1 『嫡出』という用語|差別的ニュアンス・批判
2 嫡出推定|要件|婚姻ステータスとの関係
3 嫡出推定|法的扱い・出生届
4 嫡出推定のスキマ×再婚禁止期間
5 出生届よりも後から『嫡出子』となる制度|準正
6 嫡出/非嫡出×扶養請求権・相続権|現在は平等扱い
7 両親が既婚or未婚×日本国籍取得
8 嫡出推定・誤作動|解消方法=家裁の手続

1 『嫡出』という用語|差別的ニュアンス・批判

本記事では『嫡出子』『嫡出推定』の基本的事項を説明します。
まず,この用語自体の意味や批判についてまとめます。

<『嫡出』という用語|差別的ニュアンス・批判>

あ 差別的ニュアンス

『嫡出』は『正当(正統)な子』という意味がある
『非嫡出子』は『正当ではない子』という意味になる
親との関係により子を差別する概念と言える

い 用語廃止への期待

『婚外子/婚内子』であればそのようなニュアンスを含まない
今後の法律改正により『嫡出』の用語が廃止されることが期待される
弁護士会から法改正の意見が出されている
※東京弁護士会『民法(家族法)の改正を求める会長声明』平成25年9月5日

う 政府の動き

政府としての法改正の動きには至っていない

本記事では,分かりやすさを優先させるため,便宜的に『嫡出』の用語を使います。
差別的な意図はまったくありません。
むしろ当事務所としては『差別的』な扱い・呼称の解消を望んでいます。

2 嫡出推定|要件|婚姻ステータスとの関係

民法に『嫡出推定』の規定があります。
これにより各種の手続で『嫡出子』として扱われることになります。
まずは条文上の要件をまとめます。

<嫡出推定|要件>

次のいずれかに該当して出生した場合
→『嫡出子』として『推定』される
ア 婚姻期間中に妊娠した
イ 婚姻の成立の日から200日を経過した後に出生した
ウ 離婚(婚姻の解消)から300日以内に出生した
※民法772条

3 嫡出推定|法的扱い・出生届

嫡出推定によって『出生届』の扱いが影響を受けます。
これについてまとめます。

<嫡出推定|法的扱い・出生届>

あ 嫡出推定|理論的扱い

子は『夫』の嫡出子(父と子の関係)と『推定』する

い 嫡出推定×出生届|原則

出生届の『父』の欄(父母欄)に『父の氏名』を記入する
この『父』には嫡出推定が適用される
→『夫』の氏名を記入する
※戸籍法49条2項3号

う 嫡出推定×出生届|例外

『懐胎時期に関する証明書』を用いた方法がある
(別記事『懐胎時期に関する証明書』;リンクは末尾に表示)

『夫』が『真実ではない父』というケースも生じます。
『嫡出推定』が『誤作動』を生じたと言える状態です。
このような場合でも原則的に『夫』が『父』として戸籍に載ってしまいます。
これを避ける方法もあります(後述)。

4 嫡出推定のスキマ×再婚禁止期間

嫡出推定の要件は,組み合わせによっては『重複』が生じます。
この不合理を回避するために『再婚禁止期間』のルールが作られています。

<嫡出推定のスキマ×再婚禁止期間>

あ 問題の所在|例

女性が『離婚した直後(当日)に別の男性と結婚』した場合
→『嫡出推定の重複』が100日間生じる

い ブランク期間の必要性

『離婚〜次の婚姻』までの期間を最低限100日間とする
→『嫡出推定の重複』が生じない

う 再婚禁止期間|規定

女性については『ブランク期間』が半年必要とされる
『離婚・婚姻解消と次の婚姻の期間』のことである
以前は『待婚期間』と呼ばれていた
詳しくはこちら|女性は6か月の『再婚禁止期間』がある

え 再婚禁止期間|不合理性

ア 必要とされる100日を余分に上回っている
イ 現在はDNA鑑定により『父が不明』となることはない
(別記事『DNA鑑定・精度』;リンクは末尾に表示)

5 出生届よりも後から『嫡出子』となる制度|準正

認知により,原則的に『非嫡出子』になります。
そして『婚姻』により『嫡出子』に変わります。
順序によって『嫡出子』となるタイミングが違います。

<出生届よりも後から『嫡出子』となる制度|準正>

あ 婚姻準正

父が認知→(その後)父母が婚姻した
嫡出子の身分を得る時期=婚姻時(通説)
※『民法8親族 第4版増補補訂版』有斐閣p190〜191

い 認知準正

婚姻中に父母が認知した
嫡出子の身分を得る時期=認知の時
※民法789条

6 嫡出/非嫡出×扶養請求権・相続権|現在は平等扱い

以前は嫡出子と非嫡出子で法的扱いが異なりました。
これは不公平・不平等であると考えられ,ルールは改正されています。
現在では平等となっています。

<嫡出/非嫡出×扶養請求権・相続権>

あ 現在の解釈論

嫡出子/非嫡出子で違いはない

い 以前の解釈論

相続権について差別があった
法定相続分が『非嫡出子は嫡出子の2分の1』であった
最高裁で否定され,この規定は廃止されるに至った
詳しくはこちら|非嫡出子の相続分を半分とする規定→法律婚優遇・子供差別は不合理→違憲・無効

7 両親が既婚or未婚×日本国籍取得

両親の国籍が違う場合,子の国籍が問題になります。
片方の親が日本人である子は『日本国籍』を希望することもあります。
このような『日本国籍取得』のルールをまとめます。

<両親が既婚or未婚×日本国籍取得>

あ 以前の規定×最高裁判例

以前は『親が既婚or未婚』によって『国籍取得』の差別があった
最高裁は『平等原則違反』としてこの規定を無効とした
※国籍法3条1項(改正前)
※最高裁平成20年6月4日

い 国籍法改正|概要

現在は法改正により平等の扱いになっている

う 国籍法改正|前後の比較
区別 国籍法改正前 改正後
婚姻済
未婚=認知のみ済 ☓(※1)

要するに以前は『嫡出or非嫡出子』で差別があったのです。
現在では『認知だけ=非嫡出子』でも日本国籍取得が可能となっています。

8 嫡出推定・誤作動|解消方法=家裁の手続

嫡出推定の結果が『真実の血縁関係』と異なることもあります。
(別記事『嫡出推定・誤作動|典型的具体例』;リンクは末尾に表示)
嫡出推定が『誤作動』を生じた状態と言えます。
この場合,出生届に『真実の父』を記入できなくなります。
出生届に関する問題については別に説明しています。
(別記事『嫡出推定・誤作動|出生届』;リンクは末尾に表示)
『誤作動』を解消するためには原則として家裁の手続が必要です。
また,例外的な回避・解消方法もあります。
これについては別に説明しています。
(別記事『嫡出推定・誤作動・基本』;リンクは末尾に表示)