【養育費や婚姻費用の増減額の手続の種類(家事審判・請求異議・執行停止)】

1 養育費や婚姻費用の増減額の手続(請求異議・執行停止)
2 養育費や婚姻費用の増減額の家裁の調停・審判
3 養育費・婚姻費用の増減額の効果発生と手続との関係
4 調停・審判による養育費を合意で変更することの可否
5 養育費・婚姻費用変更の審判に伴う執行停止の仮処分の可否

1 養育費や婚姻費用の増減額の手続(請求異議・執行停止)

養育費や婚姻費用分担金をいったん決めた後でも,状況が変わった場合,増減額の請求ができます。
詳しくはこちら|養育費や婚姻費用の増減額請求の基礎的理論(法的根拠)
金額を変更するには,当事者が合意するか,家庭裁判所の審判が必要になります。
この点,例えば差押を受けたケースで減額請求をしようと思うと,どのような手続でどのように差押を回避するかという問題が生じます。
ほかにも執行を回避する手続などを活用する状況もあります。
本記事では,このような,養育費や婚姻費用の変更の手続に関する問題について説明します。

2 養育費や婚姻費用の増減額の家裁の調停・審判

まず,当事者の両方が合意すれば,養育費や婚姻費用の金額が変更できます(後記)。
話し合いが決裂して合意できない場合は,家庭裁判所の調停・審判を申し立てることになります。
家事事件手続法では別表第2事件として分類しています。
詳しくはこちら|家事事件(案件)の種類の分類(別表第1/2事件・一般/特殊調停)
最終的に家庭裁判所が審判として増減額を認めるかどうか,認める場合は変更の内容(金額や始期)を決定します。

3 養育費・婚姻費用の増減額の効果発生と手続との関係

養育費や婚姻費用の増減額が決まるのは,合意するか家庭裁判所の審判を得た時です。
そこで,状況が大きく変化しても,合意も家裁の審判の申立もしていないと,以前決まった金額は変わりません。
差押を受けた場合でも,すでに状況が変化していることを理由にして差押の金額を下げるということはできないのです。

<養育費・婚姻費用の増減額の効果発生と手続との関係>

あ 原則=変更の手続が必要

増減額する合意or審判がなされない限り,養育費(婚姻費用)は変更されない
例外もある(え)

い 変更する手続の種類

養育費(婚姻費用)の増減額の効果を発生する手続は
→合意・家庭裁判所の調停・審判である

う 請求異議訴訟における増減額の主張(否定)

養育費(婚姻費用)に関する強制執行に対して
事情変更があったことを理由として請求異議の訴えを提起できない
※冨永忠祐編『改訂版 子の監護をめぐる法律実務』新日本法規出版2014年p172;養育費について

え 手続なしでの養育費請求権の変更(消滅)

扶養義務の存否に関わる基本的な身分関係が変更or消滅した場合
例=子が死亡した
→合意・審判がなくても,実体法上,養育費請求権は消滅する
※大阪高裁昭和52年2月3日

4 調停・審判による養育費を合意で変更することの可否

最初に養育費や婚姻費用の金額を決めたのが,家庭裁判所の調停や審判であったケースでは,その後,当事者の合意だけで金額の変更ができるかどうか,という問題があります。
つまり,当初,裁判所の処分として行ったのだから,この処分の効力をなくす(変更する)のは裁判所の処分としてしかできない,という形式論です。
この理論は形式的すぎて不合理です。
当事者が明確に金額を変える合意をした場合は,有効として扱われます。

<調停・審判による養育費を合意で変更することの可否>

あ 統一的な見解なし

調停や審判により決定された養育費(婚姻費用)を
合意により変更できるかどうかについて
→統一的な見解はない

い 肯定する裁判例

具体的な権利内容を変更する合意がなされた場合
→変更を認める
=合意内容に基づく請求異議の訴えができる
※大阪高裁昭和52年2月3日

5 養育費・婚姻費用変更の審判に伴う執行停止の仮処分の可否

養育費や婚姻費用について差押がされた場合,これに対する請求異議訴訟として減額請求をすることはできません(前記)。
養育費などの減額請求を扱う裁判所の手続は家裁の調停・審判だけだからです。
では,家裁の調停(審判)を申し立てて,それと一緒に審判前の保全処分として執行停止を行えばよい,という発想になります。
詳しくはこちら|審判前の保全処分の基本(家事調停・審判の前に行う仮差押や仮処分)
これについては,できる,できないという見解に分かれています。
主張や立証の程度で裁判所の判断が変わることもあるといえます。

<養育費・婚姻費用変更の審判に伴う執行停止の仮処分の可否>

あ 執行停止の仮処分の発想(前提)

養育費・婚姻費用(扶養料)の変更・取消の審判の申立があった場合
義務者のための臨時必要な処分として
家庭裁判所は,債務名義の執行停止を命じることができるか
債務名義=原調停・審判

い 規定の有無(なし)

『あ』に関する明示的な規定はない

う 肯定する見解

審判前の保全処分として執行停止を認める見解もある
※広島高裁松江支部昭和57年3月25日

え 否定する見解

執行停止の仮処分を否定する見解もある
※長崎家裁昭和57年11月16日

本記事では,養育費や婚姻費用分担金の増減額の請求の手続について説明しました。
一般の方には少し高度な内容だと思いますが,実際のトラブルの解決では,まさにこのような高度な手法を駆使できるかどうかが,大きな結果の違いとして現れます。
実際に,養育費や婚姻費用分担金の増減額の問題に直面している方は,弁護士の法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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