【会社分割|基本的な流れ・債権者保護手続|略式手続・簡易手続】
1 会社分割の種類|新設分割・吸収分割の2つがある
2 会社分割|全体的な流れ
3 会社分割|債権者保護手続→異議を述べた債権者には弁済などが必要
4 会社分割|略式手続・簡易手続→株主総会が不要になる
1 会社分割の種類|新設分割・吸収分割の2つがある
(1)会社分割の種類
会社の運営上『事業』と『組織』の組み合わせを最適化するニーズがあります。
そのための手段の1つとして『会社分割』があります。
『会社分割』の基本事項から説明します。
まず『会社分割』は2種類に分けられます。
<会社分割の種類>
あ 新設分割
新たに会社を設立する
新設会社に旧会社の事業や権利義務の全部or一部を承継させる
い 吸収分割
既存の会社に分割する会社の事業や権利義務の全部or一部を承継させる
(2)ネーミングの統一
<用語の統一>
あ 旧会社
吸収分割会社・新設分割会社
事業譲渡の『譲渡』会社
い 新会社
吸収分割承継会社・新設分割設立会社
事業譲渡の『譲受』会社
2 会社分割|全体的な流れ
会社分割の手続はちょっと複雑です。
また,状況によって細かい手続も変わります。
ここでは基本的な流れをまとめます。
<会社分割の流れ|基本的>
あ 基本合意
『新設分割』では『合意』はない
↓
い 取締役会の承認
↓
う 分割計画書作成
↓
え 分割契約に関する書面などの備え置き
↓
お 債権者保護手続
状況により要否が変わる(後述)
↓
か 株主総会の承認決議
略式手続・簡易手続の場合は省略できる(後述)
↓
き 会社分割実行
↓
く 設立・変更登記
3 会社分割|債権者保護手続→異議を述べた債権者には弁済などが必要
(1)債権者保護手続の内容
会社分割では『債権者への配慮』が重要です。
債権者として『返済資金やこれを生み出す事業・資産』が重要です。
会社分割では,手続の中で『金銭・財産・事業』が『債務者から離れる』ということが生じるのです。
そこで,現行法上『債権者保護手続』が用意されています。
『保護』の内容をまとめます。
<異議を述べることができる債権者>
あ 吸収分割承継会社の債権者
制限なし(全員)
※会社法799条1項2号
い 吸収分割
債務の履行請求ができない債権者
※会社法789条1項2号
う 新設分割
債務の履行請求ができない債権者
※会社法810条1項2号
<債権者保護手続の内容>
あ 『保護』の対象者
『異議を述べた』債権者
い 債権者保護手続の内容
旧会社or新会社が次のいずれかを行う
ア 弁済イ 担保提供ウ 信託
(2)債権者保護手続が不要な場合
前述のとおり『異議を述べることができる債権者』は限定されています。
逆に言えば,これに該当しない場合であれば『異議を述べる債権者』はゼロになります。
結果的に『債権者保護手続』は不要,ということになります。
<債権者保護手続が『不要』となる条件>
あ 債務が全く移転しない
い 債務が移転するが『旧会社』の債務も存続する
重畳的債務引受や保証など
なお『詐害的』な特殊事情がある場合は,個別的な対応があります。
詳しくはこちら|詐害的会社分割→詐害行為取消権・否認権の適用→平成26年会社法改正
4 会社分割|略式手続・簡易手続→株主総会が不要になる
原則的には会社分割のためには『株主総会決議』が必要です。
会社の組織全体が変化する手続であるため,株主の了解を取るプロセスが要求されているのです。
ただし,特殊な事情があれば,例外的に『株主総会が不要』となります。
2つの制度が設定されています。
<略式手続・簡易手続|原則的要件>
あ 簡易手続分割(存続会社)
分割の対価の簿価額が,分割会社の純資産の5分の1以下の場合
※会社法796条3項
い 略式手続
設立する会社が特別支配会社の場合
※会社法784条1項