婚姻後・離婚には至っていないケースでも責任は生じる
※大阪高裁昭和53年10月5日

8 婚約者を寝取ったことが婚姻後に発覚した事案

前記の将来の破綻原因を与えたといえる具体例は婚約者との性的関係です。
要するに,最初は隠していたけれど,婚約者が婚姻(結婚)した後に発覚したというケースです。
裁判所は,離婚(破綻)には至っていない事例についても,性的関係の相手に賠償責任を認めました。
夫婦が破綻するおそれがあるだけでも十分に違法性が認められると判断されるのです。

<婚約者を寝取ったことが婚姻後に発覚した事案>

あ 婚約の成立

男性Aと女性Bが婚約した

い 婚約者の浮気的な性的関係

男性Cは3回にわたり女性Bと性関係を結んだ
Cは,A・Bの婚約と数か月語の婚姻の予定を知っていた

う 性的関係の隠蔽

C・Bはその後,Aに対しては事実を偽って性的関係を否定した
Aはこれを信じた

え 結婚(婚姻)

AとBは婚姻した

お 過去の性的関係の発覚

その後,Aは,CとBの性的関係を知った
Aは強い精神的打撃を受けた
A・Bの夫婦間に不和が生じた
現在なお婚姻は継続しているが,破綻するおそれが十分にある

か 過去の性的関係の責任

CとBは共同してAの地位を違法に侵害した
慰謝料は50万円とする
(C・Bは連帯して賠償責任を負う)
※大阪高裁昭和53年10月5日

9 婚約・内縁の当事者の責任と第三者の責任の関係

以上のように,婚約や内縁の当事者以外の者が破綻(破棄)の責任を負うことがあります。
当然,当事者である婚約者や内縁の夫や妻も責任を負います。
この2者の責任は連帯責任となります。
婚約や内縁の当事者よりも第三者の方が慰謝料の金額が低くなる傾向があります。
しかし,第三者の関与の程度が大きい場合は,当事者と同じ金額の慰謝料となることもあります。

本記事では,婚約破棄や内縁の破綻に関与した第三者の責任について説明しました。
実際のケースでは,第三者が関与した程度をどのように評価(判断)するのか,について大きく意見が対立することが多いです。
主張や立証のやり方次第で結論が大きく違ってきます。
実際に婚約破棄や内縁の破綻に当事者以外が関与した問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。