【『家族』の形式(通常の法律婚・内縁・夫婦財産契約の法律婚)の法的扱いの比較】

1 レガシー結婚制度による『悲劇』は回避できる
2 法律婚・内縁・夫婦財産契約をした法律婚の比較(まとめ)
3 『家族』の形成形態|婚姻・内縁・純粋交際の違い(上記※1)
4 家族の形成形態による『フローの分かち合い』(上記※2)
5 家族の形成形態による『ストックの分かち合い』(上記※3)

1 レガシー結婚制度による『悲劇』は回避できる

現在の日本では,結婚が重視され,宗教といえるほどに『結婚』に執着するケースが拡がっています。
具体的には,『結婚』しない限りは子供をもつ(出産する)とか,家族として一緒に暮らすことを避けるという状況がとても多くみられます。
一方,結婚制度は,状況によっては過度に強い拘束力を生み出します。
詳しくはこちら|結婚制度の不合理性(婚費地獄・結婚債権・貞操義務の不公平・夫婦同姓など)
そのため,過度の拘束を避けるために結婚したくないという実際のケースも多いです。
ところで『結婚』は,子供を作る・育てる家族を形成する方法の1つの制度に過ぎません。
『家族を形成する形態』,は(通常の)結婚以外の種類もあります。つまり,不合理な結果を避けつつ家族となることを実現する方法があるのです。
詳しくはこちら|結婚制度の不合理性を回避する方法の全体像(婚外子・夫婦財産契約など)
いろいろな家族となる形は,当然,法律的な扱いに違いがあります。
本記事は,パートナーの間での経済的な分配という点を中心に,家族の形の種類を比較しつつ説明します。

2 法律婚・内縁・夫婦財産契約をした法律婚の比較(まとめ)

通常の法律婚と内縁と夫婦財産契約を締結した法律婚の3つと,比較として一般的な男女交際を合わせた4つについて,法的な扱いの違いをまとめます。
いろいろな事項についての法的な拘束力の強弱として整理します。

<法律婚・内縁・夫婦財産契約をした法律婚の比較(まとめ)>

『家族』の形成形態(※1) (従来型)婚姻 内妻 夫婦財産契約付婚姻 純粋交際
拘束の強さ とても強い 強い 中間 弱い
戸籍上の『婚姻』関係
フローの分かち合い(※2) (※4)
ストックの分かち合い(※3) (※4)
貞操義務 (※4)
子供誕生時の扶養義務 (※5) (※5)

以下,この表の詳しい内容について説明します。

3 『家族』の形成形態|婚姻・内縁・純粋交際の違い(上記※1)

(1)(従来型)結婚

法律婚,婚姻とも言います。
結婚制度は拘束が強く,また,硬直的な部分があります。
詳しくはこちら|結婚制度の不合理性(婚費地獄・結婚債権・貞操義務の不公平・夫婦同姓など)

(2)内縁

婚姻届を役所に提出しないこと以外は,法律婚に近いです。
『法律婚』よりも不利益に扱われることもまだあります
詳しくはこちら|内縁関係に適用される制度と適用されない制度(法律婚の優遇)

(3)『純粋交際』

<『純粋交際』の内容>

あ 法的な拘束力

相互に法的に拘束しない

い 具体的状況

交際する当事者両方が『結婚しない』+『結婚同様の関係(=内縁)を希望しない』という場合
同居する(同棲)・同居しない,のいずれでも同様

う 『純粋交際』が選択される典型的なポリシー|例

ア 『結婚はしたくないけど子供は欲しい』というポリシーイ 『拘束』よりも『成約』を優先したいという状況

当事者の判断として,拘束を望まない,ということもあります。
現在は価値観の多様化により,このようなポリシーを持つ方も増えています。
なおこの場合でも子供が誕生した場合の法的責任まで排除されるわけではありません。

なお,状況から『内縁』と認められてしまうリスクはあります。
当事者の意向とは別の認定になるリスクには注意が必要です。
別項目;内縁関係の成立要件

(4)夫婦財産契約付婚姻(上記※4)

以上のように,それぞれの形態について,特徴があります。
ここで『結婚』を活用しつつ,『拘束力』を調整(緩和)する,という方法もあります。
『夫婦財産契約』という方法です。
『婚前契約』と呼ばれることも有ります。
これについては別記事で説明しています。
詳しくはこちら|夫婦財産契約(婚前契約)によって夫婦間のルールを設定できる

4 家族の形成形態による『フローの分かち合い』(上記※2)

家族の形成形態によって,『収入を分かち合う』状態が違います。
具体的には,扶養義務,婚姻費用分担請求権です。
これは,『婚姻』による根本的な効果(保護)です。
内縁関係でも準用されます。
離婚の際には『将来分の債権の取引』に準じた状況となります。
詳しくはこちら|別居中は生活費の送金を請求できる;婚姻費用分担金
詳しくはこちら|収入大→離婚時の清算が大きくなる;婚費地獄,結婚債権評価額算定式

5 家族の形成形態による『ストックの分かち合い』(上記※3)

(1)原則論|相続が生じた時の『配偶者』のみ

『蓄えられた財産を分かち合う』という趣旨です。
具体的には,将来の『相続』による財産の承継です。
これは,亡くなった時(相続発生時)に『配偶者の地位にある』ことの効果です。
理論的には,『先に亡くなった場合』には(当然ですが)相続で財産を取得する,ということはありません。
また,相続発生より前に離婚した場合も,相続権は一切ありません。
このような意味で,『不確実』なものです。

(2)例外|特殊事情により離婚時に『将来の相続』を財産分与に加算

しかし,特殊事情により,『離婚時の財産分与の算定で『将来の相続』分を加算した判例もあります。
詳しくはこちら|扶養的財産分与として相手の一生分の婚姻費用相当額が認められることもある

(3)例外|『内縁』でも『特別縁故者の財産分与』を受けられることがある

『内縁の妻(夫)』は相続権がない,というのは明確なルールです。
しかし,個別的な事情によっては,『亡くなったパートナー』の一定の財産の承継を受けられます。
『特別縁故者の財産分与』という,個別的な家裁の手続によって,家裁が認めることが必要です。
詳しくはこちら|特別縁故者の基本(承継する財産の範囲・複数の者・手続外での財産承継・審理の特徴)

本記事では,『家族』の形式の種類である,通常の法律婚・内縁・夫婦財産契約をした法律婚の3つの違いについて説明しました。
実際には,個別的な希望や事情によって,最適な選択肢は異なります。
実際に『家族』となる形式(かたち)に関する問題や悩みに直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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